空間、建物作りで、それぞれの個性を発揮する建築家。彼らは収納に対しても、独自の考え方を持っています。今回は、「子どもの未来を育む家」作りを提案するコソダテリノベの小野雅司さんに、収納の新発想を教えていただきました。
小野雅司さん
「コソダテリノベ」
コソダテリノベは、その名の通り、子育てのためのリノベーションを提案しています。「エジソンハウス」と名付けられたそのユニークな住宅のモデルルームにお邪魔しました。玄関からは、一目で広々としたLDKの空間を見渡すことができます。ほとんど仕切りのない、カフェのような雰囲気の室内。明るく、ポップなインテリアに、気分もワクワク・・・。
「これまで一般的な間取りでは子供部屋だけに集約されていた“学び”のスペースを、家の隅々に展開したのが、このエジソンハウスなんです。1LDKで、お子さんが一人の家族3人暮らしを想定しています」と小野さん。えっ、1LDKで3人暮らし? 「一見、足りなさそうに見えるスペースも、生活スタイルと収納の工夫次第だと思います。発想の転換で、十分広々と暮らせますよ」(小野さん)。いったい、どんな工夫が仕掛けられているのでしょうか。
LDKのあちこちに、学びと遊びのスペースを
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ウォークインクローゼットは、お籠もり空間としての活用も。
広々としたワンフロアには、仕切られた子供部屋はありません。「この家で、メインの勉強スペースは、キッチンのカウンターなんです」と小野さん。人の気配や、適度な生活音があった方が、子どもの勉強ははかどるそうです。さらに、カウンターのはす向かい、リビングにもワーキングスペースが。「家の中のいろんな場所で、気分に合わせて勉強できるようになっています。最近の、共用オフィスと同じ考え方ですね。自由な場所で作業ができる。だから、無駄なものは極力持たない。必要なものだけを持って動くことで、子どもたちは整理整頓、そして情報の整理の仕方も覚えていきます。どうしても籠もりたいときには、ウォークインクローゼットを昔の押し入れ替わりに使うといいですね(笑)。こうした生活スタイルでは、家族全員がスペースの共用、持ち物の絞り込みを余儀なくされるはずです。快適な共同生活を、学びながら暮らすということですね」(小野さん)。
家族で共有するものを置く場所
スペースが限られているからこそ、共有するものを置く場所にはこだわっています。リビングには、家族全員の本をしまう本棚を。子どもが両親の本を手に取るようになるといいます。そして、広くとった玄関は、右手の壁に写真コーナー。左手、本棚の上は棚を付けて、家族の作品コーナーが。「お子さんの作品や、オブジェなどを季節ごとに飾ってほしい」と小野さんは言います。
見せる、見せないをメリハリよく
吊り棚は、見晴らしをよくするために付いていません。キッチンの幅は2700mmとかなり大きめ。キッチンの下には、家族3人と来客用を考えても、調理器具、食器、リネン類、掃除道具まで、多くのものをしまうことができます。パントリーや棚には、見せたい食器や雑貨を飾って、メリハリのある収納を実現。
子育ての段階を見据えた空間作り
「LDKは開かれた家族みんなの空間。お子さんが大きくなれば、遊びのスペースにカーテンや間仕切りを付けて、個室風にしてあげてもいいと思います。そして、その先には、お子さんの巣立ち、夫婦だけの生活が待っています。そのときには、また広々と2人で生活をしたらいいと思うんです。コソダテリノベが考える収納とは、フレキシブルな空間で、子育ての段階を見据え、その都度、必要なものを見定めるというもの。子ども部屋がいらないように、たくさんの閉じられたクローゼットは必要ないのです。これこそが、風通しのいい家づくり、家族関係をもたらしてくれると信じています」(小野さん)。