vol.21 「収納の達人」のために設計した美しい一軒家

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家をつくる前に、収納計画をしっかり立てていたクライアント。そんな収納の達人のために設計された家は、まさにパーフェクトな収納住宅でした。

収納アイディアの集大成がココに!

優れた機能性と、研ぎすまされたデザイン。モダンで美しい住宅づくりに定評のある、井手勤さん。今回、井手さんにご案内していただいたのは、都内のN邸。昨年竣工された新築の一軒家です。
(*施工:㈱寺本建設 家具:松本家具製作所)

「20年以上、さまざまな住宅を手がけてきましたが、こちらほど完璧に収納をしている家は、見たことがありません。これまで自分が積み重ねてきた収納のアイディアをすべて投入した、おもしろい仕事になりました」(井手さん、以下同)。

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1Fのリビングダイニング。上質な木材を使用した壁面とカウンターは、エレガントな印象です。

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収納をいくつか開けたところです。これだけでも、かなりの収納力があることがわかります。向かって左側がキッチン関係の収納。右側は散らかりがちな書類や料理本など、きちんと仕分けています。

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2人の娘さんがいるNさん。カウンター下の壁面収納は、一部を子ども専用に使っています。左右で姉妹のスペースを分け、引き出しにはそれぞれ大切なものをしまえるように工夫しているとか。

家づくりの前に、
収納イメージを完成させる

「収納が好きという人は多いと思うんですが、Nさんは好きのレベルを超えていました。本当に、職業になるんじゃないか、と思うくらい(笑)。設計前から、収納用品を買い揃えていましたし、どこに何をしまうかという計画が細部にまできっちりとなされていたんです」。

Nさんは収納のイメージをスケッチにして、井手さんと打ち合わせを重ねました。収納に対する強い思いを受け取った井手さんは、とてもやりがいを感じたそうです。

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キッチンから奥のパントリーを眺めたところです。パントリーは引き戸で閉じることができます。

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ファボーレヌーヴォの収納ボックスに惚れ込んだNさん。サイズ違いで30個ほど購入し、「これがきちんと入るようにパントリーを設計してください」と井手さんにオーダーしたそう。

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2FのWIC。右側の引き出しはIKEAのシリーズです。事前にこの引き出しを決めておき、ちょうどはまるようにサイズ設計されています。

「ふつうは、収納のイメージってあまり湧かないまま、大まかな入れ物を作っておいて、後からなんとなく詰め込んで行くという方が多いんですね。でも、Nさんほどの収納の綿密な計画ができていれば、無駄なスペースをつくることなく、生活動線も見えやすくなる。これほどのテクニックを持つのは難しいかもしれませんが、家づくりの前に、収納計画を立ててみるというのは、非常に有益だと思います」。

収納の小技をあちこちに組み込んだ家

井手さんが設計したN邸には、家のなかのあちこちに、さまざまな収納の小技が効いています。まずは、玄関から、見てみましょう。

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玄関を外部から見たところです。玄関扉の横に、もうひとつ小さな扉が設置されています。内側には、便利な宅配ロッカーが2つも!

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玄関内部には、収納力の高い棚を設置。

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収納棚を開けたところです。左側、中央あたりに長方形の穴が開いているのがわかりますか? これ、なんと外側の郵便受けから繋がっています。

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リビングのピアノの上には、楽譜やDVDを整理できる扉付きの棚が。この棚は、表の宅配ロッカーの上部スペースを利用してつくられたもの。

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洗面台の上にある三面鏡を開くと、中央にはコンセントが取り付けられていて便利。また、左下は箱ティッシュを逆さに置くと下から引き出せる穴が開いています。

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食器棚の下に、ステンレスのバーを取り付けて。目立たずにまな板を収納でき、乾燥もバッチリ。

建築家と暮らす人が一緒につくる収納

N邸が完成してから、収納のすべてを見せていただいたのは、今回が初めて。改めてNさんの収納のテクニックに感服したという井手さん。

「ここまできちんと収納を使いこなして、生活を楽しんでいる様子を見せていただくと、建築家冥利につきます」。

井手さんが住宅の収納として提案するのは、見せるもの、見せないものを上手に分けるテクニック。パントリーやWICなど、扉のある収納スペースをうまく使いこなせば、整頓がしやすく、メリハリのある家づくりができるとのこと。

これから家を建てるという人は、ぜひ参考にして、事前の収納計画を建築家と相談してみてはいかがでしょうか。