新築の個人住宅からマンションのリフォーム、スポーツクラブやファッションビルなど、幅広い建築を手がける高橋直子さん。今回お邪魔したのは、高橋さんが大学時代、共に建築を学んだという友人のSさんのお宅です。
高橋直子さん
「高橋直子建築設計事務所」代表
築50年の和風古民家を再生させる
世田谷区の住宅街にある、築50年の一軒家。「多少リフォームはされていましたが、すきま風が寒く、湿気もたまってカビがすごかったんです」とSさん。
全部建て直したかったそうですが、立地上、再建築不可物件だったため、信頼する高橋さんに依頼し、リノベーションをすることになりました。
既存のかたちを活かして収納スペースを作る
「各部屋のクローゼットよりも、洗面室近くにファミリークローゼットがあるほうが便利だと考えているので、新築住宅の場合には、よく提案しています。Sさんの住宅は、スペースや構造上の制限もあったため、既存のかたちを活かして収納スペースを組み込んでいくことにしました」(高橋さん、以下同)。
Sさんはインテリアコーディネーターでもあり、とても収納上手。その都度話し合いながら、リノベーションはスムーズに進めることができた、と高橋さん。
家事動線を意識して、モノの置き場所を決める
2人の小さなお子さんがいる主婦でもある高橋さん。子育てをしながらの家事動線については、かなり意識をして収納を作ると話します。
「適材適所にモノを置けることが、スムーズな暮らしのポイントだと思います。キッチンから洗面所、洗濯物をしまう場所など、女性の動きやすさはいつも考えるようにしていますね」。
クローゼットはファブリックで目隠しを
リノベーションをするにあたっては、収納スペースにはほとんど扉を付けませんでした。
「Sさんはファブリック使いがとてもお上手。カーテンで目隠しをする方法は、通気性も良く、見た目もすっきりして、空間への圧迫感がありません。建具よりもコストダウンができますし、とてもいいアイディアだと思います」。
建築×暮らす人のアイディアで楽しむ収納
Sさんは、育ち盛りのお子さんが2人いる家族4人暮らし。ともすればモノで溢れかえってしまいがちですが、どの部屋もすっきり片付いています。
「モノの量がコントロールされ、いずれもきちんと収納されているからですね」と高橋さん。
Sさんは、リノベーションをする間、多くのモノを取捨選択して減らしました。それを機に、モノを増やさないように心がけるようになったそうです。
「どこに何を収めようか、建築家の友人に相談しながらのリノベーションは、とても楽しかったです」とSさん。
建築と、暮らす人の工夫が出合い、また新たな収納の可能性が広がる……そんな好例を見られたリノベーションハウスでした。