収納の定義を幅広く捉え、書店スタッフが推しの収納関連本3冊を紹介!
本のプロが選ぶ“収納本”とは?
選んでくれたのは…文喫 六本木
コンセプトは「文化を喫する、入場料のある本屋」。人文科学、自然科学からデザイン・アートまで、約三万冊の書籍を販売しています。約90の雑誌が並べられたエントランスは文化への入り口を感じさせ、印象的。入場料1500円を払えば、一人で本と向き合うための閲覧室、複数人で利用可能な研究室を、時間無制限で利用できます。コーヒー、煎茶はおかわり自由のほか、併設の喫茶室では、小腹を満たすためのこだわりのメニューを用意。自分と本の世界に集中できる空間づくりに注力し、本との出会いによる新たな興味の入り口を提供しています。
選書人
文喫 六本木 副店長 林 和泉
『マトリョーシカ大図鑑』写真・文 沼田元氣/二見書房
誰もが一度は見たことがある、ロシアの人形 「 マトリョーシカ 」。マトリョーシカ詩人にして、ロシアのおばあちゃん写真家、伝統こけしとマトリョーシカの日露友好親善大使による掲載点数1000点以上、144ページ・オールカラーのカタログ的写真絵本。
『書き出し「世界文学全集」』柴田元幸/河出書房新社
“書き出し”だけで、世界の名作一気読み!メルヴィル、ジョイス、ウルフ、カフカ、トルストイから児童文学、怪奇・幻想、そして詩まで、世界の名作全73作品が、あの”柴田訳”の「新訳」で読める!
選書理由:
「書き出しは、その本の世界に挑むような気持ちで向き合う、いちばん濃い部分。この本は、古典文学を中心に書き出し部分を紹介し、気に入ったら続きを読むきっかけにしてねという趣旨の本。同じルールで切り取って集めてしまったという、文学の究極の収納です(笑)。同じルールだからこそ、それぞれの面白さがかえって際立っていて、まるで古典文学のショールームのよう。読んだことがある作品でも、新訳で読むとまた新たな発見があるのも面白いですね。また、たとえば衣服の収納では、色別・アイテム別など収納ルールを決めると、いつも手に取るアイテムに気付いたり、自分の好みを改めて発見できます。この本も、自分の好みを知り、さらに深めるきっかけになると思います」
『屋根裏の私の小さな部屋』大庭賢哉/青土社
ドアの向こうで、公園の片隅で、教室の隣の席で、ふしぎなことが待っている。日常の中のファンタジーを描く気鋭の作家・大庭賢哉が、日常と非日常を行き来して成長していく子どもたちのみずみずしい姿を描く、傑作漫画短編集。
選書理由:
「キッチンやお風呂など、部屋ごとに機能が違う家は、どこか体と似ているなと思うことがあります。そういう意味では、収納場所として使われる「屋根裏」は、頭の中かもしれません。この本は、物置のようにごちゃごちゃとたくさん物がある中に、宝石の原石のようにキラッと光るお話がいっぱい詰まっているような本。とくに大きな事件は起きないけれど、日常の中のちょっと不思議なできごとを描いています。学校や家の中のシーンかと思いきや、窓を開けると外は海になっている。そういった非日常への繋がり方は、子供ならではのみずみずしい感性を思い出させてくれます。そんな感覚が、懐かしくて愛おしい本。ちょっと疲れた大人にこそ、ゆっくりとお部屋で読んで欲しいですね」
店内のインテリア
まとめ
「収納という大きなテーマをいただいて、集めた好きなものをどう見せるか、逆にどう隠すか、またどう置くかを考えて選書しました。文喫では、よりたくさんの本と出会って興味を持っていただきたいので、バラバラの関連書籍を平積みにしたり、本棚を歴史にたとえ、下は古代について書かれた本、上の棚は未来についての本、など本棚ごとに置き方、見せ方を工夫しています。コンセプトに合わせてモノを配置する、というところは収納につながる部分があるかもしれません。ぜひ一棚づつ本棚を巡って、出会いを楽しんでほしいですね」
文喫 六本木
- 住所:東京都港区六本木6-1-20 六本木電気ビル1F
- 営業時間:9:00~23:00(L.O 22:30)
- 定休日:不定休
- 料金:入場料1,500円(税抜)
- 問い合わせ:03-6438-9120
- http://bunkitsu.jp/
選書理由:
「ひとつの物に特化して愛情を注いでいる人は、話を聞いてもすごく面白いですよね。この本は、集めたマトリョーシカを図鑑のように並べた圧巻の一冊。写真や装丁がかわいいだけでなく、モチーフの意味や、ルーツが日本にあることなど、歴史的背景まで網羅しています。1個に見えて、中にたくさん”収納”されているマトリョーシカは、機能的にも優れた美しさがあると実感します。愛情を持って何かを集めてしまう性質は、誰しもあると思います。博物館のようにガラスケースに収めてみたり、集めたものをどう収納してどう配置し、どう見せるかは、考えがいがありますよね。自分は何を並べて眺めているときがいちばん幸せなのか。そんな目線で身の回りを見てみると、暮らしに新しい発見があるかもしれません」