インテリアスタイリスト 川合将人さんが訪れたのは、グリーンと花に満たされた心奪われる世界を表現する花生師として、テレビや雑誌、イベントなどで幅広く活躍される岡本典子さんが、ご家族と植物と心地よく暮らす家。家族も植物もみんなが気持ちよく共生するハイセンスな空間づくりについて話を伺いました。

川合 将人

川合 将人

雑誌や広告、住宅メーカーのモデルルームなどで活躍中のインテリアスタイリスト。近年はコンサルティングや空間演出等も展開。

http://kawaimasato.com/

岡本典子さんのセンスがひかる空間づくりとは?

第一印象を大事にコーディネートする

川合将人(以下、川合)

“花生師(はないけし)”という岡本さんの屋号はどうやって生まれたんですか? 気になってしまって。

岡本典子(以下、岡本)

フォトグラファー 泊昭雄さんが名付けてくれたんです。花生師として活動する前はライフスタイルショップの植物のフロアを担当していたんですが、そこを辞めて独立しようかなっていうときに泊さんが気にかけてくださって。「明日からでもすぐに使っていける活動名を掲げて準備していった方がいいんじゃないか」と後押ししてくれました。「“花生師”ってのは、どうだ?」って、その場でアイデアをいただいたんです。

花生師 岡本典子さん

川合

鳥肌が立ちました。泊昭雄さんですか、すごいですね。

岡本

ものすごく深く心に突き刺さりました。「生」という字が自分のなかでしっくりきたんです。活動名に相応した活動をしていかなきゃなって、励みになりましたね。泊さんに出会えたことにとても感謝しています。

インテリアスタイリスト川合将人さん

川合

お住まいを拝見すると、その名のとおり植物が生きるご自宅になられてるなという印象です。

岡本

うれしいです。

川合

玄関の扉を開けた瞬間から驚きました。たくさんの植物に彩られた心地よい空間が出迎えてくれたので。

岡本

第一印象はなんでも大事ですから。うちは高台にありますので、坂を上って訪れてくれる方が玄関を開けた瞬間、ほっとできるような場所にしたいなっておもってコーディネートしています。

岡本さんの感性で彩られた玄関。一つ一つ個性的で表情豊かな花やグリーンが迎え入れてくれる

植物が映える空間にするため、玄関の靴は見えないように収納

「見せる」と「隠す」で気持ちまで切り替える!

川合

ほんとにほっとする空間です。リビングも生活感がまったくありませんね。テレビは置いてないんですか?

岡本

テレビを使わない時は存在が見えないように、普段から扉の中に置いているんです。リビングは家族にとっても植物にとっても心地いい空間にしたいので。8歳の息子と6歳の娘がいるんですが、時間を決めてテレビを観せています。がんじがらめにはしない程度に自己申告制にしているんだけど、子どものけじめのためにはよいかな。

川合

情報の整理を徹底されていらっしゃるんですね。生活感を遮断することで、気持ちの切り替えにもなりそうです。スッキリした空間に、アンティークの家具と植物が馴染んでいて落ち着きます。

岡本

空間のレイアウトを考えるときに、いかに便利で使いやすいかってことも考えますけどどちらかというと、どう広くみせるか、どう抜ける感じをだすかってことを大事にします。 その上で植物と相性がいいものとなるとアンティーク家具。自分のなかのコンセプトみたいなものなんだけど、時代を感じるものやストーリーを感じるものが私は好きで、それはお花選びにも通じていて…。等級のよい、頭がすごく大きくて茎がまっすぐで凛とした薔薇よりも、ちょっと曲がってて咲き切ったあとのような儚い薔薇に魅力を感じるんです。だからそれを感じさせないテレビとかパソコンは排除する。それが私なりの空間づくりのルールかな。

川合

もの選びのルールともいえますね。

岡本

そうですね。たとえば収納ボックスなども風合いが落ち着くようなものしか置きたくなくて。二子玉川に「BOX&NEEDLE(ボックスアンドニードル)」という箱やさんがあるんだけど、そちらで取り扱っているネパール産の紙でつくられた箱は柄とザラついた質感が好きで使っています。極力、プラスチック製のものなどはなくしていきたいんですがなかなか好みのものがないので、「BOX&NEEDLE」さんでセミオーダーして箱を作ってもらったりもしています。

川合

お花が映えるような置き方やアレンジもいいですね。

岡本

仕事柄、個展やイベントをするので什器として必要なものがうちのリビングにはいっぱいあるんです。撮影のときに使う小道具も混ざりこんでいるし…。せっかくだから、すべてディスプレイとして見せちゃえ! という感じです(笑)。

テレビをはじめ、お子さんの学校関係のもの、仕事の道具など、雑多になりがちなものはすべて扉の中に整理して収納

リビングの片隅にセンスよく置かれた大きな籠は、学校や習い事から帰宅したお子さんたちの道具入れ

ゲストプロフィール

岡本典子

Tiny N主宰。日本の短期大学で園芸を学んだ後、渡英。英国内での花のコンペティションにて多数の優勝や入賞経験あり。国家技能資格上級を取得し帰国。帰国後、TVや雑誌、広告、展示会、店舗の空間スタイリングなどを手がける。その他イベント、ワークショップなどを通して花や植物にまつわる活動に取り組んでいる。 http://tinynflower.com