収納の定義を幅広く捉え、書店スタッフが推しの収納関連本3冊を紹介!
本のプロが選ぶ“収納本”とは?

HOUSTO 編集部

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選んでくれたのは…誠光社

誠光社は、京都の昔ながらの路地に佇む小さな街の本屋。仕入れは出版社との直接取引がメインで、店主の堀部さん自らが選書し、店番も取引先とのやりとりも行っています。堀部さん曰く、「検索型ではなく編集型の本屋」。テーマごとに本が並んだ棚には実用書はほとんどなく、人文・カルチャーなど嗜好性の強い書籍が顔を揃え、眺めるだけで知的好奇心を刺激されます。今の時代の新刊書店のありかた、個人書店のありかたを真正面から考え、業界に提案するような、哲学のある存在です。

選書人

誠光社 店主 堀部 篤史

『かごとざる』久野恵一(監修) 萩原健太郎(著)/グラフィック社

歴史的背景や思想よりも“いまの民藝”を紹介することにこだわる「民藝の教科書」シリーズ第四弾。「かごとざる」をテーマに、全国25カ所のつくり手と製品をレポート。風土が育むさまざまな素材を用いた素朴で力強い美しさをもつ、実用的なプロダクトを紹介。

選書理由:

「民藝は、誠光社でもイベントや関連出版物で取り組んでいるテーマです。民藝の定義はあやふやになってきていますが、柳宗悦が提唱したコンセプトによると、地方色がきちんとあり、無名の作り手が生活で用いるために作った品々のこと。『教科書』と謳うだけあり、産地によって違う素材や作り方、歴史も網羅した作り。図版も多く、昔はかごやざるを生活に取り込んで、日本ならではの収納の仕方をしていたことが分かります。加えてこの本では昔の使い方だけでなく、CDや文庫本を収納したり花器として使ったりと、今の暮らしの中での活かし方も提案してあるので、普段の暮らしで活用するヒントにしてはいかがでしょうか」

『正しいパンツのたたみ方 新しい家庭科勉強法』南野忠晴/岩波ジュニア新書

家庭科は、自分の暮らしを自分で整える力だけでなく、この社会の中で他者とともに生きていく力を育ててくれる教科。ご飯の作り方、お金とのつきあい方、時間の使い方など、自立にあたってどんな知識や技術が必要か、10代の暮らしに沿って具体的にアドバイスする。

選書理由:

「誠光社では実用書は扱わないかわりに、児童書をあえて大人向けの本と一緒に並べたりしています。専門的なテーマで分厚い本を読むのは大変ですが、児童書というかたちで読むとストーリーとして認識でき、馴染みのない世界の話でも簡単に読めるので、入り口としてもいいものが多いんです。この本は昔からよく売れていて、『パンツのたたみ方』というタイトルですが実用的なマニュアルではなく、家事や整理整頓をなぜするのか、家族の中で生きるとはどういうことなのかという哲学的な視点も含めて、子どもにも分かるように文章にしてある。この岩波ジュニア新書のシリーズは、小学校中学年・高学年向けと謳っていますが、テーマが面白く、大人が読むに値する内容も多いんです」

『コーネルの箱』 チャールズ・シミック(著) 柴田元幸(翻訳)/文藝春秋

シュルレアリスムに影響を受けたアメリカのアーティスト、ジョゼフ・コーネル。バレリーナやプリンスを忍ばせたコーネルの不思議なアートに、詩人チャールズ・シミックが華麗な小文を加えた大人の絵本。

選書理由:

「コーネルはNYのアーティストで、ヨーロッパのシュールレアリズムの影響を同時代的に受けてやっている人。拾ったり買い集めたりした細々したものを箱の中にコラージュし、小宇宙のような作品を作っています。実用の収納とは違いますが、内向的に自分の内側を見つめ、限られた箱の中に物を収めて作品を創造することは、箱庭的な世界を作るという意味合いもあります。小さい物の中に宇宙を見るというコーネルの世界観は、日本古来の茶室や庭園の”見立て”の世界に通じるところもあり、日本人の感覚には親和性が高いのではないでしょうか。コーネル作品をカラーで楽しむだけでなく、その人物像を知ることのできる、入門編としても最適な一冊。」

店内のインテリア

古民家を手作りでリノベーション。板張りをそのまま見せる店内は、限られた予算内で収めながらも統一感があり美しい。

新刊にあわせて”気まぐれ”に特集する棚。「本屋ではなく、本を見て欲しい」との思いから作られた造作本棚は、サイズも計算しつくされ、書影が際立つ。

単なる情報ではなく、カルチャーを紹介する”編集型の本屋”だけに、好奇心をそそられる本が天井近くまでぎっしりと並ぶ。興味を持てば持つほど楽しめる店。

スペースも大切にし、抜け感のあるレイアウト。90年代に青春を過ごした人なら反応せずにいられないアイテムもちらほら。

音楽と本の相性はいいもの。レコード収集が趣味の堀部さんは音楽への造詣も深く、店内には音源を販売するコーナーも。

天井を優しく彩るグリーン。音響機器や照明器具にも世界観が現れる。

奥は一転して白壁のギャラリースペース。新刊の発売イベントも行われる店内では、テーマに沿った雑貨の紹介も。

まとめ

「区切られた中に『収納する』ということは、『創造する』ということに転化して捉えることもできるのではないでしょうか。持ち物をどう並べるか・収めるかは、単なる収納ではなく、自分の考えを可視化する行為でもあります。例えば本棚でも、ただ本を収めるだけでなく、その配置やディスプレイで、自分の知的渇望や美意識を展開することでもあるわけです。ファッションが好きな方なら、ワードローブをどう並べるかは、自分の考えを可視化する行為でもあります。それは自己満足かもしれませんが、ささやかな表現やクリエイションになることもあるのではないでしょうか」

誠光社

  • 住所:京都市上京区中町通丸太町上ル俵屋町437
  • 営業時間:10:00~20:00
  • 定休日:年中無休(12/31〜1/3除く)
  • 問い合わせ:075-708-8340
  • https://www.seikosha-books.com/