「建売」と聞くと、パターンの決まった家のかたちを想像するものですが、最新の分譲住宅はひと味違います。若い家族のスタイルに合わせた暮らしと収納の新提案について、取材しました。
大木竜二さん
「(株)コアハウズ」代表
注文住宅に見える分譲住宅
コアハウズは、湘南・逗子で約50年続く工務店。一級建築士の大木竜二さんは、二代目の代表となって10年目。これまで、主に神奈川県内で、自由設計の注文住宅とリフォームを手がけてきました。今回、会社として逗子市内に初めてつくったのが、二棟の分譲住宅です。眺めのいい高台に竣工したばかりの家へ、お邪魔しました。
「分譲住宅、いわゆる建売住宅です。建売って聞くと、どんなイメージがありますか? 値段も手頃、でもすべてが典型的で面白みがない。収納も、帯に短したすきに長しで、入れたいものが収まらない……という感じじゃないですか?」(大木さん、以下同)。
うーん、確かに。注文住宅に比べて、価格は安いけれど、自由度は低く、インテリアも無難なイメージ、ではありました。
「若い家族には予算があまりありませんよね。こんな暮らしがしたいというイメージはあっても、注文住宅を建てることが難しい。そんな人たちのために初めてつくったのが今回の二棟です」。
それぞれ約25坪の土地に隣接して建てられた二棟。「ナチュラル」と「シック」、異なる雰囲気でまとめられたインテリアは、暮らしのイメージを膨らませてくれます。
風通しの良さにこだわったクローゼット
大木さんがこれまで注文住宅をつくる上で、クライアントからのオーダーが多かったのは、やはり収納の使いやすさだと言います。
「余計な家具は買い足さなくてもいいように、各部屋に、ある程度の大きさのクローゼットは用意するように。防音も兼ねた位置で、部屋の大きさを損なわない場所につくることを心がけています。一般的に、分譲住宅のクローゼットは、折れ戸のシンプルな扉が多いんですが、ルーバーの扉にして、風通しの良さにこだわりました。防カビ対策は、これだけで全然違うんですよ」。
スタイルのある収納スペースをあらかじめ用意
大木さんの良きアドバイザーなのが、会社で一緒に働いている奥様。女性目線で、どこに、どういうものがあったら嬉しいか、事細かにチェック、提案までしてくれるそうです。
「家事をこなす女性は動線が命だと、妻から教えてもらいました(笑)。キッチンにはおしゃれな棚が必要、でも目線を遮ったり、狭く感じられるようなものは不要。今の女性はシンプルで、モノを整理したいという気持ちが強いので、あれこれ収納を付けすぎず、自分の好きなようにアレンジできる余裕も持たせること、と。男だけではわからない発想なので、ありがたいですね」。
モノを収めた後の暮らしを楽しんでほしい
モダンな壁紙や手塗りの腰壁、アイアンの手すりなど、これまでの分譲住宅では見られなかったインテリア上の工夫が嬉しい、大木さんが手がけた新築物件。用意した収納も、多すぎず少なすぎず、これからの家族の暮らしを楽しめるように心がけたそう。
最新スタイルの分譲住宅には、大木さんの「若い家族を応援したい」という優しい気持ちがしっかりと込められていました。