収納の定義を幅広く捉え、書店スタッフが推しの収納関連本3冊を紹介!
本のプロが選ぶ“収納本”とは?
選んでくれたのは…古書ロスパペロテス
代々木上原駅からほど近い、今年で開店15年目を迎える古書店。店名は「古本」や「古書」を意味するスペイン語で、店の雰囲気にマッチしたロゴマークはイラストレーター・和田誠さんによるもの。「その町のお客さんが必要とされるもの」を揃えており、映画、音楽、落語、カルチャー、絵本と幅広いジャンルが並ぶほか、文学の入り口となる文庫本には力を入れている。まさに代々木上原という町のような書店。 今回は究極の収納スキルが求められる『小さな部屋・家』をテーマに選んでいただきました!
選書人
古書ロスパペロテス 店主 野崎雅彦
1冊目『TOKYO STYLE』都築 響一/ちくま文庫
豪華な写真集や分厚い雑誌に出てくるようなインテリアに、いったい僕らのうちの何人が暮らしているのだろう。僕らが実際に住み、生活する本当の「トウキョウ・スタイル」はこんなものだ!編集者・都築響一の名著の文庫化。
2冊目『魔窟ちゃん訪問』伊藤 ガビン(著)、大高 隆(写真)/リトルプレス
コンピュータ雑誌『アイコン』に1992-94年にかけて連載された、マニアな人々の部屋訪問記。山のように積まれたモノの数々の写真と、部屋の持ち主へのインタビューから構成。
選書理由:
「『TOKYO STYLE』からさらにクローズアップし、収納されている物にフィーチャーした本です。○○マニアや○○コレクターなど“趣味人”の部屋に大量の物が収められた模様は、まさに“魔窟”。雑誌やレコードだけでなく、プラモデルやスニーカー、電話機やテレビのモニターなどが、床から天井までぎっしりと収納されています。ただ、“好き”の基準に沿って集められた物はジャンルが揃っているだけに、雑多に積み重ねられても自然と秩序が生まれている。収納は、特別な収納家具などを使って無理にするものではないのだと気付かされます。趣味で集めた物がぎっしり収納された部屋には人柄が表れていて、その人の趣味だけでなく考え方、生き方までも伝わってくるようで、面白いですよね」(野崎さん)
3冊目『小屋の力―マイクロ・アーキテクチャー』仙波 喜代子、今井 今朝春(編)/ワールドフォトプレス
小屋は人が生きる営みにかかわる。命を守る小屋、働く小屋など、文化の法を超えて収れんされるユニヴァーサルなデザインと機能。自然、立地条件、使われた素材などから醸し出される、様々な小屋のたたずまいをとらえた写真集。
選書理由:
「小さな家や小屋が好きなので関連本はたくさん見てきましたが、これほど小屋を網羅している本はありません。様々な道具を収納する小屋や屋台、キャンピングカー、寝台列車の客室など、世界中の小さな部屋や小屋を、写真や図解で解説しています。皆さんの中には、子どもの頃に秘密基地を作ったり計画したりした人もいると思いますが、建築家・中村好文さんのツリーハウスなどには、その秘密基地に通じるものがあります。小屋では、手の届く範囲に必要な物があり、その収納には工夫が凝らされています。光の採り方や棚の位置など、狭い空間に適した収納術の参考にもなるのではないでしょうか」(野崎さん)
まとめ
古本は人と人との間を巡っていくものと捉えているので、僕自身は古本業に携わることで以前のように大量に所有することはなくなりましたが、自分の基準さえあれば、物が多くても秩序ある収納ができると思います。収納を極めると“ムダは排除する”といったミニマリズムに行きがちですが、ムダがある人生もいいのではないでしょうか。
古書 ロスパペロテス
- 住所:東京都渋谷区西原3-4-2 紅谷ビルG102
- 営業時間:12:00~23:00
- 定休日:火曜
- 問い合わせ:03-3467-9544
- http://lospapelotes.com/
選書理由:
「“パリのお部屋”や“ニューヨークのアトリエ”など海外を持ち上げる文化へのカウンターとして、日本の小さなアパートなどでの収納事情をリアルに紹介した本です。僕が好きなページは、建築家の方が学生の頃から住み続けた部屋。明治時代に建てられた東大の下宿宿“本郷館”の一室で、細野晴臣さんの『恋は桃色』のミュージックビデオの撮影でも使われています。収納はというと、床に本を重ねて板で本棚風にしたり、仕事道具を単に床に積み重ねたり、さり気なく小物を置いたりと、見せる収納の原型のようなやり方。雑然としているようで秩序があるのは、愛している物しか置いていないから。小さな部屋ならではの暮らし方ですよね」(野崎さん)