インテリア、キャンプ、バイク、アクアリウム…男の趣味心をくすぐるコレクションの数々。ヴィンテージを愛するオーナーの所有物を、いかに美しく、かつ楽しく収めるかを考えたその家のコンセプトは、「倉庫」。細部にまでこだわった、唯一無二の注文住宅をご紹介します。

HOUSTO 編集部

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中野友貴さん

「BE-FUN DESIGN」勤務

「モノありき」ではじまった収納設計プラン

東京都中野区に昨年末竣工したばかりの注文住宅。都心にありながら、延床面積196㎡という広さを誇ります。
足を踏み入れると目の前に広がる、開放感抜群のリビング。ブラック格子の大きな窓は、6mもの天井高へと繋がっています。磨き上げられたバイクが鎮座する脇から、2階へと続くアイアンのスリット階段。初めて訪れた人は誰もが、空間の広がりと独特なインテリアに圧倒されます。
設計は、「BE-FUN DESIGN」と「ひだまり不動産」という2社がコラボして行われました。今回お話を伺ったのは、メイン設計者の中野友貴さん(「BE-FUN DESIGN」)です。

「もともとは、築40年以上の木造住宅でした。増築に増築を重ねた、とてもおもしろいお宅だったのですが、将来を視野に入れバリアフリーとして建て替えることに。オーナーのAさんは、ヴィンテージグッズのコレクターで、前の家はさまざまなモノで埋め尽くされていました。活かせるモノはどんどんインテリアにも使いつつ、機能的な収納ポイントをつくって納めていくというプランニングで、設計をスタートさせました」(中野さん、以下同)。

RC構造の3階建。1、2階がオーナー夫妻の住居です。最上階はバリアフリーのワンルームで、オーナーのお母様が暮らしています。

リビングから玄関側を見たところ。エントランス扉の隣には、オープンスタイルのシューズクロークが。玄関は、趣味のアクアリウムが楽しめるよう、土間になっています。

可動梯子付き!憧れの「天井まで続く大容量シェルフ」

どこを見ても圧巻のAさん邸。コンセプトは、「倉庫のような大空間」。特に目を引くのが、Aさんからも強い要望があったという大きな壁面収納です。左右にスライドできる可動梯子があり、高いところのモノの出し入れも楽にできます。

「Aさんは『どこに何があるか一目でわかるようにしたい』とおっしゃっていて、基本的にオープン収納がお好みです。天井まで続く大容量のシェルフは、モジュールを考えて造ったオリジナル。構造上空いたスペースにロフトも用意することで、収納スペースも増幅させました」。

シェルフはラーチ合板製で、向かって左側は本や書類、Aさんの仕事コーナー。右側は簡易キッチンのための収納コーナーになっています。写真の中央に見えるグレーの扉はゲストルームに続いています。その上にロフトスペースが設けられました。

1階簡易キッチンは、仕事の合間のカフェタイムに活躍。シェルフの中にコーヒーカップを吊り下げて収納するなど、オーナーAさんのテクニックが光ります。

アウトドア用品を収納できるバックヤード

オーナーAさんの収納の仕分け方は明確です。「見せたいもの、いつも使うものはわかりやすい場所にオープン収納。アウトドア用品や季節モノはバックヤードへ」。中野さんは、そんなAさんの要望に応じて、一階一番奥のスペースに広いストックルームを設けました。そこには、趣味のキャンプ道具やDIY用品がたっぷりと収められています。

「納戸、ストックルームというと、どうしても暗くて居心地の悪い場所になりがちですが、この部屋は天井高があって広く、採光窓のおかげで明るいのが特徴です。インテリアも工夫しながら、整理整頓自体を楽しんでもらえる場所になったと思います。『バックヤードを造ったら絶対置きたい』とAさんが購入した業務用の乾燥機、スゴいでしょう(笑)。こんな大きな家電もラクラク収められる贅沢なスペースです」。

リビングとストックルームの間には、ゲストルームが造られています。扉ではなく、洗面台でゆるやかに仕切りました。手前にはゲスト用のサニタリーもあります。

ダイニングキッチンとベッドルームの収納テクニック

2階はダイニングキッチンとベッドルーム、水回り。Aさん家族のプライベートゾーンが集められました。

ダイニングキッチンも、やはりオープン収納が中心です。テーブルと椅子は使うものが決まっていたので、サイズを考えてアイランドキッチンを造りました。テーブル上の天井に設置したのは、Aさんこだわりの焼肉専用換気扇です。

「Aさんが置きたいモノ、使いたいモノを基準として空間を設計し、収納ができていきました。食事時には、ダイニングテーブルにAさんが長年愛用している七輪が置かれます。換気扇の高さも、その七輪に合わせて調整しました」

造作のキッチン収納に加え、アンティークの収納棚も活躍。モノ選びのセンスが存分に活かされたディスプレイは、見応えがあります。

ベッドルームには、扉のないWICを併設。主に奥様の衣類が整理されているそう。

市販の収納用品を組み合わせて、小物を整理。帽子の並べ方や引き出しのレイアウトは、「見せる」と「隠す」のバランスが絶妙で、ぜひ真似したいテクニックです。

男の夢を詰め込んだ、憧れの住まい

何度も話し合いを重ねながら、「モノありきの家づくり」を進めた2人。 モダンな新築のはずが、もう何年も暮らしているかのようにヴィンテージ感がしっくりなじんでいることに驚きます。

「家は、モノを収めてはじめて完成するのだな、と実感しました。この家には、“男の憧れ”がいっぱい詰まっています。ヴィンテージのコレクション、インテリアのセンス、自然体の暮らし方。Aさんには、人間としても、かなり影響を受けましたね」。

男性ならではのコレクション魂を刺激する、Aさんの住まい。そこは収納すべてに男のロマンを感じる、とても刺激的な空間でした。