こんにちは! 今回は先日に視察に行った家具見本市、ミラノサローネで印象に残った収納家具について書きたいと思います。

川合 将人

川合 将人

雑誌や広告、住宅メーカーのモデルルームなどで活躍中のインテリアスタイリスト。近年はコンサルティングや空間演出等も展開。

http://kawaimasato.com/

年に1回の特別な家具見本市

自分がインテリアスタイリストの仕事に進むきっかけとなったのは、イタリアの家具デザインに興味を持ったことでした。 ですから当然、毎年4月にミラノで開催される世界最大の家具見本市であるミラノサローネは特別な存在です。
イタリアだけでなく、世界中の家具メーカーの新製品がいち早く見られるだけでなく、その見せ方、つまり家具を展示する会場での演出や空間の構成などを体験できることが、とても勉強になるのです。
今年は自分にとっては2年振り、11回目のサローネ視察となりましたが、メインとなる見本市会場のフィエラとミラノ市内のショールームや特設会場で行われる発表の数々を目にし、あらためてその規模の大きさと、各メーカーやデザイナーら作り手側の高いクオリティを持ったアウトプットの方法などに感銘を受けました。

ディーター・ラムスのシステムシェルフ

ディーター・ラムス システムシェルフ

センターテーブルの上に吊り下げられた照明はフロスの製品

そんな中で印象に残った収納家具のひとつめは、「デ・パドヴァ」の新しいショールームで使用されていた、ブラウンの家電製品などのデザインで知られるドイツのインダストリアルデザイナー、ディーター・ラムスのシステムシェルフでした。
じつはこれは全く新製品ではなく、もとは「ヴィツゥ」という会社から発売されている製品なのですが、「デ・パドヴァ」からも以前から定番製品としてカラーの仕様などを独自に設定したものが発売されていました。
床から高い天井までを埋めるオープン型の仕様で、広いショールームの中の間仕切りとして、開放感をそこなうことなく個々の展示シーンのゾーニングに用いられていました。
このシェルフは通常、白い棚板、シルバーの支柱や部品というイメージが強く誰もがまず想像するのはその仕様なのですが、ここではすべてがブラックの色で統一されていました。
場所に合わせて拡張したり棚板の位置を自由に動かせたりと、機能的で時代に左右されない、無駄のないシンプルなデザインというのは、もちろん説明をするまでもなく素晴らしいのですが、このオールブラックの仕様はとても新鮮でした。とにかくかっこよかったです。

ガムフラテージが手がける壁付けのコートハンガー

ゲブルーダー トーネット ヴィエーナ

続いては、見本市会場の「ゲブルーダー トーネット ヴィエーナ」の新製品。イタリア人とデンマーク人の2人の建築家によるデザインユニット、ガムフラテージがデザインした、まるで一筆書きのような曲線を描く壁付けのコートハンガーです。
「ゲブルーダー トーネット ヴィエーナ」は曲木による家具の開発・製造によってモダンデザインの礎をつくったミヒャエル・トーネットを源流にしたイタリアの曲木家具の製造メーカーです。近年はコンテンポラリーなデザイナーの起用で話題性のあるプロダクトを続けて発表しています。このコートハンガーは壁面を飾るオブジェのようでもあり、またメーカーが持つ曲木の製造加工技術を巧みに利用したものとして、とても印象に残りました。
ガムフラテージの特徴でもある、曲線の造形デザインと素材である曲木の特性が非常にあっていて、ソファやチェアなど一連のシリーズは全てよい出来映えだと思いました。日本でも実物が見られるようになると嬉しいです。

マッシミリアーノ・ロカテッリによるオープンシェルフ

マッシミリアーノ・ロカテッリ オープンシェルフ

手前はジオ・ポンティのチェア

最後はデザインギャラリーの「ニルファー」が運営してる、昨年にオープンした「ニルファーデポ」という大きな倉庫のような新スペースで展示されていたもので、建築家のマッシミリアーノ・ロカテッリがデザインしたオープンシェルフです。
支柱と真鍮の棚板で構成されている新作で、素材感とその優美な佇まいから最初に見た時は「ニルファー」が取り扱いをしている貴重なヴィンテージのアイテムかと思いました。天井と床の間を伸縮機能のついた支柱で支え、支柱同士の間に棚板を渡す構造になっています。
同じシリーズでアイアンの収納ボックスが下部に設置されたブックケースもあり、そちらも非常に美しい出来映えでした。
「ニルファー」はデザインギャラリーとして、ジオ・ポンティやフランコ・アルビニなどの建築家がてがけた過去のヴィンテージ品と合わせて、アンドレア・ブランヅィやガエターノ・ペッシェ、マルティノ・ガンパーやリンゼイ・アデルマン、フランチェスコ・ファシン、フェデリコ・ペリなど、現代の巨匠から新進気鋭の作家性の強いデザイナーや建築家の新作なども並列に取り扱っていて、その組み合わせの妙にいつも魅了されます。
日本でもこのようなスペースができたらよいのにと、いつも思ってしまいます。

さて、今回は2016年のミラノサローネで印象に残った、3つの収納家具について書かせて頂きました。
次回も続けてミラノサローネのことについて触れたいと思います。
では、また!