「家事シェア」という言葉を耳にしたことはありますか?
わたしは、個人的にとても気に入っている言葉です。「ひとつ屋根の下で一緒に暮らすひとたちが家事を協同しながら紡いていく家族のかたち」という考えから生まれたもので、最近はずいぶん広まってきました。
今日は家事シェアとおウチの関係性についてお話したいと思います。

東沙織

東沙織

1988年生まれ、兵庫県相生市出身。有限会社ひまわり工房取締役 暮らしの設計士。 設計思想は、『家事シェアできる家』・『らくちん動線の家』。適材適所の収納計画も定評あり。毎朝アイデア発信するインスタグラマー。

家事シェアという捉え方

早速ですが、家事シェアって家事分担と何が違うの?と思われる方がいらっしゃるのではないでしょうか。
家事分担とは、家族が 家事担当を分けきってしまうこと。
一方で家事シェアとは、分担しきれないような小さな家事などは、「相手に押し付けることなく、お互い同じ家事ミッションを持つ者として行動する」というものです。
例えば些細なことですが、排水口のゴミ受けネット交換だったり、加湿器の水の入れかえだったり。毎日避けては通れない「小さな家事」「名もなき家事」の積み重ねで暮らしは成り立っています。誰かに押しつけるのではなく、お互い気にかけて暮らしていくのも、家事のカタチですよね。

さて、家事シェアの対象とは、例えば具体的にどんなことを言うのでしょうか?下記に、事例をいくつかピックアップしてみました。

・炊事(食事づくり)
・ゴミの分別やゴミ出し
・食料品や日用品の購入および管理
・洗濯や物干し
・水まわりをはじめとする各種掃除
などなど。
今回は代表的なものをまとめてみましたが、シェアできる家事はまだまだありそうです。

時代や働き方によって、変化する家事の在り方

さて、わたしが注文住宅の設計相談のご依頼を受ける層として多いのは20代~30代のご夫婦なのですが、「家事シェアできる暮らしがしたい」とご依頼いただくことが多いです。

令和時代はますます共働きが増えるでしょう。
仕事が終わって買い物をして帰宅、食事してお風呂に入ってリラックス……。帰宅から就寝するまでの約6~8時間の「家時間の使い方」は、今以上に重要になると思います。
炊事・洗濯・育児・明日の準備をやっていたら、あっというまに時間は過ぎ去っていきますよね。時間の流れは驚くほどに早いものです。
在宅ワーカーやテレワーカーにとっても、職場が自宅になるほかは、家事内容に大きく変わりはありませんよね。
もはや「キッチンは奥さまだけの城」という言葉は、ずいぶんと古く感じるようにさえなってきました。男性も積極的に家事する時代。特に20~30代のご夫婦の意識は、かなり自然と「家事は夫婦協力してやるものだから」という勢いのようなものも感じます。
これはとても良い傾向ですし、設計者としても、より一層ご夫婦が家事シェアしやすい暮らしのアイデアを創出し、応援したくなるものです。

「週末食品一気買い」を支えるキッチン収納

わたしが携わらせていただく依頼者さんは、夫婦共働きの場合、買い物は週末一気に買い込むタイプの方が多いです。そのためには冷蔵庫に余裕ある容量が必要となり、場合によっては専用冷凍庫を所有している方もいます。
また、食料品や日用品を常備したり備蓄するための「パントリー(食品庫)」についても、ある程度の広さが必要となってきます。
もちろん、家族の人数や買い物の種別や内容によっても変わりますが、わたしは4人家族が暮らす家を検討する場合、約1~2帖のパントリー計画をすすめることが多いです。
そして、そのパントリーには「可動棚」を用いて、できる限り持ち物に応じて柔軟に高さスペースを変更できるように 収納空間としての変容性にも配慮をしています。

誰もが使いやすい、家事がスムーズにできる動線とは

家事シェアを効果的に実現するには、炊事動線と洗濯動線を、お互いに近い位置に配置するほうが望ましいのかもしれません。
わたしがこのことに気がついたのは、5年ほど前から本格的にやっている「暮らしのヒアリング」の際に、依頼者さんの暮らしの声を聴いてからです。

・朝食の準備をしながら洗面所で化粧をしたい。
・夕飯準備には時間がかかるが、空いた時間に水まわりの掃除をしたい。
・夜時間に洗濯を2回する。夕飯の片付けや育児をしつつ、洗濯物干しを効率よくしたい。
・老後を迎えたとき、家の中の高低差移動が極力ないかたちで、家事をしたい。
・家事は、夫婦のどちらがやろうとも、時短ですませたい。
このような意見が目立つようになり、家事動線の距離感を重視するようになりました。

家族全員がわかる収納場所をつくる

家事移動を短距離に、家事を時短にするには、「局所収納」も有効です。
自分以外の家族が「あのストック品はどこにあるんだっけ?」とならないように、使いたい部屋に(あるいはその場所の近くに)使いたいモノを収納できるというのが、家事シェアを実現しやすい近道ではないでしょうか。

わたしはこのことを「局所収納」と呼んでいます。
そして、わたしはできる限り予算の叶う中で、局所収納の計画を反映できるようにご提案します。

例えば
・玄関には玄関用品収納棚
・リビングには、子どもたちの収納棚
・ダイニングには、日用品収納棚
・パントリーには食品収納棚
・トイレにはトイレ収納棚
・ユーティリティ(※)にはリネン収納棚や掃除道具収納棚
(※ユーティリティとは:洗面や物干しなどの用途を中心に多目的に使える空間)

このように、適材適所、それぞれの用途部屋ごとに収納計画されるのをオススメします。もちろん、壁に収納棚を作り付けるほか、既製品を据え置くことでも効果はありますので、暮らし方に合わせて選択してみてくださいね。

家族の誰もが、どこに何があるかの持ちものの住所がわかることが、家事シェアを後押しする秘訣だと思います。ぜひ今日より、できることから「使いたい部屋に使いたいモノを収納する」ということをトライしてみてくださいね。ご家族が負担なく自然に「家事シェア」できることを、心から願っています。

今回のコラムはいかがでしたでしょうか?
これから新しい暮らしや住み替えを考えている方にとって、ぜひ「家事シェアしやすい暮らし」という点も意識していただけると嬉しいです。

「もっとほかにもたくさんのアイデアが知りたい!」という方がいましたら…
今回のような暮らしづくり&家づくりのアイデアは 主にInstagram(@himawari_kobo)やブログ(azumasaori.com)に掲載しています。
手前味噌ですが、今や全国で共感の嵐が湧き、2020年5月現在は4万人を超えるファンの皆さんに関連するSNSをフォローして見守っていただけるまでになりました。
よろしければ、そちらも合わせてご覧いただければ幸いです。

4回目のアイデアはここまで。
お届けいたしましたのは、暮らしの設計士「あず」こと東沙織でした。
ではまた、次のエッセイコラムでもお会いしましょう。