vol.3「ものにとって“居心地のいい場”を作る」

独自の哲学や世界観を持つ建築や空間を作るプロたちに、収納に対する思想やルールを聞くコーナー。第三回目は、軽井沢「星のや」をはじめ、これまで全国の様々なリゾートホテルや住宅の設計を手掛け、昨年のグッドデザイン賞を受賞した「佐々木達郎建築設計事務所」の佐々木達郎さんに話をうかがいました。

その場の、暮らす人の魅力を引き出す建築

「その場所、場所でのあるべき姿。街の魅力、場の魅力を、普通の人よりも細かく、違う視点から引き出すこと。それが、僕の仕事だと思っています」と佐々木さん。それは住宅においては「暮らす人の魅力」もそこに加わります。「クライアントの人となり、生き様が建物に落としこまれるのが理想です」

また収納において心がけているのは、人だけじゃなく、ものにとっても、居心地のいい状態を作ってあげること。「ものを擬人化させたときに、彼らのしかるべき居場所というのがあると思っていて。そのものの形もあると思うんですけど、それだけじゃない、ものと人が気持ち良く、一緒に過ごしている感じが出るといいな、と」

住み手の個性が見える“作り込みすぎない”棚

撮影:鳥村鋼一

個人住宅では、扉のないオープン棚を作ることが多いという佐々木さん。「リアルな話をすると、コストの問題もありますが、作り込みすぎず、わりとおおらかに考えていますね」ものに愛着を持って、自分の選んだものを、飾りながらしまう。また見せたくないものがあれば、かごや箱を使ってもいい。そこもふくめて楽しんで欲しいから。「引き渡しから1年経って訪れたとき、施主さんが自分たちなりに飾り付けていたりするとうれしいですね。ものと家と人のかかわりが見えてくる。あるべき姿だなと思います」

ただただ美しく合理化されたモジュール収納

さて、佐々木さんのオフィス。まさしく氏の人格が反映された、実に端正で合理的な作りです。まずL字型の長い棚が、中央にパーテーション代わりに設けられ、空間を仕切っています。奥はスタッフのワークデスクが並ぶオフィス、手前は大きなミーティングテーブルが置かれ、打ち合わせなどに使う場として機能。

「これ実は、すべて同じサイズのボックス棚なんです」と佐々木さん。4マスひとつの棚で、ふたつ分を積み上げ、6個分を連ねたモジュールタイプとなっています。すでに購入済みだったワークデスクの高さと合わせているので、すっきりとした印象に。

それぞれのマスはA4サイズがきっちりとおさまる33cm四方。雑然とした書類はファイルやファイルボックスにまとめ、また建材サンプルなどは箱に入れて収納。

仕切りの棚も、上下で向きが互い違いになっており、オフィス側が上、打ち合わせブース側が下と、それぞれの方向から取り出せるようになっています。

さらに素材は「部屋はまっ白で素材感がないので」むきだしの木目が存在感のある建材用のカラマツ合板を使い、柔らかさを表現。一見ラフな雰囲気ですが、小口を触ってみると、ちゃんときれいに処理がなされているので、上品な仕上がりになっています。

家具そのものはいたってシンプル、なのに使い方によって、このような“場にそぐう”利便性と美しさを兼ね備えた収納となっているのは、見習いたいところ。「建築家としてのロジックだけでなく、使う人がそれをどう感じるか。それが大事だと思っています」

佐々木達郎さんが手がけた収納事例

撮影:鳥村鋼一