女性建築家とプランナーの夫妻が暮らす、リノベーションワンルーム。厳選したアイテムを、美しく、かつ機能的に整理・ディスプレイ。そのセンス抜群のオリジナル収納は、必見です。
羽場友紀さん
「moyadesign」
団地風の低層マンションをリノベーション
羽場さんが共同主宰する「moyadesign」は、建築・インテリアから、家具やランドスケープの設計、プロダクトのパッケージデザインまで広く手がけ、いま注目を集めています。
今回取材に伺ったのは、羽場さんが、プランナーのご主人とふたりで暮らす都内のマンション。もとは企業の社宅だったという築40年の低層マンションは、当初は四畳半の和室がある57㎡の3LDKでしたが、前の住人のリノベーションを経て、2LDKになっていました。羽場さんは、この物件をさらにワンルームの構成へとリノベーションしたのです。
「仕切りのないワンルームですが、既存のコンクリート壁を利用した垂れ壁で、パブリック(LDK)、プライベート(寝室)、セミプライベート(書斎)の3つのスペースに緩やかに分割しています。収納も、場所の用途に合わせて、計画的につくっていきました」(羽場さん、以下同じ)。
オリジナルの家具は、素材と高さを揃えて
この部屋にある家具は、ほとんどが羽場さんのデザインによるもの。リビングに入ってまず最初に目につくのが、木製の大きなL字型ソファです。座面のクッションの下は、すべて容量のある収納スペース。また、背もたれのトップも開閉式になっていて、ここにも収納スペースがつくられています。
「手や身体に触れる部分の素材にはこだわって、ワーキングデスク、ソファの背、ダイニングテーブルなど、家具はすべてオーク材で統一しました。また、高さも揃えてあるので、視覚的にも広く感じられると思います」。
収納づくりのコツは、「開けない場所をつくらない」
もともと夫婦そろって、「あまり不要なモノを持たないタイプ」だという羽場さん。収納設計は、「そこにあるべきモノは何だろう」と考えながら進めたと言います。
「納戸のようなものを用意すると、何年も開けない収納スペースというものが生まれてしまう。そういう事態は避けたいと思いました。必要最小限のモノが置けるくらいの収納を、少しずつ用意した、という感じです。ですから、この家の中で、一年以上開けていないスペースはひとつもありません」。
持ち物は、「大切なモノ」だけに絞り込む
羽場さんが住まいをあえてワンルームにしたのは、明るさと空気の循環を目的としただけではなく、暮らしかたへのこだわりでした。 「ワンルームは、嫌でも全体が目に入ってしまう。だからこそ、整理をしようという気持ちになる」。
持ち物は「大切なモノ」だけに絞り込む、と決めれば、モノ選びの目もさらに厳しくなり、磨かれていきます。
「収納をつくればつくっただけ、モノは増えるとわかっていました。ならば、最初から自分が持つ量を決めてしまおう、と。限られたスペースに、足りるだけの分を持つ…という考え方ですね」。
モノ選びから、持ち物の量を考え抜いて、それらをあるべき場所にきちんと収める収納計画。建築家ならではの発想と、センス溢れるオリジナル収納の数々に、うっとりしてしまう素敵なお宅でした。