今回お話を伺ったのはスタイリスト・ディスプレイデザイナーのみつまともこさん。現在は家族と過ごす時間を重視しながらも、仕事と趣味にもバランスよく意識を向けているといいます。その中で見えてきた、暮らしの取捨選択とは。

HOUSTO 編集部

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両親が施設へ。今の日常がずっと続くわけではないと実感

みつまさんはここ数年で80代のご両親の高齢者施設入居、実家じまいを経験。脚が不自由になるなど2人で暮らすのが心配な場面が増えたからです。

「施設への入居が落ち着いてから、両親が住んでいた家を整理。それ以前に一軒家からマンションに一度引っ越していたため、それほどモノが多かったわけではないのですが、やはり大変でした。不要品を業者に買い取ってもらったり、処分したりして、手元に残ったのは思い出の食器類と写真だけです」

家族で長年使っていた食器シリーズは、今はみつまさん宅のリビングの飾り棚(中段、下段)に。きょうだいで分けるのか、一部を残して処分するのかまだ決めかねているところ

転居やモノの処分。これらの大きな経験を通してみつまさんが気づいたのは、「今のこの家での平穏な暮らしがずっと続くわけではないんだ」ということ。

「だったら元気な今のうちに、好きなことをどんどんやらなければ。そう強く感じ、念願だった犬との暮らしをスタートさせました。忙しさでなんとなく先延ばしにしていたことだったのです」

トイプードルのあんずくん

中学生の娘さんとも、子育て中の今しか持てない親子の時間を楽しんでいます。

「一緒にあんずくんの散歩に行ったり、洋服を買いに行ったり。娘を授かってからは、仕事一辺倒の暮らしから家族の時間を最優先するように。その中で、みんなで暮らす空間=住まいがとても大切だという気持ちもより強くなりました」

娘さんが描いた絵や版画作品は、インテリアとして家のあちこちに飾られています

「まだまだこれから受験や就職などさまざまなことがあり、お金もかかります。でもなるべく娘の希望を叶えてあげられるよう、がんばりたいと思っています」

仕事と暮らしは直結。モノは多いけれど、循環させることを意識しています

みつまさんの仕事は、主にイベントなどのディスプレイデザインや雑誌撮影などのスタイリング。まさに暮らしの空間を整える内容です。自宅には仕事で使うインテリア雑貨、生活雑貨もたくさんあります。

「モノに囲まれている暮らしです。若い頃は多くてもいい、素敵なモノを手に入れたいという気持ちが常にありました。でも今は大切なモノがだんだんとわかってきて、生活空間に余裕が欲しいという思いが強いですね。ただ、新しいトレンドを取り入れることも仕事のうち。必要なモノは導入しますが、買ったとしてもどんどん循環させていく。やみくもに溜め込むことはしないようにしています」

みつまさん宅の玄関には、「ご自由にどうぞ」ボックスが置いてあります。中身は、欲しい方がいたら自由に持ち帰りOKのインテリア雑貨たち。花瓶などが入っていて、友人や取材で訪れた仕事関係者に喜ばれているそうです。

クローゼットは量でなく、鮮度が大事。手に取りやすい価格でいいから新しい服も取り入れたい

これからみつまさんが手放していこうと考えているのは、ファッションアイテム。

「コロナ禍を経て、オンラインで打ち合わせすることが増えたのが理由です。今までは好きなブランドの服を季節ごとに買っていましたが、その必要性を感じなくなりました。本当に好きな、よく着る服だけを収納したいという思いはありますが、一方でクローゼットの鮮度を保つことも意識。年齢を重ねるとなるべく新しい服を着るほうがよいと聞き、自分自身も深く納得したからです。だから何年も大切に使うモノと、たとえ手に取りやすい価格でもシーズンごとに買うモノ、両方をセレクトしておしゃれを楽しみたい。今はそんな気分です」

みつまさんにとっては、物理的なモノはもちろんですが、目に見えない情報も整理整頓の対象。モノを減らすのと同時に、無駄な情報になるべく振り回されないように心がけているそうです。

「あまり見ない動画配信のサブスクは解約し、パソコンにたまった情報も定期的に削除。自分自身にも常に余白を用意しておかないと、新しい情報は入ってこない気がするんです」

推し活は「自分らしさ」をつくる大切な要素

家族との時間、そして仕事。みつまさんの暮らしに欠かせないもうひとつの要素が推し活です。

「ここ2、3年でK-POPにハマりました。私は50代ですが、大人になっても夢中になれることがあるのは幸せだなと感じています。ライブはたとえ遠くても、ひとりでも行くし、同じ推し活仲間とワイワイできるのはとても楽しい。これがきっかけで仕事の依頼をいただくことも実は多くて、推し活をしていて悪いことはひとつも思いつきません」

推し活は家族公認で、家族の理解があるからこそ安心して自分時間を楽しめるのだそう。みつまさんの中では家族、仕事、趣味のバランスがとても重要。どれが欠けても自分らしくないし、どれかが多すぎても暮らしの満足度は上がらないかもしれないと言います。

数十年先の家は、利便性を重視。今はまだ大好きな家で暮らしたい

両親の暮らしを見守る中で、みつまさんの住まいに対する思いにも変化が訪れています。

「両親は施設に入る前、駅近のマンションで暮らしていました。義理の両親も駅直結マンション住まい。高齢になると生活圏が狭くなるし、必要なモノがコンパクトにそろっている駅近くに住むのはとても有効だと感じました。今の家は駅から少し離れているので、将来は引っ越しすることもあるかもしれません」

でも、今はまだまだ大好きなこの家で暮らしたい。愛犬あんずくんとの生活も始まったばかりです。

「この家でどうすれば快適に過ごせるのか、都度考えながらこの先も住まいを整えていくことになるでしょう。やりがいのある仕事に打ち込みつつ、娘の成長を日々見守っていく。それが今の私の大きな励みになっています」

みつまさんの暮らしの工夫

来客用のモノは持たず、使い回す

友人家族を家に招くことも多いけれど、来客用のものはほぼありません。食器は普段からお気に入りでよく使うものを少し多めに持ち、それをおもてなしに活用。和食器は4寸皿(約12cm)をそろえ、取り皿に。骨董屋さんなどで気に入った柄を少しずつ集めたものです。デザインが統一されていなくても、サイズがそろっていれば使いやすい。白いプレートはIKEAのオフタストシリーズ。1枚100円以下でそろえやすく、薄くて丈夫なので大人数の食事会にもぴったりです。どちらもかさばらず、重ねて収納できるのも魅力。

食器は引き出しに重ねて収納。入るぶんだけに厳選

器好きなので購入することも多いけれど、入りきらなくなったら処分します。器が欠けたり、重ねる際に音が鳴ったりしないように布を挟んでひと工夫。余り布や不要になった服で手縫いしたものです。

ちょっとした飾りで季節の移り変わりを楽しむ

自宅のインテリアは、季節感を出すことが一種のテーマになっています。玄関では冬シーズンの間、雪の積もった木と女の子のオブジェ作品をディスプレイ。雛祭りやクリスマスなどイベントに限定しない飾りを使うと、長い期間楽しめます。春はピンク色のものを飾るだけでもOK。旬の果物をガラス容器に入れたり、風水的に縁起がいいと言われている馬モチーフのアイテムを飾ることもあります。

今回教えてもらったのは……

  • みつまともこさん
    スタイリスト・ディスプレイデザイナー。イベントやショップのディスプレイデザイン、雑誌、書籍、Webなどさまざまな分野でスタイリングを手がけている。

    https://www.mitsumatomoko.com/

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