収納のしかたは十人十色。
おうちの収納やお気に入りのものから見えてきた、「収納と暮らし」をめぐる短い物語をお届けします。
住人プロフィール
オタニじゅんさん
アートディレクター・イラストレーター・グラフィックアーティスト
集合住宅3LDK(70㎡)東京都大田区
築40年・リノベーション後入居1年
夫婦2 人暮らし
レトロなマンションをフルリノベーション
印象的な描画に、色鮮やかな着色。一見爽やかそうでいて、スパイスのように効いた毒気がクセになる…そんな個性的なイラストを生み出しながら、広告を中心に幅広くアートディレクションを手がけるアーティストのオタニじゅんさん。
最近、CDつきのビジュアルブック「La Palma」を発売。まとまった画集としては初めての刊行物となり、ファン層を広げています。
オタニさんが暮らしているのは、築約40年のヴィンテージマンション。設計事務所アラキ+ササキアーキテクツによるフルリノベーションを経て、昨年から入居しています。
「もともと、ヴィンテージマンションを探していました。この物件は、建物そのものに空間的なゆとりがあります。低層で、数戸ずつの棟に分かれていて、中庭があって回遊できるという、現代ではちょっと造れないような、古き良き昭和のマンションなんですよね。緑も多い静かな環境で、多摩川までも近い。佇まいも、ロケーションも気に入りました」(オタニさん、以下同)。
仕事モードに入る、朝のルーティーン
玄関のすぐ隣には、アトリエが造られていました。空間をゆるやかに仕切るガラス壁が、とても印象的です。ガラスのフレームは、一見アイアンのようですが、実際は木製。濃いグレーで塗ることで、深みのある質感に仕上がっています。
アトリエ内は、ライブラリー、自身の作品、コレクションしているグッズなどが整理され、まさにオタニワールド一色。
「僕の趣味は、ほとんどここに閉じ込めて、ほかの部屋には入れ込まないようにしているんです。毎日のルーティーンも決めて、オン・オフの切り替えを心がけていますね。毎朝7時に妻が仕事に出かけたら、多摩川へランニングに出ます。8時には帰宅して、朝食。9時からアトリエに籠る、という毎日です」。
夫婦の共用部分は、シンプルにしておきたい
「マンションの構造から、スケルトンにはできず、間取りはあまり変えられなかったこともあって、“光が通る家”というのをテーマに、全体を考えてもらいました。玄関とリビングを仕切る扉もガラスにして、ベランダから開けた景色がぱっと目に入るように。日当りが良くて暖かいので、植物もよく育つ、と妻は喜んでますね」。
奥様はシンプルなインテリアがお好みだとか。グリーンや、ファブリック選びは、奥様の担当です。
「壁もすっきり広いですから、絵も飾りたいなぁと思ったりするんですけど、まだ選べていません。夫婦で意見が一致した作品に出合えたら、というところですね。とにかく、共用部分は、シンプルにして、お互いが気持ちよく暮らせるようにと考えています」。
丁寧な暮らしをしみじみと楽しめる家
オタニさんのマンションがあるエリアは、近くに繁華街もなく、とても閑静です。食事はほとんど自宅で。たまに少し歩いて、気に入っているレストランへ行くそう。
「僕は、こういう静かなところがいいんですよね。仕事にも集中できますし。もちろん、東京ならではの刺激的な部分も好きですから、思い立ったらすぐに出かけられる立地も気に入っています」。
刺激的な仕事をしながらも、穏やかな暮らしを大切にしているオタニさん。東京という都会をしなやかに使いこなす、そのセンスが、彼のアートを生み出す源なのかもしれません。