独自の発想とスキルで、さまざまな建築物を手がける建築家。自宅やオフィスにも、そのこだわりが存分に生かされています。「そこにしかない建築をつくる」をコンセプトに活躍する加藤克彦さんのご自宅にも、新しい収納のアイディアがたくさん詰まっていました。
加藤克彦さん
「TENJIN STUDIO」代表
家中が明るいリノベーション住宅
個人住宅から保育園、店舗、オフィスビルまで、幅広く携わる加藤克彦さん。地形と景観に寄り添い、光や風を取り入れた彼の建築物は、どれも深呼吸したくなる心地よさと、大人の遊び心に満ちています。
4人家族の加藤さんが暮らすのは、4年前にフルリノベーションをした築30年以上の集合住宅。空間にしっくりとなじんだ収納のテクニックは圧巻でした。
ウッディで暖かみがあり、広々と明るい空間。こちらのリノベーション住宅の大きな特徴は、新たに設けた間仕切りの壁が天井まで設けられていないというところ。どこでも外光が届き、風が吹き抜けます。照明器具やエアコンに頼ることなく、快適に過ごせる工夫です。
「既存の躯体を生かしながら、自然の光と風を最大限に取り込み、健康で豊かな住宅を目指して改修設計を行いました。収納もこの発想で、無理なく空間に取り入れています」(加藤さん、以下同)。
収納力抜群!玄関からすぐに入れる納戸
玄関のすぐ左手には、2つの扉が。どちらも納戸で、一つはキッチンに繋がっています。この納戸が、加藤さん宅の収納のメイン。靴、洋服などのほか、アウトドア用品などがたっぷり収納できる空間です。
「子どもが2人いるので、成長するにつれ、荷物は増えていきます。その都度整理しながら、必要なものを納められるように、広さにはこだわりました」(加藤さん、以下同)。
この納戸にも、外光が淡く届きます。密閉されて暗くなりがちな収納空間ですが、ここはとても開放的。空気も自然と循環するため、清潔感があります。
躯体に合わせて作ったオリジナル収納
壁に納めた本棚や、ベッド下、洗面所など、あらかじめ計算をして作った収納スペースのおかげで、加藤さんのお宅には、収納のための家具がほとんど置いてありません。 「間仕切りも兼ねて収納を作りました。家具を置くと、その分、使えるスペースが減りますから。無駄なものを置かないことで、掃除もしやすくなると思います」。
家族めいめいのスペースと、収納はきっちり確保しつつ、一体感と広がりを感じさせる加藤さんのお宅。そこには、都会のマンションとは思えないのびやかな雰囲気がありました。
畑付き!? 新発想の集合住宅
加藤さんが最近手がけた集合住宅「納屋森nayamori」を見せていただきました。二階建てにロフトの付いた、メゾネットタイプの賃貸住宅です。納屋を思わせる外観に、土間、縁側……。和のテイストを生かした、ユニークな居住空間が注目を集めています。
「庭では、畑いじりを楽しむこともできますよ」と加藤さん。濡れ縁に座って、のんびりと過ごす休日が想像できますね。
「キッチンを兼ねた土間には、靴箱などを設けませんでした。リビングはとにかく、すっきりと。寝室のクローゼットと、ロフトがメインの収納スペースになります。インテリアには、住む人それぞれの個性が表れるでしょうね。ぜひ、自由に使って欲しいと思います」。
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二階の寝室には、広めのクローゼットが設けられています。
懐かしい和の雰囲気がありながら、発想はまったく新しい集合住宅。どんな風に収納をしてみようか……想像力をかきたててくれる空間でした。