「いつか…」の夢を叶えて自宅で経営する、週末限定の温泉つきプチホテル。営業は週末が中心、客室は2つのみ。家族との時間を大切にしながらマイペースで営むその宿は、居心地の良さが評判をよび、リピーターを増やしています。 自然体のオーナーが造った快適空間を取材しました。
住人プロフィール
森木幸子さん
温泉宿FoRESTree(フォレスツリー) オーナー
長野県安曇野市
注文住宅・客室含む 4LDK(約600㎡)
築・入居3年
家族4人暮らし
転勤続きの生活のなかで描いた夢「いつかは自宅でホテルを」
「フォレスツリー」は、豊かな安曇野の森の中に佇む、落ち着いた雰囲気のプチホテル。北アルプス山麓の「有明厚生温泉源泉」と「有明荘源泉」の混合泉を引湯した温泉宿です。オーナー森木さんの名前から取られたその名称は、森forest と木treeに、休息を意味するRESTをかけ合わせたものです。
ここは、子育て中の家族が暮らす住居でもあるため、客室も2つだけ、週末のみの営業(夕食・朝食つきの宿泊プラン)という形態をとっています。平日は、素泊まりならOK。日中はキッチンとダイニングスペースを知人のシェフにリースし、イタリアンレストランとして活用されています。
オーナーの森木さんは、大阪出身。製薬会社に勤務し、職場結婚をしました。1999年、転勤で2年ほど長野市内で生活。その後、退職。ご主人の転勤に伴い、高知県、栃木県と、引っ越しを繰り返しました。
「日本国内、いろんなところで暮らして、さまざまな体験ができたことは、とてもよかったと思っています。でも、いつかは、どこかに腰を落ち着けた暮らしがしたいと思っていました。昔、祖母と母が大阪で料理旅館を営んでいた思い出もあり、どこかで小さなホテルを兼ねた自分の家をつくりたいな、と考えるようになって…」(森木さん、以下同)。
主婦として家庭を支えながら、自宅でのプチホテル経営を夢見ていた森木さん。家族の趣味である旅行はいつでも、将来の夢を叶える家づくりのリサーチを兼ねていました。
「旅行では、なるべく大型のホテルなどには泊まらないで、一般の人が自宅を改装した宿泊施設を選ぶようにしていました。釣り好きな夫の影響でニュージーランドをよく訪れるようになり、そこでも住居を兼ねた宿泊施設を活用しました。美しい森の中に佇む古民家風の住居兼ホテルはどうかな…など、イメージを膨らませながら、少しずつ家づくりのアイテムを買いそろえていったんです」。
日本各地から買い集めてきた家具・雑貨・古材を使って、いよいよプチホテルを兼ねた理想の家づくり
「いつか開くホテルのために」。
森木さんは、日本の各地でさまざまなアイテムを買い集めはじめました。旅先で出合ったアンティーク家具や古道具。東京都内のショップで見つけたヴィンテージアイテム。さらには年代物の柱や建具など、森木さんの審美眼にかなう、ありとあらゆるものを買い込んで、転勤による引っ越しのたびに大量の荷物を運んだそうです。
やがて、森木さん夫妻が理想の家づくりの場所として選んだのは、信州・安曇野。一度長野市内で生活した経験から土地勘もあり、豊かな自然環境に惹かれてのことです。理想的な土地に巡り会い、1600坪の森林を購入。夫婦で調理師の免許も取得して、宿開きに備えました。
「古いものが好きで、集めたアイテムも和風なものが多かったため、はじめは新潟から古民家を移築しようと考えていたんです。いろいろ検討していくうちに、現在の和洋折衷型の注文住宅を建てることに落ち着きました。買い集めていた柱や建具も組み込んでもらいながら、洋風のカジュアルなテイストも足していって、ちょうどいいインテリアにまとまったかな…と。家族みんなで古材を洗ったり、窓の木枠を塗ったりと、あちこちDIYもしたんですよ」。
まわりの自然に溶け込む空間をつくりたい
広大な敷地に建てた家は、敷地面積600㎡以上。間取りは、大部分を夫婦で考えたそうです。
「とにかく、この森に、建物が安曇野の自然に溶け込むイメージで建てたかった。自然素材を使い、落ち着いたアースカラーで、なるべく窓を多く取って、周囲の環境を室内に取り入れることを心がけました」。
開放的な吹き抜けを備えたダイニングに、ステップを設けたリビング。2階にある2つの客室は、どちらもロフトつきで、グループステイが可能です。
「プライベート空間としては、子ども部屋と夫婦の寝室がありますが、私たちもふだんはリビングで普通に過ごしています。子どもたちも、常連のゲストとお話したり、一緒に遊んでいただいたり。ただし、非日常を楽しんでいただきたい場所でもありますから、生活感は漏れ出さないように注意を払っています」。
生活を丁寧に整えられる森の中の暮らし。自宅兼ホテルにしたことで得られた、たくさんの幸せ
安曇野の森は、野鳥の宝庫。森木さん家族、そして宿泊するゲストは、毎朝鳥たちの歌声で目を覚まします。自然のなかで肩肘を張らず、子育てを中心にしながら、のんびりと暮らしを整えることがとても幸せ、と森木さん。
さらに、「いつか自宅でホテルを」の夢を叶えた彼女は、現在の暮らしに満足しながら、思いがけない副産物も得られたと話します。
「夫婦どちらの故郷でもない場所に移住をして、たくさんの人に手伝ってもらいながら、手づくりの家と宿を完成させました。リピーターも増え、『親戚の家に帰ってきているよう』とおっしゃっていただくことも多いです。一番ありがたいのは、ゲストの方々が、わが家の子どもたちにさまざまなお話をしてくれること。世界はまだこんなに広くて、知らないこと、ワクワクすることがたくさんあると、皆さんが教えてくださるんです。子どもたちも刺激を受けて、将来のことをあれこれ考えるようになったみたいですね」。
自宅にゲストを迎え入れることでつねに新風が吹き込まれ、いつでもフレッシュな気持ちでいられる、と森木さん。長年の憧れとこだわりを詰め込んだ自宅兼ホテルは、ホストとゲストが心を通い合わせてリラックスできる、特別な空間でした。
安曇野市穂高有明にある宿 FoRESTree(フォレスツリー)
- 住所長野県安曇野市穂高有明8986-2
- 料金
休前日 一泊二食つき
大人(中学生以上) ¥13,900(税別)
小学生 ¥9,800(税別)
幼児(未就学児) ¥6,900(税別)※キッズメニューあり
素泊まり(平日・日曜・祝日)
大人(中学生以上)¥7,500(税別)
小学生 ¥5,200(税別)
幼児(3歳以上) ¥3,700(税別)
2才未満 無料 - 休館日なし
- お問い合わせ0263-87-6406
- URLhttp://forestree-azumino.com/