ごく普通のサラリーマン夫婦が二拠点生活(デュアルライフ)をはじめた経緯、別荘と出合ったエピソードからスタートです。

N・Y

N・Y

東京郊外の一軒家で、3人家族+柴犬(3歳)と暮らす、恐妻家のお気楽会社員(53)。30年以上続けるアマチュアJAZZバンドでは、ギターを担当。ジャズ雑誌などで評論記事を執筆。暮らし系のエッセイは初挑戦。コスパよく別荘生活するコツを、あまり堅苦しくなく、お伝えできたらと思います。

別荘がどうしてもほしい3つの理由

「別荘がほしい」なんて、最近はあまりピンとこないことかもしれません。「持たない暮らしが身軽でよい」とされる風潮のなか、タイムシェア別荘や、サブスク別荘なども誕生していて、滞在型の旅はもっと気軽になっています。それでも、私と妻(51歳、出版業界)は、長い間「別荘がほしいね」と話してきました。理由は3つあります。

その1 犬を飼っているから。

コロナ禍で一時的に、夫婦でリモートワークになったことと、一人息子も大きくなり、ある程度世話を任せられると判断して、3年前、わが家も初めてのペットを迎えました。
柴犬の、名前はゴン太。性格はおとなしくて人好き、とても飼いやすい犬なのですが、如何せん臆病な性格。
一昨年、どうしても用事があって、ドッグラン付きのペットホテルに一週間預けたところ、心細かったのか、ケンネルコフに罹患し、完治するのに2ヶ月かかってしまいました。
家族での旅行は諦めたくない。でもペット用ホテルはどうも気が乗らない。別荘を旅先にすれば、いつでも一緒にいられるのでは……と思いました。

その2 タイムシェア別荘で、別荘のよさを体感したから。

数年前まで、富士五湖にあるタイムシェア別荘を利用していました。契約期間は、10年。一年のうちの7泊8日宿泊でき、日程によって金額が分かれているプランでした。
ゴールデンウィークやお盆、紅葉シーズンはとても高くて手が出ません。私たちは一番安価な冬の日程で会員権を購入し、実際には当該の日程を放棄して、その都度別途料金を払い、空いている部屋に宿泊するという方法で利用してきました。
当時はこどもも小さかったので、一棟借りできるタイムシェア別荘は気兼ねもなく、とても使いやすいものでした。ペット棟もありましたが、まだゴン太を迎えていなかったので、利用したことはありません。
だいたい2泊ほどで利用していましたが、近くの大型スーパーで、地域の食材を買い込み、仲のいい友達家族を伴って、バーベキューをしたり、釣りに出かけたり……と、とても楽しい時間を過ごすことができました。馴染みの飲食店もいくつかできました。
このタイムシェア別荘を利用して、実感したのです。どこか、自宅以外に、景色や暮らしの楽しみを定点観測できる場所を持つことはとても有意義だ、と。

その3 山の中で、音楽と読書三昧したかったから。

私には収集癖があって、CDを3千枚以上所有しています。音楽もサブスクの時代ですが、ジャズという分野は「ブートレグ」といって、現在も海賊版が多数出回っています。
そういう音源はサブスクでは聴くことができないので、どうしてもCDやレコード、ということになるのです。これに加え、私が集めている楽器の数々もあって、その物量が狭い自宅では幅をきかせており、家族からはとても不評なのです……。
本も、なるべく図書館で借りるようにはしていますが、出版業界の妻の仕事柄もあって、やはり増える一方。処分してもよいのですが、息子が読むかも?と思うと踏み切れないところがあります。
「静かな山の中にこれらを移動させて、好きな音楽を聴きながら、本をゆっくり読んでみたい。」
夫婦で、そんな夢を語るようになりました。

住宅ローンも残っているのに、別荘とは

とはいえ、都内近郊の一軒家のローンがまだ残っています。別荘を持つなんて、夢のまた夢かな……と思いつつ、タイムシェアの権利が終了。もう一度購入することも考えたのですが、やはり、「音楽と読書三昧」の夢を叶えるには、自分たちの建物を所有しなければ、という思いが膨らんでいきます。

また、タイムシェア別荘は、とても清潔で快適でしたが、ほぼホテルのようなものなので、「自分たちのすまい」という感覚からはどうしてもズレる。好きなモノに囲まれたセカンドハウスがほしい。やはり、二度目のタイムシェア購入はないな、という結論に至りました。

以来、私の趣味は「別荘探し」になりました。
トイレでも、お風呂でも、たまに通勤する電車の中でも、スマホで物件情報をチェック。狙うエリアは、慣れ親しんだ富士五湖です。土地を買って一から建てる体力はなく、中古物件も富士五湖はソコソコいい値段の物件が多く、コレだ!というものには出会えませんでした。
熱海や中伊豆あたりまで見てみましたが、「湿気が…」などの口コミを見ると、怯んでしまいます。妻は、「そのうち、縁があればそんな物件も出てくるよ。日本のどこかに、私を待ってる家がある〜♪」などと言っていました。

「別荘、もらってくれませんか?」

そんな日々を過ごして、しばらく経った頃のことです。
久しぶりにFacebookを開くと、知人がこんな投稿をしていました。

「信州、◯◯高原にある別荘を、お譲りします。築30年の、ハウスメーカーが建てた家で、まだまだきれいです。数年前に私も譲り受け、あちこちリフォームしたのですが、さまざまな事情で通うことができなくなってしまいました。別荘地なので、メンバーの管理費はかかります」

そして、そこには、森の中に建つ小さな家の写真が。
ピン! ときました。

「これだ!」
私はすぐに知人に連絡を取り、別荘を探していたことを話しました。そして、別荘の場所や履歴について、いろいろとヒアリングをしたのです。聞けば聞くほど、その家は私たちにぴったりだと思いました。探していた富士五湖よりは東京から少し離れますが、三重県出身の私にとって、西寄りになるのは、むしろ帰省への中継地点となります。

妻に話して、その家の写真を見せたところ、「うん、いいと思う!」とノリノリ。
妻が少しでも懸案事項を出したら、すぐに止めようと思っていたのですが、この調子なら大丈夫そうです。さっそく見学をすることにしました。

しかし、本当に不思議なことがあるものです。
「求めよ、さらば与えられん、とは本当だったね」と、妻と初めて現地へ向かう車の中で話していました。結局、手続きにかかる金額だけでこの家を手に入れることになったのですが、後からいろいろ調べてみると、全国では、空き家や別荘を、こうして譲渡していく例がかなりあるようです。

「別荘=金持ちが買うもの」と思い込んでいた私ですが、ひょっとしたら、他の別荘も、こうやって回っているものもあるのかもしれません。
ただ、これはタイミングも含めて、知人からのご縁です。この「棚ぼたハウス」が、きっと私たちを待っていたのだと信じることにしました。

こうして、突然に、わが家の二拠点生活がスタートすることになりました。
しかし、しばらく使っていなかった家です。ひとまず、はじまりは掃除から……ということで、続きは次回に。

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