収納の定義を幅広く捉え、書店スタッフが推しの収納関連本3冊を紹介!
本のプロが選ぶ“収納本”とは?
選んでくれたのは…古書 コンコ堂
東京都JR中央線阿佐ヶ谷駅から歩いて5分ほど。賑やかな商店街を抜けた先に佇む、「古書 コンコ堂」。「街の本屋」というコンセプトを大切に、小説から写真集、人文系の書籍や絵本、幅広い取り扱いで、休日はもちろん、平日も多くの街の人が本を求めて訪れる暖かな書店です。圧迫感を感じさせない木の温もり溢れる本棚や、店主天野さんが趣味で集めていた日本各地の小物など、ディスプレイも楽しめます。
『もたない男』中崎タツヤ/新潮文庫
命と金と妻以外、なんでも捨てる! 人気漫画『じみへん』作者は究極の断捨離オトコだった――。空き部屋のような仕事場、妻を説き伏せ捨てたソファ、燃やしたらスッキリした大量の漫画原稿。極端すぎる捨て方に笑いが止まらない、異才の漫画家が放つエッセイ集。
『随筆 本が崩れる』草森紳一/中公文庫
とつぜん、崩れる。地震で崩れる。何万冊もの蔵書が、凶器となって、ふりかかる。これは読書の快楽への罰なのか。崩れた瞬間からはじまる抱腹、超絶、悪夢の本との格闘技。
選書理由:
1冊目に紹介した『もたない男』と対極にあるのがこの本です。写真・漫画・広告・デザイン・建築・幕末・漢文など、驚くほど幅広い専門知識を持つ文筆家、草森紳一さんの2DLKのマンションには、3万2千冊の蔵書が眠っていたそうです。居室はもちろん、廊下やトイレ、風呂場まで本がびっしり。一度入浴中に本が雪崩を起こし、風呂から出られなくなりながらもそのまま浴室で読書を続けた、というエピソードも面白い。著者の草森さんは、専門分野を持つことを嫌い、興味があるものを次々深掘りしていった人。その系譜がこの蔵書数と考えると、このマンションの一室は草森さんの頭脳を具現化したようなものかもしれません。持ち物や部屋は、その人を写す鏡であるということが、これほどまでに表現されている本は他にないかもしれません。
『地球家族 世界30か国のふつうの暮らし』著者:マテリアルワールドプロジェクト、ピーター・メンツェル、翻訳:近藤真理、杉山良男
「申し訳ありませんが、家の中のものを全部、家の前に出して写真を撮らせて下さい」。戦禍のサラエボ(当時)からモノがあふれる日本まで、世界50か国の平均的家族の持ち物と暮らしを写真で紹介するダイナミックな一冊。
選書理由:
世界50か国の暮らしが紹介されているのですが、一番異様に目に映ったのが「日本」です。本書は、年収・宗教・家族構成などが平均的な家庭にお邪魔して、家の中のものをすべて出し、家族写真を撮るという構成。日本のページでは、狭い家の前にびっしりとものが積まれ、その中に核家族がちょこんと佇んでいます。対して新興国や発展途上国では、ものは少なく家族は多い。ものと人数の対比や、先進国とそれ以外の地域の対比、また写っている人々の表情にも注目しながら、所有こそが幸せか?を考えられる1冊です。
書店のインテリア
まとめ
今回は「もの」と「暮らし」の常識的な思考をテーマに選書しました。例えば、家族が多いとものが多いと思ってしまいがちだし、家財道具でも、これは必要、と勝手に決めつけてしまっている場合もありますね。『収納の常識、本当に正しい?』と考え直すきっかけになると嬉しいです。
古書 コンコ堂
- 住所:東京都杉並区阿佐谷北2-38-22キリンヤビル1F
- 営業時間:12:00〜22:00
- 定休日:火曜日
- 問い合わせ:03-5356-7283
- info@konkodo.com
選書理由:
「捨てる技術」や「こんまり」がアメリカを中心に世界的に大流行していますよね。漫画家の中崎タツヤさんは、その先を行く狂気の「ミニマリスト」。巻頭7Pはカラー写真で中崎さんの仕事部屋が紹介されているのですが、このページだけでも圧倒されることでしょう。無駄なものを部屋に一切置かない、という意識は想像以上に徹底しています。例えば「ボールペンのインクが減ったら、上の部分は邪魔?」と考え、ノコギリを使ってペンのお尻部分を切り落とし、さらに椅子の背もたれももしかして不要?と感じたら、これもノコギリでカット。思い出の手紙など「使い道がない」と感じたものはバッサバッサと仕分けします。時には妻と〝捨てる・捨てない〟の衝突がありながらも、迫真に迫る捨て癖を極める中崎さんの姿を見ると、スッキリ部屋が正義、というメインストリームを考え直したくなるかもしれません。(笑)