山本基揮さんが暮らすのは、大田区の閑静な住宅街に建つ築36年のマンション。
広めに取ったリビングダイニング、小上がり、寝室からなる家族のスペースに加え、一室の仕事場から成るSOHOへとリノベーションをした住まいです。
山本基揮さん
「MoY architects,Ltd.」代表
ウィーンで学んだ、住まいのゆとり
現在は国立大学に勤務し、大学施設などの設計を担当している山本さん。ホームオフィスでは、内装やリノベーションを中心に、照明のデザインも手がけています。
「都内での生活をする前は、3年間、夫婦でウィーンに住んでいました。帰国してからはしばらく賃貸マンションにいて、子どもの誕生を期に、このマンションを購入しました。もともと古い家や家具が好きなので、中古のマンションを探したのですが、決め手になったのは天井の高さです。ウィーンで暮らしていた家はとても天井が高くて、居心地が良かった。日本のマンションはどうしても天井が低いので、ずいぶん探しました」(山本さん、以下同)。
リビングを広く使うためのテクニック
明るいリビングダイニングには、ウィーンから運んだ椅子やテーブル、山本さんが学生時代から使っているというデスクなど、思い入れのある家具が並びます。
「持っている家具をどう置くかというところから、リノベーションのプランをスタートしました。収納については、余計な家具を買わなくてもいいように、各スペースに少しずつつくったという感じです」
新しくてピカピカしたインテリアは好みではない、と山本さん。ほどよくエイジングしたお気に入りの家具がしっくりとなじむように、元の部分を残しながらのリノベーションをしました。
そんなリビングには、大きな収納家具はありません。冊数の多い書棚も、不思議と圧迫感がないのです。
「部屋に置く家具は、目線を腰あたりの高さまでに抑えると、視覚的に広く見えるんですよ。テレビも低い位置に置いて、ふだんは布をかけてあります」。
メイン収納のある来客用スペース
リビングの一角に設えた小上がり。
二畳ほどの小さなスペースですが、来客時は大活躍。布団を敷いたら、カーテンで仕切ってプライベート空間をつくることができます。
この小上がりにつくった収納棚が、山本家のメイン収納。来客用の布団はもちろん、家族の洋服などが整然と収められています。
隙間にちょこちょこつくったオリジナル収納
小上がりの脇に設えた収納棚、廊下のニッチ、ソファ下につくった収納ボックス。すべて、山本さん作のオリジナル収納です。山本さんの住まいには、こうした小さな工夫のある収納がところどころにちりばめられていました。
「もともと、整理整頓が、得意ではないので……。ちょこちょこと収納できるポイントをつくっておけば、片付くかな、と思って」。
そう謙遜する山本さんですが、いえいえ、いずれも見事な収納術!
自作の収納に加え、棚の中の整理には、無印良品の収納用品を活用することが多いそうです。
モノを増やしたくないところは、あえてオープンに
玄関、浴室、キッチンなどは、どうしてもモノが溢れがちなスペース。
こうした場所の収納には、山本さんは、あえて扉を付けませんでした。
「ストック品や、食器、靴……。扉を付けてしまえば、何でも押し込めることができて、かえって乱雑になると思ったんです。無駄なモノを増やしたくないですし、整理をしたいので、なるべく目に見える収納を心がけています」。
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玄関前にはアウターやバッグが置けるオープンクロゼットをつくりました。空気も回り、清潔感があります。
メリハリのある収納テクニックと、美意識の高いインテリア。山本さんの住まいに対するこだわりは、心地よい住環境を生み出していました。