文庫、新書、文芸書、雑誌にマンガ、そして写真集…。サイズやジャンルの異なるたくさんの本をプロはどのように収納しているのでしょう? ブックコーディネーター 内沼晋太郎さんの自宅&オフィスを拝見!

川合 将人

川合 将人

雑誌や広告、住宅メーカーのモデルルームなどで活躍中のインテリアスタイリスト。近年はコンサルティングや空間演出等も展開。

http://kawaimasato.com/

持っている本が全部、ちゃんと見える状態であることが理想です

多様なサイズの本を、ジャンルごとに効率よく並べられるよう設計された本棚。棚の支えと仕切りは薄いスチールを使用。高い強度を保ちつつ、見た目もすっきり

川合

部屋の壁2面ともすべて本に囲まれた空間に、一瞬自宅だということを忘れてしまいそうになりました(笑)。 本は“サイズ別”で並べていないんですね?

内沼

自分にとってあるべき本棚のかたちってなんなんだといろいろ考えたんです。 基本的には大きさで分けない。 僕には、必要な本がすぐに取り出せることが大事だとおもったので。自宅の書棚に入る範囲の本を持つようにしていて、一定量を超えるとスキャンして電子化。 いつでも必要な本が見つかるようにしています。

川合

必要な本をすぐ取り出すために、並べ方のルールがありますか?

内沼

ざっと自分の関心のある興味別(ジャンル別)に並べているんですが、けっこう頻繁に入れ替えをしています。 はっきりしたジャンル分けができない本も多いので、自分の頭の中でおもっている文脈があって、その文脈にそって棚が成立しているかんじですね。 持っているはずの本はだいたい把握しています。

川合

いやぁ、ほんとに気持ちいいですね、床から天井までぴったりに設計された書棚。 本がひと目で見渡せる。

内沼

棚は、建築家の田中裕之さん(HIROYUKI TANAKA ARCHITECTS)にオリジナルでデザインしていただいたものを使っています。

川合

書棚をデザインするとき、どのようなご要望をされたんですか?

内沼

サイズはかなり検証しました。 「大きさで分けない」といっても限界があるので、2種類の高さしか作らないと決めて、上段はA5判+指が1本すっと入る高さに。 それより高くしちゃうと、文庫本を入れたときにすごく小さく見えちゃって、バランスが悪いんですよ。 そして、下段は大判の写真集も入る高さにしました。 奥行きも上段と下段で変えています。奥行きがありすぎると前後2列に本を並べたくなってしまうけど、それだと奥の本がみえなくなってしまう。 たくさんの量をもつことよりも、必要な本がすぐに取り出せることが大事ですから。

奥行きの差を利用して作られたカウンターとDJブース。スペースをうまく活用することで、リラックスできるプライベート空間を実現

川合

パーツに古材を取り入れていらっしゃるのが印象的です。 長い時を経てきたものの持つ痕跡のような個性があって…。

内沼

あったかいものが好きなので、古材を取り寄せてもらいました。 すごく執着があるわけではないけれど、ものが好きだから、自分が日頃接するものはそれなりに時間を経てきたものがいい。

今回文中で紹介した本棚は、内沼さんが読書用品を提案する「ビブリオフィリック」でオーダーを受付中です
http://diskunion.net/bibliophilic/

川合

上段と下段の奥行きの差を利用したカウンターのおかげで、身構えずにリラックスして読書を楽しむことができそうですね。 DJブース付きですが、音楽もお好きなんですか?

内沼

音楽も好きですね。 自宅に居られる時間は限られていますから、なるべく仕事とは切り離して、プライベートを楽しむための空間にしています。 カウンターは読みかけの本を置いたり、ドリンクを置いたりできるのがいいんです。 そのときの気分で音楽を聴きながら、コーヒーやお酒を片手に本を読む、本を楽しむためにある家みたいなものです(笑)。

ゲストプロフィール

内沼晋太郎

numabooks代表。ブックコーディネーター、クリエイティブディレクター。ショップやライブラリのプロデュースやコンサルティング、読書用品の提案などを手がける傍ら、新刊書店「本屋B&B」の経営も行う。著書に『本の逆襲』(朝日出版社)など。