文庫、新書、文芸書、雑誌にマンガ、そして写真集…。サイズやジャンルの異なるたくさんの本をプロはどのように収納しているのでしょう? ブックコーディネーター 内沼晋太郎さんの自宅&オフィスを拝見!
事務所はあくまで仕事の場所。本は置かないと決めています
川合
ブックコーディネーターとしての仕事に加えて、クリエイティブディレクターとして商品プロデュースや、執筆活動、講演など多方面でご活躍されていらっしゃいますが、資料等はどのように整理、管理をされていますか?
内沼
書類はプロジェクトごとに分けていて、A4などの紙の資料は電子化してEvernoteで管理。今動いている最新のプロジェクトに関するものはファイルボックスに、しばらく使わない少し古いものについてはダンボールに入れて整理しています。ファイルボックスとダンボールに合わせて、自宅と同じ素材で棚を作ってもらいました。
川合
オフィスの棚にも、内沼さんの古材へのこだわりが感じられます。
内沼
既成のファイルボックスやダンボールは、ふつうに並べると味気なくなってしまうので、古材の棚と組み合わせることで自分好みの空間を作っています。
川合
オフィスには、本がないんですね!?
内沼
なるべく本は置かないように決めていて、書類棚はなるべく整然としたかったんです。
川合
仕事場に本がないというのは、意外です。不便じゃないですか?
内沼
「どっちかにまとめないとだめだな」っていうのがまずあったんですよね。 どの本が仕事の本で、どの本が自分の趣味の本、と分けられないので。 僕の仕事は、だれかのために本を選んだりすることであるとすると、自分が持っているものがちゃんとすぐに取り出せることが大事だとおもったんです。 たとえば、ある本を見つけようとするとき、「事務所にあるはずだ」とおもって来てみたら本がなくて、「あ、家にあったのか」とおもい直して、家と事務所を往復する破目になる…みたいなことがいちばん嫌でした。
川合
たしかに、それは避けたいですね。
内沼
「自分が持っている本」ということに関していうと、僕にとって本は9割5分趣味なんですよね。 自分が本を読んでいる時間は自分の時間。 そう考えていくと、家にないのはさみしいじゃないですか。 事務所にまとめるってすると、仕事になっちゃうというか。 それで、事務所には本を置かないということになっている。
川合
本が主体の生活。 やはり、本に触れているときが好きですか?
内沼
たくさん本に囲まれているときが好き、ですかね(笑)。 自宅はもはや、本が主役です。 事務所はあくまで仕事の場所なのでコンパクトに。
川合
「本のある暮らし」をより楽しむために、家でできることがありますか?
内沼
僕の本は書棚に集中させていますけど、実は料理の本はキッチンの棚の中にあるし、ディスクガイドみたいな本はCDラックの中にあるんですよ。 そういう風に家の中のいろんな場所に本を点在させた方が、楽しいんじゃないですかね。たとえば花を育てていたら、その横に花の育て方の本があるのは普通かもしれないけど、花を描いたイラスト集とか、花をめぐるエッセイとかをちょっと置いてみたりすると、生活の中に奥行きがでてきます。 機能やテーマに合わせてもいいですし、まったく関係ない本でもいい。 1冊1冊の本にはすごくたくさんの内容が書かれていて、並べるだけで本は多くのことを語ってくれますから。
川合
なるほど。本との付き合い方に広がりがでますね。
内沼
「収納」っていう概念が、「ものをしまっておく」だけだと成立し難くなってきている時代かなと思うんですよ。 データだったらデジタル化するとか、車だったらレンタルやカーシェアリング、洋服だってシェアしたりとか…。 「持ち方」の選択肢を選べるようになってきている時代。 それでもあえて、自分が所有して手元に収納しておくという選択をするのであれば、ただ置いておくだけじゃなくてもっと活用できるといいですよね。 「収納」も進化していく時代が来るのではないかとおもっています。
川合
本の分野では、ぜひ内沼さんに新しいサービスやシステムをプロデュースしていただきたいですね(笑)。
内沼
収納システムではありませんが(笑)。 新たなスマホアプリ『stand』のサービスを3月から開始しました。 読書をより楽しんでいただけるサービスになっているので、チェックしてみてください。 そして、都内に今秋開業予定の、550坪の売場面積を誇る大型書店と、青森県八戸市に来年オープン予定の本にまつわる公共施設のプロデュースを行っています。こちらもお楽しみに。
ゲストプロフィール
内沼晋太郎
numabooks代表。ブックコーディネーター、クリエイティブディレクター。ショップやライブラリのプロデュースやコンサルティング、読書用品の提案などを手がける傍ら、新刊書店「本屋B&B」の経営も行う。著書に『本の逆襲』(朝日出版社)など。