家をつくる前に、収納計画をしっかり立てていたクライアント。そんな収納の達人のために設計された家は、まさにパーフェクトな収納住宅でした。
井手勤さん
「イオンアーキテクツ設計事務所」代表
収納アイディアの集大成がココに!
優れた機能性と、研ぎすまされたデザイン。モダンで美しい住宅づくりに定評のある、井手勤さん。今回、井手さんにご案内していただいたのは、都内のN邸。昨年竣工された新築の一軒家です。
(*施工:㈱寺本建設 家具:松本家具製作所)
「20年以上、さまざまな住宅を手がけてきましたが、こちらほど完璧に収納をしている家は、見たことがありません。これまで自分が積み重ねてきた収納のアイディアをすべて投入した、おもしろい仕事になりました」(井手さん、以下同)。
家づくりの前に、収納イメージを完成させる
「収納が好きという人は多いと思うんですが、Nさんは好きのレベルを超えていました。本当に、職業になるんじゃないか、と思うくらい(笑)。設計前から、収納用品を買い揃えていましたし、どこに何をしまうかという計画が細部にまできっちりとなされていたんです」。
Nさんは収納のイメージをスケッチにして、井手さんと打ち合わせを重ねました。収納に対する強い思いを受け取った井手さんは、とてもやりがいを感じたそうです。
「ふつうは、収納のイメージってあまり湧かないまま、大まかな入れ物を作っておいて、後からなんとなく詰め込んで行くという方が多いんですね。でも、Nさんほどの収納の綿密な計画ができていれば、無駄なスペースをつくることなく、生活動線も見えやすくなる。これほどのテクニックを持つのは難しいかもしれませんが、家づくりの前に、収納計画を立ててみるというのは、非常に有益だと思います」。
収納の小技をあちこちに組み込んだ家
井手さんが設計したN邸には、家のなかのあちこちに、さまざまな収納の小技が効いています。まずは、玄関から、見てみましょう。
建築家と暮らす人が一緒につくる収納
N邸が完成してから、収納のすべてを見せていただいたのは、今回が初めて。改めてNさんの収納のテクニックに感服したという井手さん。
「ここまできちんと収納を使いこなして、生活を楽しんでいる様子を見せていただくと、建築家冥利につきます」。
井手さんが住宅の収納として提案するのは、見せるもの、見せないものを上手に分けるテクニック。パントリーやWICなど、扉のある収納スペースをうまく使いこなせば、整頓がしやすく、メリハリのある家づくりができるとのこと。
これから家を建てるという人は、ぜひ参考にして、事前の収納計画を建築家と相談してみてはいかがでしょうか。