3人の子どもたちを含む5人家族とその両親が暮らす、郊外の二世帯注文住宅を取材しました。玄関クローク、リビング・ダイニングキッチンの機能的な収納に加え、子どもたちのために考案されたロフト周りのアイデアは実にユニーク。子どもたちが毎日ワクワク過ごせる空間設計には、遊び心いっぱいの収納プランが込められていました。

HOUSTO 編集部

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根來宏典さん

「根來宏典建築研究所」代表

玄関にはファミリークローゼットを用意。「家族のための家づくり」の達人が手がけた二世帯住宅

埼玉県東松山市に2年前建てられた、200㎡を超える大きな二世帯住宅を訪ねました。施主のTさんは、9歳・7歳の男の子と、5歳の女の子を育てる5人家族。子世帯であるTさんの居住空間は、約130㎡です。親世帯の空間とは玄関を共有。さらに長い縁側と、2階に設けられたロフト空間とが繋がっており、両世帯をゆるやかに回遊できる仕組みになっています。

設計者は、「家族のための家づくり」に定評のある根來宏典さん。何年も前に新聞の記事で根來さんを知ったTさんは、おぼろげな記憶を頼りにインターネットで根來さんを探し当て、設計を依頼したそうです。

根來さんが設計をする上で最も大切に考えているのは「家族の個性」。Tさんの家族とも慎重に対話を重ねて家族の関係性を把握し、プランニングに繋げていきました。

そんな根來さんの収納プランは、「生活動線の整理」と「楽しい子育て」を目指して考えられています。共有玄関に用意されたファミリークローゼットは、まさにその象徴。帰宅したらすぐに、バッグ、上着などをファミリークローゼットに置き、身軽になってリビングへ。子どもたちにも自然と整理の習慣がつきそうです。

「二世帯でもそれぞれがプライベートを保てるようにという意味もあって、玄関にクローゼットを用意しました。帰宅後はいったんここでリセットし、通り抜けながら整理をして、リラックス空間へと移動。クローゼットの終点部分には洗面台も用意しました。外から内への切り替えポイントになる空間です」(根來さん、以下同)。

荷物が多い子世帯のために用意された玄関のファミリークローゼット。リビングにゲストがいるときの裏動線としても活躍します。

ファミリークローゼットの間仕切り壁は、両面が収納として機能。リビング側は、天井まで届く壁面収納になっていました。

キッチンパントリー、小上がり、家事スペース。生活動線を極めたリビング・ダイニングキッチン

1階は、吹き抜けのある広々としたリビング・ダイニングキッチン。畳の小上がりや、黒板ボード、ちょっとした隙間に用意された収納スペースなど、ところどころにアイデアが散りばめられています。

Tさんの奥様の希望は、「キッチンから家族を見渡しつつ、家事が併行してできること」。前後に作業台を配したペニンシュラキッチンは、広々として動きやすいと好評です。そして、キッチンの隣にはバスルーム。並びには、ウォークスルーになったもう一つのファミリークローゼットが用意されていました。

「バスルームの隣のファミリークローゼットは、主にインナーなど家族の衣類が整理できる場所です。キッチンで料理をしながら洗濯物を回して、縁側に出て洗濯物を干す。夕方になったら取り込んで、小上がりで洗濯物を畳み、クローゼットに整理する。子どもたちの様子を見ながらすべての家事が行える動線を描きました」。

キッチンの奥に用意されたパントリーは、ストライプの壁紙でポップなイメージ。食品や、2軍の調理器具などが整理されています。

キッチン裏のバスルーム。シンク下の引き出しや洗濯機上の棚など、収納が充実です。

バスルームから縁側に出られるウォークスルーのファミリークローゼット。ハンガーに干したものをそのまま掛けて戻せる動線の良さが◎。

来客スペースにもなる便利な小上がりは、本格的な数寄屋建築で、引き出し収納つき。散らかりやすい子どものおもちゃが整理されています。

吹き抜けにはファミリーデスク。登り棒とボルダリングで上がれるロフトに、子どもたちも大喜び

2階は、子ども部屋と夫婦の寝室。階段を上がると、吹き抜けに面してファミリーデスクが設えてありました。その長さ、3.5m。4人が並んで座っても余裕の広さです。デスクの天板下には、本棚が。膝が当たらない奥行きで、つま先が当たらないようにと足下から少し浮かせて造られています。

デスクの背面は、ボルダリングと登り棒が設置された元気な男の子ルーム。将来的に2部屋に仕切れる8畳の空間です。廊下の奥には階段があり、上部に造られたロフトに続いています。階段は、親世帯側にも同じものが用意され、ひとつながりになったロフトを行き来することができます。

男の子たちが体をいっぱいに使って遊べる登り棒とボルダリング。優しい水色の壁もポイントです。

壁を登って、ロフトに到着! ロフトには家全体の空調を整える障子窓が設えてあります。

子ども部屋の壁には有孔ボードを活用。おもちゃや小物が賑やかに整理されていました。

一緒に過ごす。それぞれの居場所をつくる。家族みんなが居心地よく過ごせるスペースづくり

2階のファミリーデスクから南側の窓越しに見えるのは、Tさんの元のご実家。現在は、Tさんの妹家族が、祖父母と一緒に暮らしています。この二世帯住宅を建てたことで、バラバラに暮らしていた家族が再集合。現在は、みんなが近い場所にいながら、それぞれの距離感を適度に保ち、とても居心地がいいそう。

「一緒にいたい。なんとなくみんなの気配が感じられるところにいたい。一人で籠れる空間がほしい……成長によって、子どもが欲する居場所というのは変わります。家のあちこちに、その時々に最適な子どもの居場所をつくってあげたい。そこに収納をうまく絡ませていけたら、と考えました。本もおもちゃも、リビングに置きたいものもあれば、自分の部屋に置きたいものもありますよね」。

「生活動線」と「楽しい子育て」を実現させた建築設計と収納プランから、家族一人ひとりの暮らしと将来的な変化を俯瞰する、根来さんの優しいまなざしを感じることができました。