家具にこだわり、デザイナーズアイテムを収集するクライアントのためにリノベーションしたマンション。愛するモノをすべて見せて収納するというコンセプトを具体化した、唯一無二の部屋へお邪魔しました。

HOUST 編集部

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向坂穣さん

「向坂建築設計事務所」代表

『見せる収納』に特化した家

横浜市で自身の建築事務所を立ち上げたばかりの新進建築家、向坂穣さん。

彼が手がけた『見せる収納』に特化した家がすごい、という噂を聞き、都内F市のIさん邸へ、興味津々で伺いました。

Iさんのコレクションがところ狭しと、かつ整然とディスプレイされた家。

築25年ほどの、外観は一般的なマンションでしたが、案内された一室には、これまで見たこともない収納空間が広がっていました。

ワンルームで、京町家を表現

向坂さんが、クライアントのIさんからマンションのリノベーションを請け負ったのは約4年前。それまで賃貸の一軒家に住んでいたIさんは、すでに家具やデザイナーズアイテムのコレクションを所有していました。

「元は3LDKでした。一人暮らしということで、個室はつくらず、ざっくりとワンルームに。かつ、Iさんは京町家がお好きということで、そのイメージを反映したいと、土間をつくり、一部分に和室を設けて、畳と障子も組み入れました」(向坂さん、以下同)。

寝室を兼ねた和室

寝室を兼ねた和室。オープンシェルフにはソフトボックスを活用し、衣類を美しく収納しています。

玄関から入ってすぐ、土間になっています。趣味の自転車をそのまま置ける、アトリエのようなスペース。散らかりがちなデスク回りも、美しく整頓されて。

コレクションのすべてが美しく見える家

Iさんの膨大なコレクションを、いかに美しく見せられるか。当時、向坂さんに課せられたのは、多くのデザインアイテムと、それらを受け入れる空間との関係を考えることでした。

「まずはざっくりと、どんなものを持っているのか、写真などで確認させてもらいました。モノが生きるように、空間はシンプルに。それでいて、動線がよく、機能的であること。Iさんとはフィーリングが似ていて、作業はとてもしやすかった。どこに何を置きたいか、しっかり考えられていました」。

リビング

国内外のデザイン家具とオーディオが並ぶリビングコーナー。イームズのラウンジチェアが置かれた窓際は、縁側をイメージしたモルタル張りです。

無機質なゲーム類やパソコンも、木のやわらかな質感で包み込むように収納しています。

キッチンの清潔感をキープするには

「キッチンは、特に気を配った部分です。Iさんはとてもキレイ好きで、キッチンの清潔感にこだわりがありました。そこで、キッチンコーナーに高さを与えて、Iさんの求めるキッチンディスプレイがしやすいように、水回りの配置にも、収納の計画を組み入れました」。

生活感の出る日用品が多いキッチン。
Iさんのキッチンも、モノはたくさんありますが、すべてがきちんと目が届くように整理されていました。毎日のこまめな手入れで、清潔感をキープ。見せるキッチンのお手本のような空間です。

北欧を中心としたキッチンアイテム

北欧を中心としたキッチンアイテムが並びます。出しておくことで、湿気もたまりにくく、管理しやすいとのこと。

オリジナルのキッチンツール掛け

竹の棒と、赤い紐でつくったオリジナルのキッチンツール掛け。わっぱ籠にも、キッチン小物をきれいに整頓。

マグネットフックを使った見せる収納術

食器は、使う分だけ、選びぬいたものを置く。冷蔵庫のマグネットフックを使った見せる収納術も、参考になります。

すべて見せることで、ムダをなくす

「Iさんは、持ち物に対して並々ならぬこだわりがあります。モノは多く見えますが、ムダは何一つありません。小さな雑貨一つでも、考えぬいて購入する人なんですね。だからこそ、すべてを見せて収納できるんです。Iさんの収納テクニックは、建築家としても、個人的にも、とても参考になりますね」。

見せる収納は、整理する機会が必然的に増え、メンテナンスもしやすい。不要なモノを増やさない習慣づけができる、と向坂さん。
「すべてを見せて収納する家」は、「モノを大切に管理する家」でもありました。

玄関

玄関まわりです。ショップのように、お気に入りのバッグや革製品をディスプレイして収納しています。

住み心地は最高です

向坂さんと、クライアントのIさん。「向坂さんは、私の持ち物について、深い理解をした上で、リノベーションを進めてくれました。モノも私も、住み心地は最高です」とIさん。