こんにちは! 今回は前回に続きまして、20世紀を代表する建築家、ル・コルビュジエが設計した建築をご紹介したいと思います。 紆余曲折を経て、コルビュジエの死後からなんと40年以上も経過した2006年に完成したという、サン・ピエール教会になります。
ル・コルビュジエ 最後の作品
緑の大地に建設されたサン・ピエール教会の姿は、まるで巨大な岩塊のようにも見えます。
フランス東部の町、フィルミニにあるこの教会は、1953年に当時のフィルミニ市長であった、ウジェーヌ=クロディーヌ・プティが構想した「フィルミニ・ヴェール(緑のフィルミニ)」と名付けられた新興都市計画の一部として設計されたものになります。
不況によって荒廃していた街の復興を目的としたこの計画では、文化会館、スタジアム、ユニテ・ダビタシオン、サン・ピエール教会の4つがコルビュジエの設計により建設されましたが、彼の生前に完成したのは文化会館(1965年完成)のみでした。
サン・ピエール教会の最初の設計図は1961年に作られましたが、地盤問題や資金難から図面の変更が重ねられる中、1965年にコルビュジエが亡くなってしまいます。
以降は当初より計画に関わっていた、建築家のジョゼ・ウブルリーが引き継ぎますが、1978年に計画は頓挫。
時を経てサン・テティエンヌ都市圏が施主となった2004年より工事が再会され、ようやく2006年に完成したのです。
じつは当初の設計からいくつかの変更や修正がみられるため、コルビュジエの純粋な建築ではないという見方もあったりはするのですが、そんなことは関係ないくらい、この教会の内部では素晴らしい体験をすることができるのです。
太陽の光が織りなす見事なアート
もちろん外観も魅力的ではありますが、サン・ピエール教会の見どころはなんと言っても内部の教会堂になります。
足音や話し声などの音がものすごく反響する特殊な音響効果を持っていることに加え、祭壇後方にある東側の壁に無数にあけられた円形の穴から太陽の光が進入すると、床や壁に光の束が現れ、刻一刻とその姿を変えていくのです。その光景は本当に神秘的でした!
ゆっくりと動いていく光の曲線を眺めていると、時間の経過を忘れてしまいます。
さらに天井と壁には彩色された採光用の開口部が設けられていて、そこに太陽光が差し込むとコンクリートの内装にステンドグラスのような効果で豊かな色彩が広がっていきます。
内部が青色に彩色された四角いこの開口部ですが、外から見るとこんな感じになっているのです。
教会堂の中に入る光の広がり方、進入角度などを考慮した見事な設計!
教会堂内部の傾斜した天井面にも、この採光用の開口部が2つあるのですが、にじむように色彩がコンクリートを染めていく光景に見とれてしまいました。
その天井面の採光部も外観からみるとこんな形に突き出しています。最初にサン・ピエール教会を見た時には、その意味はまったく理解できなかったのですが、すごいですね。こんな風に機能しているとは思いもしませんでした。
というまるで光のイリュージョンを生む装置のような建物になっているサン・ピエール教会ですが、低層階は現在、コルビュジエ関連の資料や彫刻作品のほか、現代アートの企画展を行うスペースとして活用されてもいます。訪問時には地下への階段スペースなどに、アーティストの作品などが展示されていました。
こちらはコルビュジエの彫刻作品です。ほかにもサン・ピエール教会の模型やスケッチなど、貴重な資料が展示されていましたよ。
いかがでしょうか?
今回は、フィルミニのサン・ピエール教会をご紹介させて頂きました。
なかなか行く機会のない場所かも知れませんが、ほかでは絶対に味わうことはできない建築体験をしたいかたには、是非とも訪れて頂きたい場所です。
建物に太陽の光がうまくあたる、午前中の時間が特におすすめですよ。
では、また!