秋田県にオープンしたばかりの道の駅「湯の駅 おおゆ」は、最新の隈研吾建築として注目を集めています。そこで採用された、地元ならではの素材を使ったユニークな収納方法とは……?
須磨哲生さん
「隈研吾建築都市設計事務所」
テーマは、縁側。温泉と杉の木を活かした道の駅
今年の4月、秋田県鹿角市にオープンしたばかりの道の駅「湯の駅 おおゆ」。地元の特産品を販売するショップ・カフェを中心に、見晴らしのいい広大な敷地には、イベント広場、屋外ステージ、足湯、またビオトープを擁する散策エリアもあります。
設計は隈研吾建築都市設計事務所。今回、「湯の駅 おおゆ」のプロジェクトリーダーを務めたのが、同事務所に所属する建築家の須磨哲生さんです。
「十和田湖に抜けて行く国道沿いに、2万5000平米もの広さで計画されたのが、この道の駅です。豊富な温泉と、秋田ならではの杉の木を活用して、隈が発想した“縁側”をテーマに、プロジェクトはスタートしました」(須磨さん、以下同)。
リサーチをして出合った、地元発の新素材
設計を進めるにあたって、隈さんと一緒に地元をくまなくリサーチして回ったという須磨さん。地域の新聞記者の方から情報を得て、秋田県立大学の木材高度加工研究所を訪れました。
「そこで出合ったのが、この円筒LVLという素材だったんです。杉の木を薄くして、まるでバームクーヘンのように巻き付けた形状なのですが、地元のおばあちゃんがミシンでせっせと縫ってるんですよ。見た目も秋田の曲げわっぱに通じるところがあって、隈も『これはおもしろい!使えるね』と」。
本来は、空洞にコンクリートを流し込み、柱として使うために開発されたそうですが、隈さんは「これを金太郎飴のように切って、断面を見せて使ってみたらどうか」と提案。須磨さんは、さっそく設計プランに組み込んでいきました。
シンプルな建物のなかに、円筒LVLの輪切りを積み上げると、建物には独特の雰囲気が生まれました。須磨さんは、この円筒をショップのディスプレイ棚として活用することを提案。田舎の優しい雰囲気を残す円筒は、地元の商品をディスプレイする棚としてぴったりマッチしました。
「同じ素材でベンチも造り、全体的なデザインをリンクさせています。完成した当初は、何も商品が入っていなくて、シンプルな美術館みたいだったんですが、地元の食材や特産品が並べられると、そこに賑わいが生まれて、すごく楽しい雰囲気になりました」。
工事の途中段階から、ショップ運営のチームとも合流し、ディスプレイするものを具体的に話し合いながら収納棚を造っていったという須磨さん。壁面収納の素材にもこだわったと話します。
「杉の華と呼ばれる自然素材の木っ端を圧縮し、接着してボードに貼付けたオリジナルの板です。見た目や手触りにもこだわりました」。
全体のコンセプトと、周辺の自然環境に溶け込んだコミュニケーションデザインとも相まって、「道の駅 おおゆ」は今、さまざまな地方自治体からも熱い視線を集め、視察する人々が後を絶ちません。
「訪れてくれるお客様、何より、地元の方々に、いい道の駅ができたと言われることが嬉しいですね」と須磨さん。
秋田を旅することがあれば、立ち寄ってみたい道の駅。須磨さんが細部にまでこだわった収納にも、ぜひ注目してみてくださいね。
湯の駅おおゆ(道の駅おおゆ)
- 住所〒018-5421 秋田県鹿角市十和田大湯字中谷地 19番
- 電話0186-22-4184
- 営業時間9:00〜18:00
- 定休日12月31日
- 交通JR十和田南駅から車で約13分
- URLhttps://yunoeki-oyu.jp/