大切な「定番の味」を紡ぐためのキッチンアトリエ

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<住人プロフィール>
滝澤ちか子さん 料理家 管理栄養士
注文住宅2LDK+キッチンアトリエ
築・入居15年

窓から蓼科の山々を見渡す、のどかな料理教室

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紅葉もそろそろ終わりの季節。冬支度がはじまった蓼科へ、料理家・滝澤ちか子さんのフードスタジオ「千の壷」を訪ねました。
蓼科と東京で料理教室を運営しながら、メニュー開発やフードコーディネートなど、料理に関わるさまざまな仕事をこなす滝澤さん。日々忙しく飛び回る彼女の暮らしの中心にあるのが、ホームベースである蓼科のキッチンアトリエなのです。

長野県出身の滝澤さんは、東京の大学で栄養学を学んだ後、料理家・山本麗子さんに師事。当時、(現)東御市にあった山本さんのスタジオでアシスタントを務め、飲食店勤務を経て、蓼科でカフェをオープンさせました。

「自宅兼カフェとして建てたのが、このスタジオです。今はお店も増えて賑やかなエリアになりましたが、家を建てた当時は、本当に何もない山だったんですよ。建物は、蓼科の自然に溶け込むように、和の雰囲気を大切にしました。経年するほどに、いい雰囲気になってきたと思います」(滝澤さん、以下同)。

ダイニングの窓。蓼科の自然をフレーミングする窓は、絵画のようです。

ダイニングの窓。蓼科の自然をフレーミングする窓は、絵画のようです。

 「子どもの遊び場に」と造ったダイニング上のロフト。現在はお気に入りの作品を並べ、ギャラリーのように使われています。

「子どもの遊び場に」と造ったダイニング上のロフト。現在はお気に入りの作品を並べ、ギャラリーのように使われています。

ダイニングを出ると、庭から山々が眺められるデッキ席が。

ダイニングを出ると、庭から山々が眺められるデッキ席が。

ゆとりある空間に、余計なものは置かない、ミニマルなインテリア。

ゆとりある空間に、余計なものは置かない、ミニマルなインテリア。

キッチン内だけで5000歩! 一日の大半を過ごす場所

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蓼科で過ごすときは、家族を送り出した後、すぐにキッチンアトリエに入るのが滝澤さんの日課。8時半から、およそ19時まで、ほとんど立ちっぱなしだそう。

「山の中で料理教室なんて、聞こえは優雅のようですが、実はかなり体力勝負です。ほとんど腰掛けることもなく、測ってみたら、キッチンだけで5000歩も歩いてました(笑)。こんなところに住んでいて、散策に出かける暇もなく、でも、運動量はキープできているかもしれませんね」。

都内の料理教室に出るときは、食材をたくさん積み込んだ車で出発。帰宅が午前0時を過ぎることもザラだとか。そんな日々のなか、キッチンアトリエで集中する時間は、仕事でもあり、リフレッシュでもあると滝澤さん。

「家事、子育て、仕事と、慌ただしい毎日ではあります。でも、蓼科では通勤も0秒ですから、両立しやすい環境をつくって来られたかな、とは思います。キッチンに入ってしまえば、完全に仕事モード。しっかり集中しながらも、居心地良く感じられる、大好きな場所です」。

窓に面したスペースは、はじめはテラスだったそう。キッチンとして継ぎ足して、作業領域に広がりが出ました。

窓に面したスペースは、はじめはテラスだったそう。キッチンとして継ぎ足して、作業領域に広がりが出ました。

使いやすさとしまいやすさを極めた、実用的なキッチン

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手入れの行き届いた作業台に、用途別にきちんと整理された調理器具、食器類……。使いたいものが、使いたい分だけ、さっと取り出せる工夫がそこここに。滝澤さんのキッチンアトリエを眺めれば、彼女の人となりがよくわかります。

「調理器具は、丈夫で、実用性を重視。食器も重ねやすくて、長く使えるかどうかを考えて選びます。和食器も洋食器もどちらも好きですが、どんな料理にでも使えるものがいいと思っています。こんなものが欲しいと思ったら、親しい女性作家にお願いして、焼いてもらったりもします。でも、今ある収納スペースに入りきらないほどは持たないように気をつけていますね」。

蒸篭、お櫃など、自然素材の調理器具を中心にまとめたコーナー。

蒸篭、お櫃など、自然素材の調理器具を中心にまとめたコーナー。


細々とした調理器具は、一目でわかることが大切。バラバラさせずに、用途別にまとめて、すっきりと。

細々とした調理器具は、一目でわかることが大切。バラバラさせずに、用途別にまとめて、すっきりと。


ケーキ型、泡立て器など、製菓用の調理器具もグルーピングして一つのスペースへ。

ケーキ型、泡立て器など、製菓用の調理器具もグルーピングして一つのスペースへ。

「定番」を知ってこそ、家庭の味が守られる

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滝澤さんが料理教室で伝えているのは、子どもからお年寄りまで、どんな年齢の人がいても全員で食卓が囲めるような「家庭の料理」。レシピも、身近にある食材、調味料を使って、毎日作りやすい「定番」と呼べるものを基本にしているそう。

「たとえば日本の煮物だったり、イタリアのミートソースだったり。その国に伝わる本当の味は、どれも定番が紡いでいるものですよね。誰にも帰る場所があるように、レシピも、いつでもそこに帰着できる定番があります。そこがわからないまま、突飛な創作料理ばかりになってしまうと、食文化が途切れてしまうような気がして。いつでも帰れるお家の味を、大切にしたいんです」。

年齢を重ねるごとに、定番レシピの大切さがよりわかってくる、と滝澤さん。1家庭につき全部で30品の定番レシピがあれば、一生豊かな食生活を送ることができると教えてくれました。
清潔で、すっきりと整えられたキッチンアトリエ。そこは、「定番」に敬意を抱く滝澤さんの姿勢が表現された、とても美しい空間でした。

滝澤さんが大切にしている定番品は、研ぎ石。「20本ほどある包丁を、まとめて定期的に研いでいます。包丁の切れ味は料理の善し悪しを決める大切なポイントです」。

滝澤さんが大切にしている定番品は、研ぎ石。「20本ほどある包丁を、まとめて定期的に研いでいます。包丁の切れ味は料理の善し悪しを決める大切なポイントです」。