リノベーションを専業とする建築・不動産会社で、戸建事業のチーフディレクターとして活躍する宇都宮惇さん。奥様もフリーランスで設計活動をおこなっている、同業カップルです。
宇都宮惇さん
「株式会社リビタ」
ゆとりある団地をフルリノベーション
「戸建住宅のリノベーションをする事業を手がけています。どの住宅も、ライフスタイルや仕事の仕方、家族構成などの変化に対応できる改修を前提として、70%くらいの完成度で住み始めるようなリノベーションの計画をしているのが特徴です」(宇都宮さん、以下同)。
そんな宇都宮さんは、今年9月に完成したマイホームに入居したばかり。仕事で培ったスキルとノウハウを最大限に活かし、郊外のニュータウンにある、築33年、96平米の広々とした団地をフルリノベーションしました。
家具のレイアウトを決めるのをやめたら、暮らしがグンと自由になった
リビング・ダイニングは、訪れた人も驚くほどの開放感。ダイニングテーブル、ソファなど、造作の家具はどれも、どこにでもさっと移動させることができ、部屋の印象は、その都度変化します。
以前は、三軒茶屋にほど近い、50平米の賃貸マンションで暮らしていたという宇都宮さん。マイホームは、お子さんの誕生もきっかけでした。
「狭い部屋でスペースが限られると、家の中での動きが限定されて、窮屈だな、とだんだん思うようになって。たとえば、ソファの置き場所が決まると、テレビの配置や、収納場所までがずっと変わらないままになりますよね。変化できる部分がないと、何か新しいことにトライするモチベーションが上がらない気がして……。子育てのための周辺環境と共に、家のなかの環境づくりを見直すのも大切だなと考えて、引っ越しとリノベーションの計画を進めました」。
子どもに、広い場所で遊ばせるための工夫
「一定の余白を残しておくことが、暮らしの自由度を上げるコツ。子どものスペースも、たとえば6畳の一部屋に限定するのではなくて、どこで遊んだっていい。リビング・ダイニングの床に、大きな紙をいっぱいに敷き詰めて絵を描くとか、段ボールで大きな家をつくるとか、スペースがあれば、何でもできますよね」。
大は、小を兼ねる。将来的に、リビング・ダイニングの一部を仕切ることで、子ども部屋にすることも考えているそうです。
もともとの床面積の広さに加え、リビング・ダイニングの余白を支えているのが、バックヤードの収納設計です。
「古い団地だったので、断熱改修も兼ねて、収納スペースを外壁面に組み込みました。リビング・ダイニングの収納には扉をつけて、バックヤードになる寝室やワードローブは、ロールスクリーンで目隠しをするなど、今後のレイアウト変更のし易さやコスト配分を考えています」。
用途を決めない空間の大切さ
リビング・ダイニングの広々スペースを中心に、宇都宮さんの家の中には、使い方を限定しない空間の余白がたくさん計画されています。その理由は、「用途が決まっていない場所がいっぱいあるほうが、なにかをしようとする度に考え工夫したり、使い方の想像をしたりと、家にいる時間を楽しめるから」。
「たとえば、何もない壁なら、ギャラリーみたいに絵を飾ってもいいし、プロジェクターで映画を見てもいい。どんな家でも、余白をつくることは、新しい暮らしのアイディアに繋がるのではないかなと思います」。
余白の多い家は、クリエイティビティの源。もののレイアウトも、使い方も、すべてが自由で、解放感に溢れた宇都宮さんの住まいは、とても刺激的でした。