マニア垂涎のコレクションが家中に! 『スターウォーズ』をこよなく愛する4人家族が暮らすのは、都心に建つコンパクトな注文住宅。狭さを感じさせない秘訣は、やはり収納設計の妙にありました。
三浦尚人さん
「三浦尚人建築設計工房」代表
敷地面積18坪に建てられた、3階建×4人暮らしのコンパクトハウス
この注文住宅の施主、Sさん一家は2007年、千葉県のマンションから地元である大田区に住替えを行いました。敷地面積は18.27坪。決して広くはないものの、高台の角地で、眺めと開放感は抜群。3階建てOKという条件を活かして「なるべく窮屈感のない家を」と建築士の三浦尚人さんに設計を依頼したそうです。
玩具関係の会社を営むSさんをはじめ、奥様と2人のおこさんたちは、筋金入りのスターウォーズファン。膨大なスターウォーズコレクションを収納できることが、要望の一つでした。
「メインである2階のリビングは、スターウォーズと映画DVDのコレクション収納、また家族で映画が楽しめるように『BOSE』の音響システムを組み込みたいというご要望でした。家族で楽しめる共通の趣味があるのは素晴らしいことですよね。私もワクワクしました!」(三浦さん)。
1階は主寝室・ワードローブとサニタリー、3階はこども部屋。1階から2階へ続く白い螺旋階段が印象的な、シンプルモダン住宅です。
収納は外側に出して、壁はフラットに。工夫が光る、オリジナルコレクション収納の数々
リビングにつくられたガラス扉のディスプレイ収納が、パッと目を引きます。大切なスターウォーズコレクションが目に見える形で収納できる可動棚。空間を広く見せるために、奥は鏡貼りになっています。
「内側にでっぱる収納をつくってしまうと、限られたスペースがもったいない。そこで、収納部分を出窓風収納にして、壁面をフラットにしました。こうすることで、おウチ外観もリズミカルに。外観はシルバー×ブラック、インテリアはホワイト×ブラックのモノトーンに統一しています」(三浦さん)。
また、テレビ横に設えられたDVD収納も見事です。およそ500本あったというDVDが 3列の引き出し式収納にきちんと収まっていました。
ライフステージの変化に合わせた、こども部屋の空間づくり
写真は3階、約10畳のこども部屋です。
この家が建てられたばかりの頃はまだ幼かった兄弟も、今や中高生。
フラットなワンフロアを、ロールスクリーンで仕切れるようにして、収納家具でそれぞれのスペースを確保しています。
「もともとは将来的に2部屋に分けられるように、電源も振り分け、それぞれ壁面に小さな収納を用意したシンプルな部屋でした。ロールスクリーンを取り付けたのは施主のSさんですが、壁をつくってしまうよりも、こうしてこどもたちの年齢に合わせ、フレキシブルに収納を考えられているのはいいな、と思いましたね」(三浦さん)。
「幼少期はおもちゃと洋服だけを置いていたこどもたちの遊び場も、小さなベッドを2台置いていた時期もありますし、二段ベッドを中央に置いたこともあります。それぞれ荷物も増えてきて、自分たちの空間を欲するようになったので、今のような状態にはなりましたが、最終的にはそれぞれ独立して欲しいので、あまり広々と居心地がいい空間にしすぎない方がいいな、と(笑)」(Sさん)。
2階の螺旋階段脇には、スペースを活かしてSさんの書斎がつくられていますが、将来的にこどもたちが独立したら、書斎を無くして3階まで行き来できるエレベーターを設置する構想もあるというとSさん。
「ライフステージの変化に合わせて、家をカスタマイズしていくのは楽しいですよね。そのためには、将来的なプランを考えながら、なるべく空間に余裕を残しておくことも大切なのではないでしょうか」(三浦さん)。
「収納を充実させたい」という前に考えておきたいこと
三浦さんがもっとも大切にしていることは、注文住宅を設計する前に施主へ行うヒアリング。持ち物や、今後購入する予定のアイテムなどを記入する独自の冊子も用意し、その内容を確認しながら、収納計画を進めていくと言います。
「多くの方々が、保険のように『収納を充実させたい』とおっしゃるんですが、これが一番難しいんですよね。本当に充実させてたくさんつくると、入居時はスカスカになってしまう。すると、そこにどんどん新たなモノを入れたくなるものなんです。何をどれくらい持っていて、どのように収めたいのかを把握しておけば、失敗は少ないと思います。限られたスペースも、知恵を絞って収納と居住スペースを組み合わせたい。Sさんのお宅は、まさにその好例でした。2階はコレクションを収納するモノの部屋。3階はこどもたちの成長に合わせて変化させるフリーな部屋。造作家具は確かに高価ではありますが、ここぞというところに局所に使うなど、全体的にスペースと費用のバランスを取りながら考えていけば、快適な住居が実現すると思いますよ」(三浦さん)。
家族の趣味であるコレクション収納と、こどもたちの成長に合わせた空間の変化。三浦さんが設計したS邸には、家族みんなが楽しめる家づくりのヒントがたくさん詰めこまれていました。