vol.5 収納の「新しい慣習」を発見する方法

美しい空間作りのプロである建築家から、収納にまつわる独自の思想と、実践のテクニックをご指南いただくこのコーナー。今回は4月にグランドオープンしたルミネの商業施設「NEWoMan」をふくむ、JR新宿駅新南エリアの全体環境デザインを担当、目下活躍めざましい若手ナンバーワン建築家「sinato」の大野力さんのオフィスに伺いました。

商業施設から住宅、オフィス、アートインスタレーションまで!ありとあらゆる空間デザインを幅広く手がける大野さん。スケールや用途問わず、氏が仕事において最も心がけ、真摯に取り組んでいるのは、古いセオリーにとらわれず、なるべくすべてのことをゼロから考えてみること。「もちろん、すでにある慣習は経験や知見が蓄積された結果なので、100個あるうちの99個は正しいことが多い。ただそのうちの1個くらいは、変えてよくない?というものがあって。ほんのちょっとだけ新しい可能性を提案し『新しい慣習』になっていくことを望んでいます」

さて、そんな氏の、オフィス。設計スタッフ、また模型を作るインターン生などいろんな人が働く場として、まさに「新しい慣習」となるような、ハッとさせられる収納の発想が、随所に見つかりました。

「白線を引いただけ」の個人ロッカー棚

まず目を奪われたのは、建材サンプルや資料ファイルなどを収納する部屋の真ん中にどん!とはだかる巨大テーブル、実はこれ、個人ロッカー棚がわり。白線で区分された領域に、各々が進めているプロジェクトで必要なあれこれが置かれています。「僕らが扱うものは、非常に不定形なんです。大きなサンプルもあれば書類もある。棚や箱に入れるのが難しいので、そこに線の引かれた平面だけがあり、線をまたがないように置く。そんなささやかな秩序でも、あるとないとは全く違いますよね」

棚の「凸凹設置法」で収納力が2倍に!

こちらは、プロジェクトごとのファイルを収納する棚。まず鉄のパイプを通し、木のボックスを互い違いに設置することで、2倍の収納力に。より少ない資材で、より多くの収納を。そんな小気味のいい発想の転換に、膝を打ちます。

空間を美しく柔らかにさえぎる「仕分けの花園」

無機質になりがちなオフィス空間に潤いをもたらす、シンボリックな花々!この裏は模型制作などの作業スペース。2×4材を格子状に組んで仕切り、半分はホワイトボードを、もう半分は「プリザーブドフラワー」と呼ばれる枯れない草花を、一面に吊り下げています。まるでショップディスプレイのように空間を美しく、ゆるやかにさえぎりつつ「模型で小さな木などを作るときに使う」資材の、見せる収納も兼ねています。

デッドスペースを生かした「4インチの見立て」

またホワイドボード部裏のデッドスペースにも注目!「無印良品」のペンスタンドを4インチの幅にずらりと並べ、ペンやカッター、替えインクなどの文具を収納。「これは4インチの奥行きという“発見”がまずあって、この奥行きを生かすために、細かいものを分かるように置こうというふうに考えが発展していく。そこの“見立て”が大切だと思います」

もののサイズや形に対応した「収納の要塞」

作業スペース内の棚もひと工夫が。デスクと同じサイズの棚を設置。このままだと奥行きが深すぎるため、取り出すところを前面とサイドの両方に設け、取り出しやすく。また、小さいものを納める横の棚板と、パネルボードなどを置く縦の棚板に分け、下の浅い引き出し棚には、紙ものなどを収納。とにかく細かいのは「日々不特定多数が出し入れするので、おおざっぱにすると、カオスになってしまうんです」

ただそんなふうに、使うものに対応した場を細かく分類するだけでも不十分で、そこは必ず「運用」とセットであることが重要だという大野さん。「たとえば漫画を1巻から順番に本棚に並べるのと同じで、使う人みんなが「運用ルール」を持っておかないと破綻しますよね」まさに建築家らしい表現に、大きく納得!