キッチンにあふれる食器、増え続ける服や本…。暮らしにおけるものとの付き合い方に悩んでいる方は多いはず。部屋をきれいに、上手に片付けられるようになるにはコツがあります。覚えればこの先ずっと活用できる重要なポイントを、生活研究家・阿部絢子さんに教わりました。春先の新生活に向けて、快適な住まいに変えてみませんか?

阿部 絢子

阿部 絢子

生活研究家、消費生活アドバイザー。整理収納から食、掃除など、生活全般に渡る知識を生かした著作多数。

http://ayakoabe262.jp/

ものをフル活用するサイクルを身につける

さて、『成否のカギはプランニング』、『住まいの動線を知る』、『ものの居場所を決める』作業を通して、よく使う物・必要なものとそうでないものがわかってきたのではないでしょうか。とっておいたはよいものの、実は使っていないものの多さに驚かれたかもしれません。

「ものは使ってこそ、もの。あるものが完成するまでには資源やエネルギーを使うわけですから、フル活用すべきだと思うのです。使わないものって、すでに役割を果たしていませんよね」(阿部さん)

阿部さんによれば、使わなくても必要なものと言い切れるのは、思い出の品と飾って楽しむもの、趣味のアイテムぐらい。それ以外の実用品で、一定期間使っていないものは、そもそもそれが暮らしに必要なのかどうかから見直すべきと語ります。 「農耕民族だった日本人は、貯蔵し、所有し、たとえ使わなくても『もったいない』と抱え込む。しかし、もはやものが多い=幸せな時代ではありません。快適さとは、必要なものを手元に置き、長く使い続けていけることにあるのです」

かつては阿部さんも、たくさんの本をなかなか片付けられなかったそう。それは「吟味し、厳選する」ことができなかったからだと分析します。なんとなくものが増えるにまかせていては、選ぶのに迷ったり、思い入れがなく飽きたり、把握しきれなくなったりとさまざまなデメリットが生まれます。逆に厳選した物だけを適切な場所に配置することで、最大限に活用することが可能に。使い勝手がよくなるのはもちろん、空間にも気持ちにも時間にもゆとりが生まれて理想の暮らしに近づけることができるのです。

「プランニング→動線を知る→物の指定席を決める」という一連のサイクルを繰り返すうちに、部屋は少しずつ、しかし着実に片付いていくはずです。同時に、むやみやたらにものを増やし、適当に置く負のサイクルから抜け出し、厳選したものに囲まれる気持ちよさを堪能できるはず。その快適で整った暮らしを維持していくことが大切です。

(おわり)

新生活をつくろう。リバウンドなしの快適収納