vol.33 「リビングからバスタブが見える家」の収納スタイル

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リビングからバスタブが(逆にバスタブからもリビングが)見える、大胆発想のリノベーションマンション。その家に施された遊び心いっぱいの収納アイディアを取材しました。

建築家夫妻が手がけた唯一無二の自邸リノベ

建築事務所をご夫婦で営む佐々木倫子さん。「.8 TENHACHI」というユニークな屋号は、「80%」の意味と、プライベートなラッキーナンバーから取ったもの。建物の完成そのものは80%であり、愛着を込めてメンテナンスをしながら暮らしていくことで、100%に近づく……そんな発想から名付けたそうです。

そんな佐々木さんが家族3人で暮らすお宅は、築37年の中古マンション(67㎡)。一般的な2LDKでしたが、スケルトンにして、全面的にリノベーションをしました。

この家でひときわ目を引くのは、存在感のあるバスルーム。扉のないボックス型のバスルームは、手前に白いバスタブが置かれ、リビングの風景の一部になっているのです。

バスタブが見えるリビング。この部屋にいると、ごく自然な風景に見えてくるから不思議です。

バスタブが見えるリビング。この部屋にいると、ごく自然な風景に見えてくるから不思議です。

オープンなバスルームには、工夫がいっぱい

「扉を付けて閉じてしまうことは簡単ですが、そうすることで空間が狭くなります。バスルームをオープンにしたら、全体に繋がっているイメージが共有されて、リビングもバスルームも、より豊かになりました。お風呂から眺めるリビングは、なかなか面白い風景です。テレビを見ながら入ることもありますよ(笑)」(佐々木さん、以下同)。

バスタブの前は全面収納。収納全体に扉を付けると圧迫感が出るので、一部オープン収納に。シャワーカーテンレールの上にも収納棚があります。

バスタブの前は全面収納。収納全体に扉を付けると圧迫感が出るので、一部オープン収納に。シャワーカーテンレールの上にも収納棚があります。

収納の扉を開ければ、小さな脱衣スペースにもなります。衣類もすぐに取り出せて、便利。

収納の扉を開ければ、小さな脱衣スペースにもなります。衣類もすぐに取り出せて、便利。

バスタブのすぐ脇にある洗面台の上には、フレームに物が置ける鏡と、小さなディスプレイ棚を設置。よく使うものを整理して、見られてもいい収納を心がけているそうです。

バスタブのすぐ脇にある洗面台の上には、フレームに物が置ける鏡と、小さなディスプレイ棚を設置。よく使うものを整理して、見られてもいい収納を心がけているそうです。

バスルームに扉がないと、室内に湯気や湿気が入らない?という素朴な疑問に対しては
「湿気は部屋全体に拡散させるイメージ。扉がない分、一箇所に湿気が溜まることがないですよ」と佐々木さん。
家全体を使って空気を循環させるという発想も、とても柔軟な考え方です。

センスを活かして、見せる収納

デザインが美しい本や、調味料を入れる容器。
よく見える場所に置くものは吟味をする、と佐々木さん。モノ選びのセンスは、訪れる人の目を楽しませてくれます。

「キッチンも吊り棚にして、リビングのカーテンレールの上にも、ディスプレイができる収納棚を付けました。そうですね、“見せる収納”はわりと得意なほうだと思います」。

調理器具やマグカップは、使いやすい配置で吊るされています。

調理器具やマグカップは、使いやすい配置で吊るされています。


包丁がさっと付けられる磁石のバーを設置したのは、さすがのアイディア。

包丁がさっと付けられる磁石のバーを設置したのは、さすがのアイディア。

キッチンのカウンターテーブルの下は、雑誌サイズもすっきりと収まる書棚。

キッチンのカウンターテーブルの下は、雑誌サイズもすっきりと収まる書棚。


窓際の棚には、同じシリーズの書類ケースを揃えて、すっきりと。カーテンレール上の収納棚にも、絵や本が美しくディスプレイされています。

窓際の棚には、同じシリーズの書類ケースを揃えて、すっきりと。カーテンレール上の収納棚にも、絵や本が美しくディスプレイされています。

見せない収納は、つくる場所を考えて

「見せたくないものをしまえる収納は便利ですが、閉じた部分で居住空間を狭めるのはもったいない。だから、どの場所につくるかは、バランスを考えます」。

デッドスペースにならない場所には、ボリュームをとって見せない収納をつくり、部屋全体がすっきり見える工夫をしています。

キッチン奥は、すっきりとした白い扉で、大きな壁面収納をつくりました。

キッチン奥は、すっきりとした白い扉で、大きな壁面収納をつくりました。

壁面収納の扉を開けたところ。食器、雑貨、洋服など、ボリュームのあるものを入れています。

壁面収納の扉を開けたところ。食器、雑貨、洋服など、ボリュームのあるものを入れています。

寝室上のロフトは子どもの遊び場。見られたくないものを一時避難できる便利なスペースです。

寝室上のロフトは子どもの遊び場。見られたくないものを一時避難できる便利なスペースです。

一緒にいながら、個々を尊重できる家

佐々木さんの家で感じられるのは、家族が一緒に過ごせる連帯感。と同時に、一人で落ち着ける場所が家の中の各所にあるという、何とも不思議な安心感でした。

部屋を壁で区切ってしまうのではなく、それぞれの機能を持たせながら、ゆるやかに全体が繋がっている家。収納も、取り出しやすく、片付けやすい、自然な動線上に設置され、しっくりとなじんでいる印象です。

寝室の天井梁部分には、ロールスクリーンを収納。下げれば目隠しにも使える上、夜にはプロジェクターで家族の映画館に早変わり。

寝室の天井梁部分には、ロールスクリーンを収納。下げれば目隠しにも使える上、夜にはプロジェクターで家族の映画館に早変わり。

「どれくらいモノを持っていて、それらをどう収納するか。それは、家族のライフスタイルそのものだと思います。インテリアや間取りを考えるのと同時に、収納について家族で話し合うのは、過ごしやすい家づくりに役立つと思いますね」。

リビングからバスタブが見えるユニークな家で暮らす建築家は、家族との時間を大切に、暮らしの工夫を楽しむ達人でした。