日本の木工文化を愛する、メキシコ人建築家。そんな珍しい人に会うために、埼玉県久喜市を訪れました。日本家屋をリノベーションした彼の快適な住まいで、収納についてのアイディアを教えてもらいました。
マルティネス フランシスコさん
「Patio.workshop」代表
憧れていた木の家をフルリノベーション
マルティネス フランシスコ、愛称パコさんは、メキシコ グアダラハラ出身の建築家。現在は埼玉県久喜市に、奥様と小学生の息子さんと3人で暮らしています。奥様とはロンドンで知り合ったといい、結婚後はメキシコで暮らしたこともあったそうですが、おだやかな日本の田舎で、ゆったり子育てがしたいと、今の地に落ち着きました。家具と木工、リノベーションの仕事を中心に、家具作りのワークショップなども展開しています。
「メキシコには、木の家はありません。レンガとコンクリートの家がほとんどです。私は、日本の木の家と、木工の技術を知って、夢中になりました。宮大工による木工技術の専門書は、私の宝物です」(パコさん、以下同)。
そんなパコさんの住まいは、奥様のご実家にほど近い場所で購入した古い日本家屋をフルリノベーション。和風建築の良さをきちんと踏襲しながら、インテリアでメキシコの雰囲気をミックスした、素敵な空間を作り出したのです。
古くても使えるものは、収納用具に再利用
家具職人でもあるパコさんは、物を再利用する名人です。ダイニングの主役であるキッチン台兼テーブルも、家をリノベーションしたときに床下から出て来た板で作ったもの。そのほか、キッチン周辺には、さまざまなリユース収納がありました。
本当に必要なもの以外は置かない、がルール
パコさんの収納のルールは、「しまいこまないこと」。最低限のストック以外、必要なものは、なるべく手に届くところに配置するようにしています。
「しまう=いらない、だと思うんですよね。奥の方へしまえばしまうほど、その存在は忘れられる。無いことと同じです。だから、たとえば、子どものおもちゃなんかも、息子がそのおもちゃで遊ばなくなったなと思ったら、箱にしまいます。彼が『あれでまだ遊びたい』と数ヶ月言わなかったら、全部捨てます。記憶の中から消えたら、なくても同じですから。でも、だからこそ、必要なものとそうでないものをはじめから選ぶ必要があります。そして、大切なものはボロボロになるまで使いたいと思います。これは、おもちゃだけでなく、家のなかにあるものすべてにおいて言えることです」。
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すっきりとした洗面所。「必要なタオルの枚数は知れています。必要な分だけ、置けばいいのです。スペースがあれば、脱衣したものを置くこともできるし、掃除も楽です」とパコさん。
家族との絆を感じるディスプレイ
大切なものは、目に見えるところに置いておきたい、とパコさん。家族の写真や、すぐに手にとってめくりたい本などは、きれいにディスプレイしてあります。
「どうしても捨てられないものは、誰にでもありますよね。こういうものこそ、表に飾る。どんどん活用して、大切にする。そして、受け継いでいく。私はあまりモノに執着のないタイプですが、どうしても捨てられなかったメキシコの家具は、日本に持ってきました。大切に使っています」。
小さな工夫が、大きなゆとりを生む
「私は、日本のホームセンターが大好きです。もちろん、木工に使うものを探しに行くことが多いんですが、ほかにも、関係ないパーツを見ながら、別の用途を考えるのが好きなんです」。日本のホームセンターは、ジャンル別に細かなパーツがきちんと整理されているのが素晴らしい、と興奮気味に話してくれたパコさん。根っからの物作り好きなんですね。
「日本人の生み出す小さな工夫は、素晴らしいと思います。たとえば、ホームセンターでも、100円均一の店でも、何かを見つけて工夫をすれば、その人にとって素晴らしく価値のある収納を作り出すことができますよね。もしも、家に使わない廃材などが残っていたら、ぜひ、アイディアを絞って再利用してみてください。作る過程も楽しめますし、小さな棚ひとつでも、それは家族に喜ばれる大きなゆとりを生み出すはずです!」。
現在は、日本の鉋の技術を習得するために日々勉強中だというパコさん。今後はさらに木工技術を磨いて、世界中の人に日本の家の素晴らしさをアピールしたいと話してくれました。