収納の定義を幅広く捉え、書店スタッフが推しの収納関連本3冊を紹介!
本のプロが選ぶ“収納本”とは?

HOUST 編集部

HOUST 編集部

HOUSTO公式アカウントです。当サイト独自の目線で、毎日の暮らしがちょっと豊かになる情報を定期的にお届け中です!

https://www.instagram.com/ouchinoshunou/

選んでくれたのは…神保町ブックセンター

岩波書店の本が揃う「書店」、本を読みながらくつろげる「喫茶店」、様々なイベントをきっかけに新しい知識や仲間に出会える「コワーキングスペース」の複合施設。喫茶では店内の本はもちろん、持ち込んだ本を読みながらくつろげ、本に囲まれた雰囲気に合った食事や飲み物が楽しめます。「若い人に本を読んで欲しい」という思いから、トークイベントやスクール、読書会なども定期開催しています。 今回は『さまざまなかたちの心地よい暮らし』をテーマに選んでいただきました!

選書人

神保町ブックセンター 選書担当 久木玲奈

1冊目『おさらをあらわなかったおじさん』フィリス・クラジラフスキー 文、バーバラ・クーニー 絵、光吉 夏弥 訳/岩波書店

おいしいごちそうを作るのが好きで、食べるのも大好き! けれども、食べ終わったときにはもうくたびれて、家じゅうよごれたお皿だらけ……。一人暮しのおじさんは、さてどうしたでしょう?

選書理由:

「忙しくてお皿を洗う時間がないという方は、たくさんいらっしゃるのではないでしょうか。この本の主人公のおじさんも、お皿を洗わない人。最後にはお皿として使えるものがなくなって、なんともみじめな暮らしになってしまいます。でもある日、降ってきた雨でお皿を全部洗い、その問題は解決。片付けて家がピカピカになった時、これからはこまめに洗おうと心に決めるというお話です。この本のいいところは、片付けをしないことを悪いことだと決めつけないところ。絵本らしい飛躍した物語で、主人公の『きれいな部屋は気持ちがいい』という気づきをスマートに伝えます。子どもの本ですが、普遍的なものを描いているのではないでしょうか。自分への戒めとして、キッチンに飾るインテリアとしてもおすすめです」(久木さん

2冊目 新赤版104『千利休‐無言の前衛』赤瀬川 原平/岩波新書

利休の創出した佗び・寂びとはどのような世界なのか。冗舌な権力者・秀吉との確執の中から無言の芸術・縮む芸術を考案し、斬新な発想と柔軟な感性で桃山時代を前衛的に生きた芸術家――映画「利休」のシナリオ執筆を契機に、その精神性を現代の諸相の中に浮上させる.ジャンルを超えて活躍する著者が日本文化の秘奥に挑む超エッセイ。

選書理由:

「部屋の乱れは気持ちの乱れ、と言いますよね。片付けを禅の思想と結びつけ、まずは心を整えることをすすめる本も最近は出てきています。メンタルを整えるという意味では、茶室の先駆者である千利休の「侘び・寂び」という概念も通じるところがあるのではないでしょうか。茶道を通して、小さな空間で心を整えるという人間の行為は、昔から変わらないんだな、と気付かされます。利休は機能性に美しさを見出し続けた人物。利休が作った小さな茶室は、今求められる機能的な暮らしの源流のようなものかもしれません。『超芸術』の提唱で知られる赤瀬川さんならではの目の付けどころも楽しいエッセイです」(久木さん

3冊目『大図解 九龍城』/九龍城探検隊(著、写真)、可児 弘明(写真)、寺澤 一美(イラスト)/岩波書店

「東洋の魔窟」として知られた香港の九龍城は,英国から中国への返還スケジュールの中で解体されてしまったが、迷路のように増殖した建物内に、最盛期には5万人が住んでいたという。解体前に調査に入った建築家グループの資料をもとに、超高密度空間を大断面パノラマで再現し、全貌を明らかにする初めての大型絵本。

選書理由:

「九龍城へ潜入取材をして、ここにしかない雰囲気をパノラマに仕上げた見ごたえのある本。溜め込んだゴミも商品として売るような、たくましく雑然とした暮らしが垣間見えます。これを見て片付けたくなる人もいれば、逆にもっと物を集めたくなる人もいるかもしれません(笑)。今の日本の生活からは考えられないような暮らしですが、中国や台湾から夢を抱いて香港に移住した人も多かった時代だけに、生きるので精一杯な人もいたのかもしれません。ただ、ここに暮らした人たちは、自分たちの住まいも香港のことも好きだったのだろうと感じられるのが、この本のいいところです。かつてここに住んだ方々の暮らしに思いを馳せつつ、改めて隣国を知るきっかけにもなる本です」(久木さん

この店舗の前身は「岩波ブックセンター」。古い本棚をそのまま使い、重ねた歴史ごと受け継ぐ温かみのある空間に

棚板をあえて高くし棚を入れ子にすることで、収納力をアップするとともにディスプレイ空間に変化をつける

同じ背表紙が整然と並ぶ憧れのミニマム本棚。基本的に岩波書店の本だけを扱う神保町ブックセンターだからなせるワザ

棚の間にわたしたバーに絵本を並べ、インテリアのアクセントに。子どもの頃の愛読書に再会できるかも

小さな空間こそ美意識を盛り込みたい。書店と喫茶店との融合感を大切にするこだわりがあらわれるディスプレイ

カフェメニューは初期の岩波文庫のデザインを踏襲。分かる人には分かる遊び心が満載

メッセージは可愛い張り紙でシンプルに伝える。細部まで手を抜かない雰囲気作りは見習いたいところ

まとめ

「街全体で使ってほしい」という神保町ブックセンターには、休日には神保町巡りの”基地”として使う若い人も訪れるそう。学術的な本が多いイメージの岩波書店にも、幅広い魅力があると実感した探訪でした。

Readin’ Writin’ BOOKSTORE

  • 住所:東京都千代田区神田神保町2-3-1
  • 営業時間:9:00〜20:00 (土日祝10:00〜19:00)
  • 定休日:年末年始以外無休
  • 問い合わせ:03-6268-9064
  • https://www.jimbocho-book.jp/