建物や空間を作るプロである建築家は、みなそれぞれ独自の美学を持っています。そんな彼らの収 納に対する思想とセオリーを紹介するこのコーナー。第一回目は建築デザイン事務所「51%」三浦哲生さんの自宅にお邪魔しました。
三浦哲生さん
建築デザイン事務所「51%」ディレクター
東京と富山をベースに活動している、住宅や店舗などの設計デザインを手がける「51%(ゴワリイチブ)」のディレクター三浦さん。結婚を機に自身のマンションを借りる際、リフォーム時にリクエストし作り付けたのがシンク前の、本人いわく「パンが作れるほどの」大きな調理台でした。「食べることが好きで、料理をすることも苦ではないので、とにかく作業がしやすいスペースを確保したかったんです」。
サイズは幅1400mm×奥行き780mm×高さ650mm。ここに、趣味で集めているという作家ものの陶器をはじめ、ガラス容器や調理道具、食材などキッチンまわりのこまごましたものが、中のオープン棚のみならず、台の上にも咲きこぼれるように居並んでいます。それら“しまっておくもの”と“出しておく”ものとの区分け、またこんなにものがあるのに、雑然として見えないところに、彼なりの美意識が潜んでいるような気がして。
ひんぱんに使う道具こそ“出しておきたくなる”ものを
「器を知ったことで、さらに楽しみが増した」という食べること、飲むこと。特にコーヒーやお茶の道具などひんぱんに使うものは、そのまま台の上に。
いろんな形のものがバラバラと置かれているけれど、トーンは透明のガラスや黒など無彩色で統一。「確かに明るい色がないですね(笑)。ベージュ、グレー、白でもアイボリーがかっているものとか。あまり色の強いものが好きじゃないのかもしれない」また、いいアクセントとなっているベースに生けているものも、色とりどりの花ではなくドライフラワー。徹底しています。
同じ仲間のものは、トレイで“仕分けておく”
グラスや湯呑み、ぐい呑みなど同じものはトレーに伏せて収納。トレー自体の素材や形においても、載せるものとコーディネートしているところはさすが!と言うと「妻が気づいたらこうしてました」と三浦さん。奥さんは彫金の作家さんで「彼女は女性なのに趣味が僕とことごとく似ているので、すごくラクです」
“かけておく”ものにも美しさとひとくふうを
テクニックとしては定番の“かけておく”収納も、三浦さんにかかると、あたかもショップディスプレイのように美しく。右はキッチンのタオル掛けに「IKEA」で買った水切りと、S字フックを駆使して。玄関の白いフックには傘に靴べら、小ぼうきの3点セットを。いずれもプラスチック製は用いず、素材や色で馴染ませているのがキモ。
好きなものを“飾っておける”ステージをつくる
「オブジェや小物などを飾るための棚をあらかじめ作っておくと、買うのが楽しくなる」という三浦さん。左の作業台上にある壁付け棚は、当初3段の予定だったが「あるといろいろ置きたくなるから」とあえて1段のみにし、道具などは置かず、ドライにした胡椒の実やラジオメーターなど、お気に入りのものを。右は奥さんが好きで集めているという鏃(やじり)のコーナーが。