分譲マンションと注文住宅。両方のメリットを併せ持つ“コーポラティブハウス”が今、人気を集めています。収納計画も思い通りに進められる、新しい形態のマイホームを取材しました。

HOUSTO 編集部

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針谷將史さん

「針谷將史建築設計事務所」代表

“コーポラティブハウス”とは?

コーポラティブハウスとは、簡単に言うと、事業を企画運営する不動産会社が購入希望者を募って建築する、オーダーメイド式の共同住宅です。話し合いによって自分が暮らす空間を決めた購入者は、それぞれが設計者と相談しながら、自分のライフスタイルに合った住まいを施工していきます。間取り、材質、水回りなど、すべて自由に選ぶことができ、大きな建物の一部につくる注文住宅というイメージ。その自由度と、マンションのような安心感から、近年、注目を集めているのです。

リビングダイニング

大きな窓を配したリビングダイニング。ムダなものはなく、すっきりとした大人の印象です。

今回は、代々木駅にほど近い、都心のコーポラティブハウスのインテリアを設計した針谷將史さんに、お話を伺いました。現在、針谷さんは、ご自分で設計された一室に暮らしています。
「この家のオーナーのご家族が、仕事で海外へ行かれているので、その間、私が暮らすことになったんです。一から設計に携わった物件に暮らしていると、毎日フィードバックができて、仕事に役立っていますね」(針谷さん、以下同)。

「オープン収納」ありきの間取り

寝室

リビングの奥に続くのが寝室。クローゼットは扉で閉じず、カーテンにすることで、圧迫感を軽減。

全体で85平米。2階がリビングダイニング、水回りと寝室です。ほとんど仕切りがなく、ワンルームの印象。
「オーナー自身が、もの選びの目をしっかり持った、センスのいい方なんですよね。家具もほとんどがオーナーの持ちものです。収納は、ものが増えないようにと、全体的にオープンなものを希望されました。とにかく、すっきりとシンプルに。お子さんのいるご家族ですが、私が暮らしているのとほとんど変わらない物量だったんですよ」。

本棚

リビングと寝室の間仕切りになっているのが、造作の本棚。

本棚に取り付つけてある黒い扉を外すと……。

置き型のエアコンが出現。夏場や真冬などは、こうして扉を外していますが、中間期は閉じることで家電による視覚的なノイズが消えます。

細部まで話し合った収納の工夫

オープン収納キッチン

キッチンもオープン収納。同じ素材の布ボックスなどを使って、食器や食材が整理されています。

「私自身も、シンプルなデザインが好きなので、ふだんから、設計上で収納はあまりつくり込むことはありません。それよりも、どんな暮らし方がしたいのか、さらに今後暮らしがどう変わっていくか……そうしたことを話し合って、先々に、暮らす人が自分でカスタマイズできるようにしておくことを考えています」。
針谷さんの言葉どおり、この家には、オーナーと話し合った「カスタマイズできる」収納の工夫があちこちに設えてあります。

コンクリート壁面・フック

コンクリート壁の構造上の穴は、あえて埋めず、好きなところにフックが取りつけられるようにしてあります。丸カンをつければ、ハンガーを掛けることもできるとか。

シンプルにこだわったバスルーム

シンプルにこだわったバスルーム。天井からハンガーラックをつけました。「些細な工夫ですが、これがとても便利なんです」と針谷さん。

本当に必要なものを見定めて収納をつくる

家づくりは自分にとって本当に大切なものは何かを見定める作業、と針谷さん。
「いま現在持っているものだけではなくて、歳を重ねていく間に不要になるもの、逆に必要になるものもありますよね。そうしたライフプランを見据えた上で、ゆるやかな遊びをとっておきながら、可変性のある収納をつくるのが、失敗しないコツなんじゃないかな、と思うんです。あれもしまいたい、これもしまいたい、と、収納をつくりすぎてしまうのも、逆に空間のムダづかいになってしまいますから」。

低い本棚の間仕切り

1階の玄関を開けたところ。現在は、低い本棚が間仕切りになっています。将来的には子ども部屋になる予定。

玄関

子ども部屋から玄関を眺めたところです。フラットで土間続きになっている玄関には、靴箱兼、大きめの「見せない収納」が設えてあります。

針谷さんが手掛けたコーポラティブハウスには、間取りや便利な暮らしの工夫だけでなく、オーナー家族の将来を想定した、ロングランな収納計画が施してありました。