インテリアスタイリスト 川合将人さんが訪れたのは、グリーンと花に満たされた心奪われる世界を表現する花生師として、テレビや雑誌、イベントなどで幅広く活躍される岡本典子さんが、ご家族と植物と心地よく暮らす家。家族も植物もみんなが気持ちよく共生するハイセンスな空間づくりについて話を伺いました。
家族みんなが楽しめる空間づくり
子どもの目線になって空間も収納も考える
川合
岡本さんのおおらかさがご家族にとっても植物にとっても心地いい暮らしづくりに欠かせないエッセンスのような気がします。お子さんのお部屋を整えるときに大事にされた点はありますか?
岡本
子どもにとって、秘密基地みたいなわくわくたのしいっていう日常が大事だから、主人と「どうしたらわくわくしてくれるかな?」って相談しました。最初は既製品の二段ベッドを買うという案もあって、お店をいろいろみたんですけど、なんかわくわくしなくて。それで「わくわくできる場所をつくろう!」と、主人が制作。
川合
ご主人が作られたんですか! すごい…。
岡本
数年後には壊されてしまうかもしれないけど、「ちょっと隠れるスペースがあったらな…」なんて子どもの気持ちが主人にはすごくわかったみたいです。子どもたちがベッドの上に立って天井で頭をぶつけるようなことがあっても、「『ここは立っちゃいけない場所だ』と自ら学ぶから大丈夫」って、そんな教えもあるみたい。ワイルドなんです。
川合
ご主人のDIYの腕は、プロのようです。
岡本
子ども部屋の収納も主人が作ってくれました。衣類がアイテム別にボックスに入っていて、手前が「いま着る」シーズン中の衣類で、奥にシーズンオフのものをしまっています。
川合
ボックスは小さなお子さんでも持ちやすく、中になにが入っているのかわかるデザインで、ラベルまで貼ってある。お子さんにとっては、ものを元の位置に戻すという練習になりそうです。
岡本
もともとそんな意図があってはじめたんですけど、ひらがなで書いたラベルとカタカナで書いたラベルが混じってしまって…、カタカナがまだ読めなかった下の娘には散らかす理由にされていました(笑)。
川合
微笑ましい光景が目に浮かびます。ご家族みんなでたのしみながら暮らしをつくっているかんじがいいですね。
子ども用のクローゼットもお手製。小さな子どもでも片付けの練習ができるように工夫がいっぱい。
触れて体感した人にだけわかる植物のすばらしさ
岡本
私はできるだけうちの子どもたちに、「お花を飾りなさい」といいたくないんです。お花って気づいたときにその効力にはっとさせられる存在というか。私自身、お花の仕事をやってるおかげで、お花にたすけられてるっていうのが原点にあって、お花の仕事でつらいことがあってもそれ以上のたすけをお花がしてくれているから、お花が好き。 コンクリートの箱(空間)の中に、プラスチック製や鉄製の家具があってもたぶん私は落ち着かないんです。でもたとえばそばに生えている葉っぱ、落ちている葉っぱを1枚家具の上に乗せるだけで、空気が変わるんですよね。それって、実際に体感したひとにだけわかる植物のすばらしさみたいなもの。
川合
ほんとうに空気が変わりますよね。インテリアスタイリストの仕事でぼくらは、 たとえばモデルルームなどの空間のインテリアを整えて、家具の位置を決めるのですが、そこに植栽が入ると、空間が息づくというか一瞬で劇的に変わるんですよね。お花のチカラ、生き物のチカラってすごいなーといつも思います。 食べものに近いのかもしれないですね、「目で食べるサラダ」というか。いきいきとします。
岡本
「目で食べるサラダ」、じょうず! 子どもたちが将来一人暮らしをするような年齢になって、友達のことや仕事のことなどのトラブルで悩んだときに、友達に相談するのもひとつの方法ですけど、花やグリーンをいただいたり、飾ってみたときに、植物にふと触れて体感をしてほしい。そうしないとはじまらないと思っているんです。 お花って、それぞれの人のタイミングでもっと自由に感じたらいいとおもうんです。「お花=キレイ」っていう、決まった形容詞で表現する必要はないですし、お花の名前だって無理に覚えなくてよくて。「なんだこれ、なんて花だろう」って興味をもてたときがタイミングなので、自由な感性で触れてもらいたいとおもっています。
ゲストプロフィール
岡本典子
Tiny N主宰。日本の短期大学で園芸を学んだ後、渡英。英国内での花のコンペティションにて多数の優勝や入賞経験あり。国家技能資格上級を取得し帰国。帰国後、TVや雑誌、広告、展示会、店舗の空間スタイリングなどを手がける。その他イベント、ワークショップなどを通して花や植物にまつわる活動に取り組んでいる。 http://tinynflower.com