こんにちは!今回は6月にスイスのバーゼルで開催された、芸術性の高いデザイン家具が集まるフェア、『デザインマイアミ バーゼル』に出品された印象に残った家具や照明、オブジェなどをご紹介させていただきます。

川合 将人

川合 将人

雑誌や広告、住宅メーカーのモデルルームなどで活躍中のインテリアスタイリスト。近年はコンサルティングや空間演出等も展開。

http://kawaimasato.com/

6月13日〜18日の期間、バーゼル市内のメッセ・バーゼルという会場を舞台に、パリやミラノにロンドン、ニューヨークなどの有名デザインギャラリーが集結し、貴重なヴィンテージ品や現代デザイナーの最新の限定作品が数多く展示販売されていました。

もともと『デザインマイアミ』は、その名の通り2005年にマイアミで開催されたのを皮切りに、翌年からバーゼルでも『デザインマイアミ バーゼル』として世界最大の国際アートフェア『アート・バーゼル』と同じ期間に毎年開催されるようになり現在に至っています。

世界各国のデザインギャラリーが取り扱う、規格外の一点ものの家具などは、そのほとんどが熱狂的なコレクターや富裕層をターゲットにしたものばかりですが、このようにハイエンドなアート系のデザインアイテムを一堂に見ることができるイベントはほかにはありません。

ということで、今回は実用的というよりは芸術性。アートな家具や照明を、ギャラリーと合わせてお届けしたいと思います!

ラウンジスペースだって、名作たちが競演するアート空間

D03_23_img01

いきなりギャラリーの展示ではなく恐縮ですが、、、こちらは会場内のラウンジスペース。来場者が自由に休憩できる場所なのですが、
家具メーカーの<ヴィトラ>が協力していて、イームズのロッキングチェアやロナン&エルワン・ブルレック兄弟のチェアなどに座ることができるのです。
天井から連続で吊り下げられている照明は、日本でもお馴染みのイサム・ノグチがデザインした「AKARI」シリーズのペンダントランプ。
なかなかこのスケールで飾られている空間は見ることができませんので、圧巻でした!

この空間の奥のほうにはギャラリストやデザイナーたちのディスカッションやトークショーなどを行うスペースもあり、 期間中にはデザインやアート業界の発展を促すための様々な催しが開催されていました。

デザインギャラリーの筆頭、<ギャラリー・ダウンタウン>の展示

さて、ここからは気になったアイテムを中心にご紹介していきます。まずはパリのギャラリー、<ギャラリー・ダウンタウン>が出品していたデスクとチェアになります。

D03_23_img02

石材を用いて三角や円形、直線などのフォルムをでたらめに組み合わせたような量感のあるデスクとチェア。パッと見てフォルム的には近年、世界的に再評価が進んでいる1980年代に作られたものかとは思いましたが、全く誰のデザインかはわからず。。。会場のインフォメーションを読むと、イタリア人アーティストのプッチ・デ・ロッシが1984年に制作したものであることがわかりました。ベローナに生まれ、1979年以降はパリに拠点を移し、彫刻作品などを発表し続けた人です。しかし、すごいバランスです。<メンフィス ミラノ>から発売されているピーター・シャイヤーのチェア《ベルエアー》と同種の香りがするというか、なんとも言えない迫力ある造形力に惹かれてしまいました。こちらは会場の1階で、ファッション・デザイナーのトム・ブラウンがキュレーションしているエリアにサテライト的に出品されていましたが、2階の本会場にあった<ギャラリー・ダウンタウン>のブースはこんな感じでした。

D03_23_img03

本当にさすがという感じの内容で、ジャン・プルーヴェ、シャルロット・ペリアン、セルジュ・ムーユなど、現在も価格の高騰が続いているデザイナーのアイテムを中心に構成されていました。<ギャラリー・ダウンタウン>は前述したようなフランスを拠点にしたデザイナーの貴重なヴィンテージアイテムを主に取り揃えていることで有名ですが、同時に世界各国の現代デザイナーのアイテムも取り扱いしていて、そのバランスがすごいのです。今回の展示では、ディエゴ・ジャコメッティという作家の鉄のチェアも出品していたのですが、そちらも素敵でしたよ。

スペシャル感を増した、<グフラム>社のユニークな作品たち

続いては、イタリアの家具メーカー、<グフラム>社とオランダ出身のデザイン・デュオ、スタジオ・ヨブによるコラボシリーズになります!

D03_23_img04

見るからにポップです。派手な彩色を施されたオブジェクトのオーラに包まれたこのブース。イタリアのデザイン好きには一瞬でわかるアイコンのような存在のサボテン型コートハンガー、《カクタス》を製造する<グフラム>社が、その名も<スーパーグフラム>という名前で新たな展開を発表したのです。同社の家具に用いられる素材はポリウレタンフォームに特殊なペイントを施したものなのですが、今回はそれだけでなく異素材と折衷。金属などを用いたスタジオ・ヨブの遊び心溢れる造形を組み合わせて独創的なオブジェとして具現化したのです。サボテンの《カクタス》はなんと鉢とセットになってスペシャル感がアップ!さらにサンドバックに地球儀、鍋から吹き出すスチームが立体化して天板となったコーヒーテーブルなど、とにかくユニークな作品ばかり。これらは限定生産品として発売されていました。

最も注目を集めているマックス・ラムの家具登場

そして次は、ニューヨークのギャラリー<サロン 94>が出品していた英国出身のデザイナー、マックス・ラムの椅子になります。

D03_23_img05

マックス・ラムは素材から導き出されるユニークな造形の家具で近年、最も注目を集めている気鋭のデザイナーです。この椅子もその形状があまりにも斬新なので目に留まったのですが、なんと本体の主な素材はポリスチレン。いわゆるスチロール樹脂と言われるものなのです。<サロン 94>のブースでは椅子のほかにもシェルフやテーブルなど、様々な種類の家具が一連のシリーズとして発表されていましたが、その特徴はすべてにおいて表面材になります。なんと各家具の表面はブロンズ、スチール、銅などの金属製の”皮”で覆われているのです。

マックス・ラムはプラズマアークで金属線を溶融させ、圧縮空気で薄層に溶射するハイテクガンを使用し、ポリスチレンで作られた家具の表面を金属で覆っているそうです。それでこのような不思議な素材感に完成しているのですね〜。本当に驚きました

アート性の高さは圧巻。迫力のある作品の数々

引き続きましては、ロンドン、ニューヨーク、パリにスペースを設けるギャラリー、<カーペンターズ ワークショップ ギャラリー>の出品作となります。

D03_23_img06

こちらはメッセ・バーゼルの『デザインマイアミ』の会場内にあった、<カーペンターズ ワークショップ ギャラリー>のブースの一部を撮影したものです。 左に展示されているのは、オランダ出身のマーティン・バースが、自ら手描きのペンで針を書いては消して時を進めていくという映像が流れるモニターがセットされた金属製の置き時計! 写真ではお伝えできない部分もあるので、是非、映像は下記のリンクよりご覧頂きたいです。

https://www.youtube.com/watch?v=-oyUUgOPSa0

<カーペンターズ ワークショップ ギャラリー>では、ほかにもナチョ・カーボネルの金属メッシュをシェードにしたコンクリート台座のフロアランプや、米国のデザイナー、ウェンデル・キャッスルの大型チェアなど、迫力のある作品ばかりが並んでいました。こういったスケールの家具を展示できる住宅の仕事、もしあったら是非してみたいものです!

エレガントな佇まい、スタジオ BBPRの貴重な収納家具

では最後は、せっかくなので収納家具をピックアップしてみました。ミラノのギャラリー、<ニルファー>が出品していた建築家グループ、スタジオ BBPRの収納になります!

D03_23_img07

こちらは年期の入った貴重なヴィンテージ品。1941年に作られた大型の扉付き収納家具で、サイドボードとシェルフが組み合わさったような形状になっていて、照明なども付属していました。木製の支柱や脚の形状に加え、下部のスライド式の扉が鏡面になっていたり、各パーツがどれも凝った造りになっていて、細部まで美しい仕上がり。量産品ではなく特定の建物の内装設備として作られたものかとは思いますが、経年した木の表情もエレガントで会場で何度も見てしまいました。

以上、『デザインマイアミ バーゼル』の会場で印象に残った作品をピックアップさせて頂きました。

デザインとアートの領域を横断する、このような特殊な家具や照明、オブジェは、まだまだ純粋なアート作品に比べると歴史もマーケットの規模も小さいのが現状ですが、だからこそ伸びしろがあり、これから注目が集まっていく分野なのだと思います。

日本でもこのような作品を見ることができるギャラリーや美術館が増えると嬉しいですね!

では、また!