「ミニマルな暮らしも素敵だけれど、大好きなモノに囲まれた今の暮らしが、一番私らしい」。幼い頃から暮らしの中に“かわいい”を見出し、大切に集めてきた甲斐みのりさんにインタビュー。オリジナルの収納テクニックからご自宅の収納事情、そして、おウチでのおこもり時間を楽しむコツを伺いました。

HOUSTO 編集部

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STAY HOMEのお楽しみは、家の中の整理整頓

かわいいモノ収集家としても知られる、文筆家の甲斐みのりさん。
直接お話を伺ったのは、緊急事態宣言が発動される少し前のこと。すでに「STAY HOME」の呼びかけが広まっていた頃で、甲斐さんも、地方取材や大好きな旅へ出かけることができなくなり、本格的なおこもり生活の準備を進めているというタイミングでした。

「旅に出たら、地場の食材を買うのが大好きです。買い集めたストックがたくさんあったのですが、たまに賞味期限をすぎてしまうこともありました。自戒もこめて、この機会に『賞味期限が一ヶ月以内のもの』を入れる箱をつくり、食べながら整理していくことにしたんです。だんだん、台所がスッキリしてきました」。

家で過ごす時間が長くなるからこそ、ストレスのない空間づくりをすることが大切、と甲斐さんは言います。

「自宅と仕事場には、モノがたくさんあります。でも私、モノは多いんですけど、実は整頓好きでもあるんですよ。ちょっとでも山積みになっていたり、床に置いてあるのを見るのは嫌なんです。最近始めたのが、バラバラに置いてあったモノたちの居場所をつくること。箱や段ボールを4、5くらい置いて、まずは大きくジャンル分け。さらにカゴや小さなお菓子の箱なども使い、一つずつ整理していきます。時間がある今は、もっぱらその作業に夢中なんです」。

賞味期限間近な食材をまとめたカゴ。雑貨屋さんのようにかわいいディスプレイで心躍ります。(撮影:甲斐みのり)

見せて収納できる便利なカゴ。ご自宅には、さまざまなサイズがあるのだとか。(撮影:甲斐みのり)

「モノと生涯一緒に生きていこう」と決めた日

(撮影:甲斐みのり)

甲斐さんが愛する“かわいい”の原点は、お菓子の箱や包装紙。
中身のお菓子よりも箱を欲しがるという、一風変わったこども時代だったそう。

「お菓子の箱は、宝箱でした。おもちゃのアクセサリー、雑誌の付録、シール…大切なものをいろいろと入れて。本格的な収集家になったのは、一人暮らしをはじめてからです。喫茶店のマッチ、お菓子屋さんの包装紙など、それ自体に価値はつかないものに惹かれるようになりました。モノに執着するようになったのも、その頃から(笑)」。

お菓子の箱や包装紙に加え、古本や食器など、甲斐さんが“かわいい”と思って集めたモノは、家の中でどんどん増え続けていきました。

しかし、10年ほど前、甲斐さんはモノに囲まれた暮らし方に、疑問を持つようになります。「モノを持たずにスッキリ暮らす」というライフスタイルが流行しはじめた頃のことでした。

「モノがなく、スッキリした家。メディアは素敵な生活提案で溢れていました。そういうものを目にするにつけ、自宅のモノたちが気になるようになって。『自分は悪だな』と思ってしまったんです。1年ほど悩む間に、森茉莉さんや向田邦子さんなど、自分が好きな作家の本を読み見返したら、みんなモノへの愛が強いことに気づいたんです。モノが好きだから、手放せない。愛でていきたい。やがて、私はモノと一緒に生きよう、と決心がつきました。ミニマルな暮らしは憧れます。でも、人は人、私は私だと思えるようになったんですね」。

20年以上収集してきた包装紙や古本たち。今ではそれらに、愛着だけではなく、資料としての意味も生まれた、と甲斐さんは言います。

木の箱をうまく活用した甲斐さんのブックシェルフ。(撮影:甲斐みのり)

ルールは「モノは多くてもOK、でも整理整頓すること」

(撮影:甲斐みのり)

愛するモノに支えられてきた自分を自覚し、「モノと一緒に生きる」ことを決意した甲斐さん。モノが多いからこそ、一つひとつをしっかり活用し、空間は整理整頓するというルールを課しています。

「食器も、つい高価なものは大切にしまい込んでいましたが、もっと使ってあげよう、と思うようになりました。料理も楽しくなりますし、インスタントラーメンでも、器を毎回変えるだけで楽しくなりますよね。でも、家の中をゴチャゴチャさせるのはNG。『なんて整理されて、きれいなモノたちに囲まれているんだろう! 』という気分でいたいんです。ストレスを溜めないためには整理整頓、ときには、モノを手放していく作業も大切です。『モノを手放せないということは、そこに宿っている思い出が必要なのでは?』と友人に指摘されたこともあって、写真に撮ったら手放せるモノはけっこうあるな、ということに気づきました。写真を撮れば、それが手放せるかどうか判断ができます。私にとっての、モノを手放す儀式のようになりました」。

食材の保存に使っているトタン箱。ほかにも、静岡の茶箱なども愛用しているそう。
(撮影:甲斐みのり)

お菓子の缶や包装紙を使った収納テクニック

せっかく集めたモノたちだから、もっと毎日の暮らしに生かしたい。甲斐さんが実践している、お菓子の缶や包装紙を使った収納テクニックを教えてもらいました。

「全国のお菓子の包装紙は、集めているとダブりが出てきます。保存用は、『無印良品』のケースに収納し、その他は一週間たまった時点で、封筒に作り直しているんです。『これは再利用しているので、折れ曲がりがあります』と注釈を書いたシールを用意して、封筒の隅に貼っているのですが、手紙を受け取った人はみんな喜んでくれるんですよ」。

集めたモノたちの“かわいい”を、友人たちにお裾分け。ぜひ真似してみたいテクニックです。

包装紙でつくる、オリジナルの封筒。(撮影:甲斐みのり)

手づくりした封筒を、きれいなマカロンの空き箱に納めて。(撮影:甲斐みのり)

資生堂の缶には、切手をまとめて。水玉模様の端切れで手づくりしたマグネットは、紙類を風で飛ばさないための重しです。

これからもおウチ時間をずっと楽しむためのアドバイス

(撮影:甲斐みのり)

「好きなモノが活きる環境づくりをしてあげると、そこで過ごす時間がもっと楽しくなると思うんですよ。例えば、私はお茶が好きなので、仕事場の一角にドリンクバーを作っています。缶ごとに違う茶葉を整理しているんですが、休憩したいときに、次はどのお茶にしようかな?とそこから選んだり、好きな缶を愛でたりする。その場所にいくたびに、嬉しくなってリラックスできるんです。それは、きっと本でも、CDでもいい。自分が本当に好きなモノのコーナーをつくって、そこだけはスッキリと整えたり、可愛く飾ったりすると、きっといい気分になれるはずです。この時期、好きなモノとしっかり向き合える時間は、意外と得難いものなんじゃないでしょうか」。

好きなモノと整理された空間は、生活の喜びと自信につながる、と甲斐さんは話します。

「家にいなければならない」ではなく、「大好きな家にいる時間が楽しい」と思えたら、しめたもの。
さあ、今からでも、気になっていた部分の整理整頓をはじめてみましょうか。

圧巻の書棚に囲まれた、甲斐さんの仕事場。気分で選ぶ紅茶と、好きなおやつで、ほっと一息。(撮影:甲斐みのり)

今回教えてくれたのは…

  • 甲斐みのり(かい・みのり)
    文筆家。プロダクションLoule(ロル)主宰。
    静岡県生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業。旅、散歩、お菓子、地元パン、手土産、アイス、クラシックホテルや建築、雑貨や暮らしなどを主な題材に、書籍や雑誌に執筆。食・店・風景・人、その土地ならではの魅力を再発見するのが得意。地方自治体の観光案内パンフレットの制作や、講演活動も行う。http://www.loule.net/index.html