図面を引いたり、模型を作ったり。多彩なクラフトを手がける建築家は、やはり手先が器用です。今回は、若い女性建築家がリノベーションしたばかりの自邸で、小技の効いた収納術を取材しました。
小野裕美さん
「ono design studio」代表
“人との繋がり”を実現させるワンルーム
小野裕美さんのご自宅は、一級建築士事務所兼イベントスペースとして、この春、リノベーションを終えたばかり。1969年竣工の歴史あるマンションで2LDKだった物件は、スタイリッシュなワンルームになりました。
「間仕切りはなく、オフィス、大テーブルのあるフリースペース、キッチンとプライベートルームが共存している形です。フリースペースでは今後、料理やアート、ファッションなど、さまざまなワークショップを開催したいと考えています」(小野さん、以下同)。
ジャンルの異なる営みとコラボレーションし、“人との繋がり”を大切にしながら、建築の仕事に生かしたいという小野さん。多くの人にこの場所を活用してもらいたいと、ニュートラルな空間作りを心がけています。
使い勝手を追求したオリジナル家具
部屋のリノベーションと併行して、小野さんは友人の家具職人と共に、家具を手作りしました。フリースペースに置かれた大テーブルはもちろん、オフィスのブックシェルフ、ワーキングテーブル、コピー機を置く棚など、すべて自身の使い勝手を考えて設計したものです。
「職業柄、紙を扱うことが多いので、コピー機を置く棚は、細部までサイズにこだわりましたね。大きめの用紙まですっきり置けるので、ごちゃつくことなく、気に入っています」。
DIYで仕上げた使いやすいキッチン
見た目もすっきり、白とステンレスで色目を統一。小野さんのキッチンは、コンパクトながら使いやすく、清潔感に溢れています。
「配管など基本的な構造はそのまま利用しました。ステンレスの天板、シンクとガス台は交換。収納棚の扉や取手など、細部はすべて手作りしました」。
あるべき物を、あるべき場所に
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小野さんのアイディア収納術を、もう一つ。傘立ては置かず、壁にフックを取り付けました。掃除もしやすく、見た目もすっきり。
小野さんの収納についての考え方は、とてもシンプルです。
そのものが、どこにあるべきなのかを最初に考えて、適した収納を与えること。ふだん使うものは、手に届く場所に出しておく。ストックするものは、しまっておく。
参考にするのは「ホテル」と「プロが働く場所」だそうです。
「ホテルは、必要最低限のものが整理されています。ラウンジも、ベッドルームもバスルーム周辺にも、余計なものがなくて美しい、インテリアの目指す最終形。そして、工房や厨房など、プロが働く場所には、つねに使うものが、使いやすい場所にきっちり置かれています。ここには、家事動線のヒントがたくさんあります」。
仕事の参考に、ホテルや飲食店の厨房などを見て回ることもある、と小野さん。
「街に出れば、収納のヒントがたくさん転がっています。たとえば、私が引き出しの取手のアイディアを見つけたバスのつり革のように(笑)。既成概念にとらわれず、あらゆるところにアンテナを立てて、これからもユニークな収納術を考えたいですね」。