TBSアナウンサーとして多忙を極める中、2人の子を育てあげた堀井美香さん。50歳にして独立し、ナレーションや朗読などで活動の幅を広げています。ジェーン・スーさんとのトークが人気の『ジェーン・スーと堀井美香の「OVER THE SUN」』は、第7回JAPAN PODCAST AWARDSで大賞も受賞し、ますます活躍の予感。子育てが一段落し、新たなステージでいっそう輝きを増す“先輩”堀井美香さんに、暮らしと家事への向き合い方をお聞きしました。

明知真理子

明知真理子

成人したばかりの娘とのふたり暮らし。2LDKの賃貸住宅で、新しい暮らしが始まりました。仕事の合間に、少しずつ部屋づくりを楽しんでいます。

堀井美香 プロフィール

1972年3月22日生まれ。秋田県出身。95年、TBSにアナウンサーとして入社。2022年3月に退社し、フリーランスアナウンサーとしてナレーションやラジオのパーソナリティを務めるほか、朗読会「yomibasho」も主宰する。Podcast番組『ジェーン・スーと堀井美香の「OVER THE SUN」』は毎週金曜日に新エピソードを配信中。

町田に一軒家を買ったのがすべての始まり!?

―TBSのアナウンサー時代、超多忙だったと思いますが、仕事と子育てはどのように両立されていましたか?

もうギリギリでした!「ご飯を作って掃除してこどもの世話をして仕事に行く」という毎日をひたすら回していて、家事をすることで必死。なにか素敵な料理を作ろうとか、そういう余白はないです(笑)。

そもそも郊外に一軒家を買ったのが間違いだったんですよ(笑)。間違いとは言わないまでも、新婚で若くて「暮らし優先で住まいを選ぶ」ことまで考えが及ばなかったんですね。夫の職場こそ近かったとはいえ、町田に家を買ったと言うと、赤坂の先輩方に「あなた大変なことになるよ」と言われたのは今でも覚えています。

―確かに町田からTBSのある赤坂までは、通勤にも時間がかかりそうですね…。

当時は快速もなくて、ドア・トゥ・ドアで1時間20分、保育園に寄るようになると片道2時間かかっていました。

あと、花を植えるとか、晴れた日に外に洗濯物を干すとか「一戸建てのあるべき姿」ってあるじゃないですか。そういうイメージにとらわれて、こどもが二人いて夫も自分も忙しくて手伝ってくれる人もいないのに、やっぱり花を植えてしまうし(笑)。

―忙しいのに、自ら仕事を増やしてしまうという(笑)。振り返って「もっと手を抜いてよかった」「やらなくてもよかった」ということはありますか。

すごくあります。30年前の一戸建てって、今みたいにライフスタイルに合った作りはしていなくて、家事動線も長いんですよ。掃除機をかけたり、洗濯物を干しに行ったり、家の中の行き来だけでも大変。

あと、こどもが大きくなれば一戸建ては個室も確保できて意味があるけど、小さい時は意味あったかな?って。駅前のマンションなんかで、ギュッと密着して暮らした方が、きっともっと楽だったでしょうね。家は一目惚れして買ったんですけど、先に住まいを決めちゃったので、そこに生活スタイルを合わせるしかなくて。順番が逆でしたね(笑)。これが若かった、ということです。

先輩母に聞けばよかった助言は「ほっときなさい」

―アナウンサー時代の1日のタイムスケジュール、想像するだけで大変そうです!

一番大変だったのは、こどもたちが小学校の時。その頃は朝5~6時に起きて7時には会社に行かなきゃいけない日もあったし、土日や深夜の勤務もある。ご自宅で預かってもらえるファミリーサポートも使ったし、シッターさんに家に泊まっていただいたり、あらゆる手段を探しました。

こどもが学童から帰るときに間に合わない日も週に1、2回あって「この1時間をどう埋めるか」ってときに助かったのが、ハウスキーパーさん。こどもが学童から帰る時間帯にお願いしておけば、誰かが家にいるという安心感があるし、家もきれいになるし(笑)。

―予定のパズルをどうにか組んで乗り切ったんですね! 子育てといえば、PTAがゆううつだという人も多いですよね。

私、ガンガンやりました。むしろ大好きでしたね。というのも、全然知らない土地に引っ越してきて知り合いも誰もいないし、そこで子育てをしようと思ったら、周りを巻き込むしかなかったから、腹をくくっていろんな役割に手を挙げて。周りもみんないい人たちだったし、たまたまいい場所に住まわせてもらってみんなに助けられました。

小学校の運動会も、土曜日にレギュラーの仕事があってほぼ行けなかったんです。当時は家族と一緒にお昼ご飯を食べなきゃいけないし、どうしようと思ったら、ママたちが「うちで面倒見るよ」って次々と言ってくれて。初めての運動会の日、娘が「みんなが話しかけてきて、私も忙しかったよ」ってどこか誇らしげに報告してきて、みんなありがとう~!って感動でした。

―ママたちの互助会活動、心強いですね! 一方で、子育て時代は周囲からの声も気になるもの。今となっては聞かなくてよかった助言などもあるのでは?

むしろ、聞いておけば良かったことはたくさんありますね。たとえば「こどものことはほっときなさい」とはよく言われました。でも「いやいや、ほっとけないよね」って、いろいろやりすぎてしまう。

夫はそういう人で、子育てにも一切口出ししなかったし、こどもに対しても、勉強もしなくていいし大学に行くかどうかも自由でいいという意見で「本人が気付くときが来るよ」って言うんですけど、私は「待って、気付くのが40歳だったらどうするの!?」って(笑)。こどもを溺愛するあまり、人の言うことを一切聞かなかったんですよね。

―愛ゆえに最悪のケースを想定して心配してしまう気持ち、分かります! 実は我が家の娘も就職活動中で、同級生のママたちもみんな口出ししたいのをこらえる日々です…。

マイナビとか見そうになりますよね(笑)。私もTBSでは採用担当もしていたし、息子のエントリーシートを見ては「直していい?」と聞いて断られましたけど、終わった今になってみたらこどもたちもそれぞれの性格に合った生き方をしていて。結局、本人に任せるのが正解ってことなんでしょうね。「ほっとく」は難しいけど、真理ですね。

義務から自分のための家事にシフト。ガスコンロは思い切って封鎖!

―子育てが一段落した今、家事や暮らしへの向き合い方は変わりましたか?

すごく変わりました。こどもが二人とも社会人になって家を出たこともあり、6、7年前から都心のマンションとの二拠点生活を始めたんです。夫と二人だけになると暮らしもダウンサイジングされて、いろんなことが効率化されたし、家事の質が変わりました。

―家事の質が変わったとは、どういうことでしょう?

今までの家事は人のためだったけど、自分が心地よく生活するためという観点に変わったんです。義務でやっていた家事がなくなって、自分の癒しの時間に変わりました。こどもたちがいると料理しなきゃって義務感があったけど、今は量も回数も少ない。夫は会食が多くて夜はほとんど家にいないので、うちにはもう「夕食」が存在しないんですよ(笑)。

だから自分の食べたいものを、自分のために用意する。ちょっとお高いブロッコリーを1個買ってきて、レンチンしてオリーブオイルをかけただけで終わりにしても、誰にも何も言われない。自分のための暮らし、生活、家事ですね。そんな自由な楽しみはありますね。

―義務の家事から、自分のための家事にシフトしたんですね。

そう、うちは完全にガスレンジを封鎖したんですよ!ぜんぶ電子レンジ調理だから、換気扇も一切汚れない(笑)! 住んで4年目ですけど、キッチンもピカピカです。洗濯も掃除も気づいた人がやる。断捨離してモノも少なくなったし、最小限で暮らしています。毎日3時になるとルンバもどきが回り出すし、家事に関しては解放されていますね。

―超多忙だった時代からそこまで楽になるなんて、子育て真っ最中の人には希望になりそうです。今、まさに忙しい日々を過ごしている読者に、応援やアドバイスはありますか。

汚くても死なないので(笑)。生活に関しては、室内環境を良くするより、家族の機嫌が良くなる方を優先したほうがいいんだろうな、とは思いますね。

私の母も職業人で、田舎(秋田)でほかに働いている女性も少ない中、車で2時間かけて職場に通い、こども4人、本家の長男の嫁…って、五重苦ぐらいの人だったんですよ(笑)。50~60年前の話だからお惣菜とかも売ってないし、Uberも頼めない。

そんな中でもすごく一生懸命やる人で、必ずご飯も手作り。すると家事で常に忙しいから、口癖も「早く食べちゃいなさい」で。私は母と一緒に食卓でゆっくりした覚えがないんです。誕生日もケーキをドンと出してろうそくを立てて「はい、火を消して! もうご飯だから」みたいな(笑)。

今となって思うと、物理的な家事を優先せずに、時々は「いいじゃん、もう汚くて」っていうのもアリで、その代わりみんなポテチ食べて話そうよって、機嫌よくゆっくりする時間があっても良かったかもなって思いますね。

―当時は掃除を完璧にされていたそうですが、美香さん自身は汚くてもくつろげるタイプですか?

全然、大丈夫ですね。

―では本当に、ご家族のために掃除しておウチをキレイにしていたのですね。

それはありますね。私の母は出かける時、必ず家をキレイにしていた人で、そのおかげで私は家に1人で帰っても寂しいと感じたことがないんです。部屋はスッキリして、おやつも用意されているし、すごく「おかえり」を感じる状態の部屋だったので。だから自分も忙しくてもそれだけは手放したくなかった。娘も息子も学童から一人で帰ってきて、汚い家にいるのを想像するより「いまきれいなお部屋にいるんだ」と想像できた方が、自分が救われるようなところがあったんです。

―それもある意味、自分のための家事だったのですね。子育てと仕事を頑張っていた当時の自分に声をかけるとしたら、なんと言いますか?

楽しそうだね、もう一回やりたいって。だってこどもたち、かわいかったもん(笑)。1日代わってって言いたいですね!

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