築85年の古民家をリノベーションした、ユニークな建築設計事務所兼住居。シンプルモダンな和空間に施された収納スペースとは?
相原まどかさん
「YUUA建築設計事務所」代表
海外からも注目される古民家リノベーション
街道沿い、現代的なビルに挟まれて佇む小さな古民家。一見、何かの商店のように見えるその建物が、相原まどかさんの営む建築設計事務所です。
築約85年の古民家。はじめは、和菓子舗だったといいます。その後、個人の住居になっていた物件を、リノベーションしました。
「私がリノベーションをする前は、住居としてかなり改造されていました。元の良さを取り戻そうと、建物のシンプルな構造を生かしてリノベーションをしたんです」(相原さん、以下同)。
相原さんが手がけた「1.8M幅の家」という狭小住宅が海外メディアで話題となったことから、外国人スタッフが相原さんのオフィスに集まって来ました。彼らがこの個性的な古民家オフィスで働く姿は、とても絵になります。
オリジナルの本棚を付けた広い土間
入口は、昔ながらの連なったガラス戸。ガラス戸を開けると、広い土間。中央にテーブルが置かれ、ミーティングスペースになっています。
オフィスにありがちな殺風景さはなく、さながら、京都のカフェのよう。陰影を生かした美しい和の雰囲気が素敵です。
「土間は、表からも見えるオープンなスペース。広く自由に使いたいので、あまり家具なども置かず、本棚だけをつくりました」。
仕事がはかどるアイランドキッチン?
オフィスとして機能しているこの建物は、相原さんが暮らす住居でもあります。
土間から、昭和を感じる高い敷居を上ると、そこはキッチン。長いアイランド型のキッチンカウンターがあり、その横にはワーキングスペースが広がっています。スタッフたちは、このユニークな空間で、生き生きと仕事をしていました。
シンプルを極めたプライベートルーム
階段をのぼると、そこは相原さんのプライベートルーム。オフィスにも増して、すっきりとモノのない空間に驚きました。こうしたシンプルさがインテリアとして際立つのも、古民家ならではの良さです。
収納の存在感を薄くするテクニック
「モノ選びは、慎重なほうだと思います。整理するのも、収納も好きですね。ある程度ためこんで、一気に片付けてしまうタイプです(笑)」。
そう話す相原さん。それでも、仕事がら、どうしても書類や模型が多くなるのが悩みだとか。
「捨ててはいけない資料が多く、できるだけ目立たずに、かつ取り出しやすく収納するにはどうしたらいいか、考えています。二階の書類キャビネットは、はじめは見えないように透けない布で覆っていたんですが、逆に透ける布にしたほうが存在感が薄くなることに気がつきました」。
職場も、住居も、収納はシンプルに、さらっと空間になじむものがいい、と相原さん。
「空間の一部になるような収納のつくり方が理想です。外国人スタッフにも刺激を受けて、モノの収め方はシンプルに、わかりやすく、を意識していますね」。
異文化の視点を持つスタッフに囲まれながら、日本の建築の良さを再確認する相原さんの事務所兼住宅。そこでは、懐かしく新しい、ユニークな収納スタイルを発見することができました。