「大人ふたりの暮らしには、ワンルームがちょうどいい」。そんな大胆なコンセプトでマンションを全面リフォームした、インテリアコーディネーターの松永真由美さん。生活の変化に合わせてダウンサイジングした住まいは、居住空間と収納スペースが絶妙に配置されていました。
200㎡の平屋から、55㎡のワンルームマンションへ
東京湾と工場群。まさに横浜らしい風景が見渡せる、高台のマンション。築40年という年季の入った建物ですが、とにかくこの景色が気に入って、居住を決めたという、インテリアコーディネーターの松永真由美さん。外国暮らしも含め、ご結婚後の引っ越しはなんと7回。 「いろんな家に住みました(笑)。アメリカでは、200㎡を超える平屋にも住んだことがあります。荷物もたくさんあったんですけど、この家に暮らすまでには、ずいぶん取捨選択をしました」(松永さん、以下同)。

キッチン、ダイニング、リビング、寝室、書斎、すべてが一部屋に。

松永さんご夫妻が惚れ込んだ横浜の風景。夜景も素晴らしいとか。
“出ているものは、飾るものだけ”
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ベランダに面したリビングスペース。額や棚のレイアウトが美しく、キャスター付きテーブルのバーコーナーも、見習いたいアイディアです。
はじめは古い間取りの3DKだったこのマンションに、そのまま5年ほど暮らし、1LDKへ思い切ったリフォームをしたのが10年前。 10年も暮らしているとは思えないほど、すっきりした室内です。大人がふたりで暮らしていれば、いろいろと物も増えていくと思うのですが・・・。 「“出ているものは、飾るものだけ”。これ、夫の名言です。ユニークでしょう。でも、これは、片付けの基本の基本、のような気がするんですよ。何を出して何をしまい、何を捨てるのかを考えることが、わが家の収納の主軸ですね」。
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ステンレスが美しいキッチン。使いやすく、かつ飾って絵になるアイテムを厳選。
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キッチンカウンターは大きい分、収納力も高く、お気に入りだとか。

キッチンの前の長テーブル。来客用のグラスなど、さっと使えるものだけを出しておきます。「見ていてかわいいもの、それはインテリアになります」
納戸ひとつに収納を集約
では、松永家の「飾りたくないもの」はどこにあるのでしょうか? 「はじめは、大きな壁面収納を考えていたんですが、そうすると、どうしても家具が制限されてしまいます。私は模様替えが好きなので、思い切って収納はバックヤードにまとめることで落ち着きました」。 キッチンの隣には、納戸替わりの小さな部屋が。松永さんは、この部屋に、ふたり分の洋服、季節用品、雑貨、食品類、そして、洗濯機までを納めているのです。

「ここは収納の部屋」と割り切って北側の一部屋を使用。リフォームの際、配水も組み替えて、ここに場所をとる洗濯機を置けるようにしました。
「家電は、どうしても生活感が出やすいので、なるべく目につかないように」。 目立つ洗濯機を納戸に入れたことで、スペースのできた洗面所は、ホテルのパウダールームのように生まれ変わりました。
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横幅のある鏡も設置。美しいパウダールームには、生活感がありません。
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シックなカウンターの下は、大工さんにつくってもらった収納。ここはタオル、ここは化粧品・・・と入れるものを決め、あらかじめ松永さんが高さを指定した引き出しは使いやすさ抜群です。
一部屋だから、どこにいても広く感じる
「ワンルームでふたりなんて、窮屈じゃないの? そんな風に聞かれることもあります。でも、実際に暮らしてみて感じることは、逆なんですね。ワンルームだからこそ、どこにいても広く感じられるんです。たとえば、キッチンで料理しているときも、ふと窓のほうを見れば、とても広いキッチンに感じる。テーブルで仕事をしていても、見渡せば、部屋全部が書斎に感じられるんです」と松永さん。

かなりワイドなワーキングテーブルも、窮屈感なく収まっています。仕事後はテーブルの上を整理整頓が夫婦のお約束です。
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ワーキングテーブル前のベッドコーナーも、ソファ席のように整えて。余計なものがなく、眺めを遮りません。
ワンルームだからこそ、掃除も楽ちん。ぱっと見回して、どこが散らかっているかは一目瞭然です。 「目に入るだけに、あの部分は明日にしておこう、と後回しにできないので(笑)、飾るものだけ、と唱えながらささっと掃除が進みます」。
必要なものを見極めて、風通しのいいふたり暮らしを
家族の人数や、必要なものは、その時期によって変わるもの。 「職業柄、インテリアのことは私がメインで決めていますが、キッチンの黒い扉に惚れ込んだのは夫だったんですよ。飾るものは、ところどころ夫の趣味のものもあります。インテリアは、家族それぞれの味が出るもの。飾るものとしまうものをきちんと話し合って、一緒に楽しんでいけたらいいですね」。 松永さんの住まいには、長く連れ添ったふたりのセンスがしっくりと溶け合い、大人の余裕が感じられました。

エントランスは、趣味の音楽をモチーフにした絵やワインのエチケット
を額に納め、ディスプレイしています。