こんにちは! 今回は地中海の美しい海に面したフランス最大の港湾都市、マルセイユの必見建築スポットを ピックアップしてご紹介させて頂こうと思います。 丘の上にそびえる街のシンボル、ノートル・ダム・ド・ラ・ガルド寺院や、ル・コルビュジエが設計した集合住宅など、歴史的価値の高い建造物の多い街として知られていますが、2013年に欧州文化首都に選出されて以降から、国際的に活躍する建築家が複数の文化施設の設計を手がけたことで、いまマルセイユは新旧の個性的な建築が集約する街として、世界各国の建築ファンから高い関心が寄せられているのです。

川合 将人

川合 将人

雑誌や広告、住宅メーカーのモデルルームなどで活躍中のインテリアスタイリスト。近年はコンサルティングや空間演出等も展開。

http://kawaimasato.com/

現代の高層住宅の基礎とされる貴重な建築物

ということで、まずは20世紀を代表する建築家、ル・コルビュジェの都市型住宅設計における最高傑作として知られる、 ユニテ・ダビタシオンから触れたいと思います。

ユニテ・ダビタシオン

戦後の住宅難解消を目的として、1945年にフランス復興省の依頼を受け設計された「ユニテ・ダビタシオン」の外観。1952年に完成した集合住宅の金字塔です。

インテリアや建築に関わる人間としては、誰しもが一度は行ってみたいと思うのが、この「ユニテ・ダビタシオン」ではないでしょうか。
コルビュジエが考案した「モデュロール」という人間の身体スケールを基準にした寸法体系で設計されていて、そこに住まう人々が快適に暮らすための工夫がたくさんつまっています。
外観のカラフルな彩色面は、バルコニーと一体となって取り付けられた、「ブリーズ・ソレイユ」という壁付きの日除け屋根になります。これも室内に入る自然光の調整として考案されたもので、コルビュジエ建築の特徴のひとつです。

また内装設備の設計には、シャルロット・ペリアンやジャン・プルーヴェなど、家具デザインにおける様々な名作を生み出した2人も関わっていて、外観や住戸内部の隅に至るまでが、非常に見どころが多く勉強になるのですが、また室内は別の機会にでも!

これは屋上階にある体育館の中で、着色されたテープを貼っているのですが、ある1点から眺めると、ひとつの柄になって見えるようになっています。

いわゆるサイト・スペシフィック作品というものですね。建物自体は文化財なので傷がつかないように色テープを貼って作品にしています。

MAMO

近年は屋上階を、現代アートの企画展を行うアートスペース「MAMO」として運営しています。お邪魔した時にはスイス出身のアーティスト、フェリチェ・ヴァリーニの展示を開催していました。

マルセイユを代表する新時代のアート拠点

FRAC

続いては、日本人の建築家、隈研吾が設計した、現代アートの美術館、「FRAC」になります。

FRAC(現代アート地域基金機構)の拠点施設で、主に新しい世代のアーティストの作品を展示するギャラリー空間に加え、図書館やカフェ、招聘したアーティストが宿泊できる滞在用の部屋も館内に備わっています。

印象的な外壁を覆うパネルのようなものは、館内に綺麗な自然光を取り入れるために考案されたものらしいです。

今回は地下のギャラリースペースで女性アーティストの絵画や立体のほか映像作品なども展示されていましたが、館内の明るい雰囲気が心地よく、リラックスしながら作品を楽しめましたよ。

MUCEM

次はこちらも現代建築。ルディ・リチオッティが設計した、ヨーロッパ・地中海文明博物館「MUCEM」です。

建物は、17世紀の建築、サン・ジャノ要塞の近くにあります。「MUCEM」の屋上階から橋を渡ってサン・ジャノ要塞まで歩いて行けるのですが、 この眺望も見事でしたよ。

収蔵品も地中海の人々の暮らす歴史を探訪できるような内容になっていて、古いフォークアートや民具など、どれも面白かったです。内容がかなり濃く点数も多いので、じっくり時間をかけて鑑賞しないともったいないですね。

MUCEM

こちらは建物の入り口側に回ったところです。外壁と屋上の上は、特殊なコンクリート素材でつくられた、波面をグラフィカルに表現したようなもので覆われています。
とくに屋上階にいて日差しが落ちてくると、床にものすごい柄の影が出現して、面白い風景をみることができます。屋上階には素敵なカフェやレストランもあるので、休みながら館内を楽しむのがおすすめです。

マルセイユ出身のピエール・プジェが手がけた歴史的建築

ヴィエイュ・シャリテ

そして今度は、歴史的建造物。17世紀に建造された慈善施設のヴィエイュ・シャリテです。

芸術家でもある、マルセイユ生まれのピエール・プジェという人物が設計した建物ですが、彼はプロヴァンスのミケランジェロと形容されていたらしく、このヴィエイュ・シャリテで見られるような建築は、ピエール・プジェ様式と呼ばれるなど、フランス国内の建築にかなり色々な影響を与えたらしいです。

僕自身も知らなかった存在だったのですが、このような歴史的建造物と新時代の建築家が設計した文化施設を徒歩圏内で歩いて見て回れるマルセイユは、建築を勉強している方にはたまらない土地なのではないでしょうか。

現在は美術館・博物館として運営されていますが、中央の礼拝堂になっている建物の上部が写真のように卵のような形状のドーム型になっているのが特徴です。

マルセイユ・港

でもマルセイユに来て印象的だったのは、やっぱり港!

朝市も開かれる旧港、ベルジュ埠頭では、船が停泊する港の海面に鮮やかな青空が映り込み、 とても爽やかな気持ちになります。この近辺は商店やカフェなども多くあり、散策におすすめですよ。

ということで今回は以上です。機会があれば是非、みなさんにもマルセイユの街に行ってみて欲しいですね。

専門的に建築を勉強していない自分ですが、街を歩き、そしてそこに暮らす人々の楽しそうな 表情を見ていたら、建築や内装、デザインができることや、可能性について深く考えるきっかけをもらった気がしています。

では、また次回!