55㎡という決して広くはない都心のマンション。ここに、2人の子どもを含む家族4人がゆったりと暮らしています。その収納の秘訣とは……?
佐藤圭さん
「.8/株式会社TENHACHI一級建築士事務所」
友人のデザイナーのためのリノベーション
建築家・佐藤圭さんは、vol.33でご登場いただいた、「.8 TENHACHI」佐々木倫子さんのパートナー。今回、リノベーションしたばかりの、都心にある築40年のマンションへ案内してくれました。
ここに暮らすのは、「リクシル」のデザイン・新技術統括部でチームリーダーを務める冨岡陽一郎さん。佐藤さんとは仕事を通じて知り合い、友人関係に。互いの仕事ぶりをリスペクトする2人が、1年近く綿密に話し合った上で取りかかったのが、55㎡に家族4人が暮らすためのリノベーションでした。
冨岡さん:「祖父母が住んでいたマンションなので、愛着があって。サイズ的に無理があるかな、でも、佐藤さんなら何とかしてくれるだろうと」(笑)。
佐藤さん:「家族がのびのびと過ごせるようにするためには、共用部分を広くとるため、あらゆるものごとを“整理”すること。これに尽きると思いました」。
横たわる場所の天井は、低くてもいい
佐藤さん:「ベッドルームは、横たわる場所ですから、天井は低くても快適さは損なわれない。思い切ってベッドルームの天地を縮め、その下に、収納スペースをつくりました」。
見た目も美しく、使いやすいオリジナル収納
どこを見渡しても、その機能性とキャパシティに驚かされる、冨岡家の収納スペース。玄関からキッチンにかけて設えた「型ガラス」の木製引き違い戸は、収納と浴室回り、洗濯機までをさりげなく隠しながら、独特のインテリアを演出しています。また、システムキッチンと造作収納、「IKEA」の棚などを絶妙に組み合わせたキッチンの収納も、お見事!
佐藤さん:「どんなに広い収納スペースがあっても、モノの居場所が決まっていないと、散らかるだけです。冨岡さんとは、どこに何を、どれくらい収めるか、きっちりと話し合って、オリジナルの収納をつくっていきました。すべてをぴったり収めたときには、我ながら痺れましたね」(笑)。
収納は、平面だけでなく、立体的に考える
佐藤さん:「隙間にバーを付ければ洋服がかけられるように、家の構造も立体的に考えれば余白ができて、収納のスペースが生まれます」。
収納スペースをより効率的に使うためには、「無印良品」など、規格のしっかりした収納用品を活用するのがおすすめ、と佐藤さん。
冨岡さん:「今回のリノベーションで、本当に必要なものを、自分なりに整理することができました。佐藤さんの、立体的な収納の考え方は、すごく参考になりましたね。おかげで、自分たちが動けるスペースがずいぶん広がって、子どもたちも、片付けを自然に楽しめるようになっています」。
最終的に、55㎡の物件が、延床面積66㎡にまで増えたというから、驚きです。「同じ条件の住宅と比べると、収納は2倍以上あるはず」と2人。
暮らす人と、つくる人とが収納について本気で話し合ったからこそ、実現したリノベーション。小さくても広く暮らせる理由は、考え抜かれた収納に数多くのヒントが隠されていました。