兵庫県相生市の住宅設計事務所「ひまわり工房」所属の設計士 東沙織さんに、日々収納と暮らしに向き合う上で考えた「モノ・コト」を綴ってもらうエッセイです。

東沙織

東沙織

1988年生まれ、兵庫県相生市出身。有限会社ひまわり工房取締役 暮らしの設計士。 設計思想は、『家事シェアできる家』・『らくちん動線の家』。適材適所の収納計画も定評あり。毎朝アイデア発信するインスタグラマー。

「あぁ曇っていて、今日もまた、お風呂の鏡はうまく見えない…」。
これは、わたしが毎晩自宅アパートのお風呂に浸かりながら思うことです。

賃貸アパートやマンション、一戸建て住宅問わず、お風呂場に鏡が設置してあることは当然だと思う一方で、鏡を見ようと思うと曇っていて…うまく見えない状況。
おまけに、わたしの場合は両目の視力が0.1以下なので、裸眼状態のお風呂場では、もはや鏡の存在価値なんて…ないも同然。

そんなわたしの気持ちに共感していただける方、いらっしゃいませんか?

あっ、申し遅れました。 わたしは東 沙織(あずま さおり)と申します。
まずは本題をおはなしする前に、わたしのプロフィールを少しばかりお話させてくださいね。

わたしは、兵庫県相生市(あいおい)という人口約3万人の田舎町にて生まれ育ち、現在は同市にて、工務店『(有)ひまわり工房』の経営に携わっています。
じぶん自身を『暮らしの設計士』と名乗り、住宅建築の業界に入ってそろそろ10年になります。主に新築住宅や建て替えの依頼が中心なのですが、一戸建てリフォームやリノベーション案件をお受けすることもあります。

わたしが得意とする設計手法は『魔法動線』と『適材適所な収納計画』。 
家事時間・子育て時間・じぶん時間。
各時間軸でのご家族の悩みをヒアリング(問診)で聴きだし、優先順位を一緒に整えていき、家時間がより豊かになる『アイデアあふれる暮らしの器』をつくることを大切にしています。

そんなわたしが、ご縁あって、今回からこのエッセイコラムを執筆することになりました。 わたしの原体験や、暮らしづくりに悩まれている依頼主とのかかわりの中で気づいたことなどを中心に書いていきます。
読んでいただいているあなたにとって、1つでも暮らしを見つめなおす時のヒントやアイデアになれば幸いです。

お風呂場の鏡ってなんのためにあるの?

さて改めて、わたしから皆さんへ1つ質問します。

「あなたにとって、『お風呂場の鏡』はなんのためにありますか?」
「そもそもお風呂場に鏡っているんでしょうか?」

こんな質問を、わたし自身のInstagram(@himawari_kobo)にて、今回同様に質問をしてみました。また、わたしが担当する家づくりの依頼主の皆さんにも同様に質問をしてみました。

その結果、つぎのような回答が挙がってきました。

「お風呂場には鏡があるのが当然だ!」 という人の意見例がこちら↓
✓お風呂場でひげを剃る際に、鏡は必要
✓化粧を落として洗顔する際に、鏡は必要
✓洗髪のチェックのために、鏡は必要
✓ボディチェックのために、鏡は必要

「お風呂場には鏡がなくてもいい。」 という人の意見例がこちら↓
✓曇っていて見えないので、鏡は不要
✓裸眼ではよく見えないので、鏡は不要
✓ボディチェックは脱衣室で行うので、風呂場には鏡は不要
✓掃除が大変なので、鏡は不要

お風呂場収納の新しいカタチ

わたしが住宅建築に携わり続けてもうすぐ10年。特にここ3年、お風呂場事情で変化していることがあります。
それは、年々、お風呂場の鏡はおろか、洗い場の棚も不要という依頼主が増えていること。 年齢は20代~40代の方に多いですね。

では、シャンプーやトリートメント、ボディソープや掃除道具、こどもの風呂場専用のおもちゃなどの配置はどうするのか?
鏡の必要性の変化と同じくらいに、『洗い場の収納棚の必要性』も劇的に変化しています。

その答えの1つとして、『洗い場部分に、物を引っかけたり吊るすためのバーを取付して使用する』という方法を選択する方もいます。

シャンプーや洗い桶も引っかけて収納

こどものおもちゃも空間を使ってヌメヌメ汚れ知らず

こうすることで、お風呂場の収納棚汚れ(ヌメヌメ汚れなど)を気にする必要が極力少なくなり、掃除箇所が減るのもメリットだと言えます。
とはいえ、引っかけたり吊り下げするためのバーは、そもそもタオルなどの軽量なものを引っかけるためのものです。ぐらつくほど重量物を引っかけるのはバーが落下する危険もあるので、同様のバーを複数個取りつけて、重さを分散させる事例も増えています。

お風呂場の棚やカウンターや鏡の存在が嫌われていることに一瞬は驚きつつも、実際に納得できるじぶんがいます。(笑)
皆さんも、じぶんたちの暮らしに似合いそうであれば、ぜひ今日から容器類を『引っかけたり吊り下げて』使ってみてくださいね。
ただし、ぐらぐらするほどに引っかけないようにだけご注意を。

「昔からあるから」という理由から解き放って

こうやってお風呂場をテーマにするだけでも、住宅における常識は日々変化していくものなんだなと実感します。
常識だと思っていることを疑ってみると、視界がクリアになることだってあります。常識に縛られずに、『自分はじぶん。私はわたし』の視点をもってみませんか?
小さなほころびを一つひとつ紡いで整えていくように、じぶんたちの暮らしに新しい常識をつくりだしていくと、きっともっと暮らし豊かになり、パートナーやこどもたちに怒ったりしないで済むかもしれません。

時に、わたしの原体験も織り交ぜながら。
時に、わたしのしごとであるひまわり工房のオーナーさんとの体験を織り交ぜながら。
このエッセイコラムが続く約半年の間で、一緒に成長していければいいなと願っています。

「もっとほかにもたくさんのアイデアが知りたい!」という方がいましたら…
今回のような暮らしづくり&家づくりのアイデアは 主にInstagram(@himawari_kobo)やブログ(azumasaori.com)に掲載しています。
手前味噌ですが、今や全国で共感の嵐が湧き、2020年2月現在は4万人を超えるファンの皆さんに 関連するSNSをフォローして見守っていただけるまでになりました。
よろしければ、そちらも合わせてご覧いただければ幸いです。

初回のアイデア まずはここまで。
お届けいたしましたのは、暮らしの設計士『あず』こと東沙織でした。

ではまた、次のエッセイコラムでもお会いしましょう。