人は年齢によって、暮らし方、そして必要なものが変わりゆくもの。居住空間と収納を、その時々に合わせて無理なく変えていける家づくりを提案する女性建築家にお話を伺いました。

HOUST 編集部

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碧山美樹さん

「プラスエム・アーキテクツ」代表

「暮らしやすさ」=動線の良さ+可変性

子育て世代から働く女性の一人暮らしまで、個人住宅を中心に幅広い物件を手がける建築家、碧山美樹さん。居心地よく、暮らしやすい家を実現するため、まず心がけているのは、「家事動線の良さ」だと話します。

キッチン

自宅のキッチン。壁面収納も兼ねています。

「キッチンを中心に、できるだけ回遊性を持たせ、家事をする人の作業を楽にするための間取り、収納を考えています」(碧山さん、以下同)。

そして、「暮らしやすさ」を考える上で碧山さんがもう一つ大切にしているキーワードが「可変性」。子どもの成長や、生活の変化に沿って、間取りや収納を合わせられる家を提案しています。 今回は、この「可変性」を体現した2つの事例を見せていただきました。

動く家具で間仕切る、家族のための空間

リビングダイニング

いくつもの機能を持たせたリビングダイニング。

一例目は、碧山さんのご自宅です。築12年のマンションを一部リノベーション。LDKと和室だった場所を、ひとつのワンルームにして、スケルトンにしました。

そこに、大きなダイニングテーブルと、収納力のある可動家具を置き、「集うところ(ダイニングスペース)」「遊ぶところ(キッズスペース)」「くつろぐところ(ソファスペース)」「仕事するところ(デスクスペース)」の4つの空間をつくり出したのです。

「遊ぶところ」。可動式の畳の下はもちろん収納になっています。絵が描かれているのは、キャンバスに記念のお絵描きをして扉に加工したもの。

オリジナルの収納棚

オリジナルの収納棚には、キャスター付きのボックスも。テーブル兼、おもちゃ入れとして活躍。

こうして可動式の家具でゆるやかに仕切った部屋は、子どもが大きくなったときには、場所を組み替えることで新しいスタイルにリセットすることができます。

リビング学習

遊び場だった畳にデスクを組み入れて、勉強部屋に早変わり。話題のリビング学習も無理なく実現。

家中に光が届く、オープンクローゼットのある家

二例目は、碧山さんが子育て世代のために手がけた、マンションのリノベーションです。 典型的な3LDKだった物件を、みんなで共有できるファミリースペースと、クローゼット・寝室・ワークスペースを兼ねたプライベートスペースの2つに大きく分け、それぞれに可変性を持たせたユニークな間取りにつくり変えました。

LDKだった場所を広々とワンルームにし、中央に大きなテーブルを。壁面収納は容量もたっぷり。

キッズスペース

ダイニングテーブルの奥にあるキッズスペース。丸い穴があいた隠れ家は、押し入れを改造しました。台の下には、来客用のベッドが隠れています。

一般的に、マンションの玄関側は暗くなりがち。碧山さんは、ここにオープンクローゼットをつくることで、家中に光が届くように工夫をしました。

ベランダ側から見たところです。手前はワークスペース、その奥に寝室。天井まで塞がれていないので、光が届きます。家具はすべて動かすことができ、半透明の7枚のスライドドアを閉めれば、プライベート空間の出来上がり。

オープンクローゼット

寝室からさらに玄関側に、明るいオープンクローゼットが。ここが家族みんなの共有クローゼットです。棚の上のカラフルなバケツも、かわいく見せながら仕分けられる収納アイディア。

「スライドドアを開ければ、開放的に見える収納スペースです。ここまでオープンだと、いつもきれいにしておかなければいけなくて、大変ですよね(笑)。でも、施主さんは元アパレル関係の方で、衣料を扱うプロ。あえてオープンにして、動線をキープしたいというオーダーでした」。

暮らしの変化とともに、収納も楽しむ

家族の成長とともに、暮らしやすさのかたちも変化します。可変性を持たせておけば、後々、大掛かりな工事をしなくても、家の中の使い方を簡単に変えることができるのです。

「家具を動かして、レイアウトを変えるときは、持っているものを家族で総点検する機会です」。

間取りを変え、同時に収納を見直すことで、空気を入れ替えるように家の中がすっきりします。その工程をぜひ家族で楽しんでほしい、と碧山さんは笑顔で語ってくれました。