こんにちは。ひまわり工房 暮らしの設計士、東沙織です。今回から「収納に役立つモジュール」をテーマに、エッセイコラムをお届けします。初回は、「モジュールって何?」「尺ってどう読むの?」という初歩的なお話を中心にご紹介。知っておくと、収納のルールやコツをつかむことができる「モジュール」という考え方を楽しんでいただければと思います。ぜひ、お茶を片手に頭をほぐしつつ、読み進めていただければ嬉しいです。

東沙織

東沙織

1988年生まれ、兵庫県相生市出身。有限会社ひまわり工房取締役 暮らしの設計士。 設計思想は、『家事シェアできる家』・『らくちん動線の家』。適材適所の収納計画も定評あり。毎朝アイデア発信するインスタグラマー。

今一度考える、家にとっての「収納」とは?

はじめに、モジュールのお話の前提となる「収納」について考えてみましょう。収納という言葉は、一言でまとめられないほど、奥深くおもしろいものです。
✓モノを納める建築的な空間のこと
✓モノを納める行為のこと
✓モノを個別にわける収納用品や収納道具のこと
こんな風に、たくさん意味があるのが「収納」という言葉なんですよね。あらためて、豊かな言葉だな、と思います。
「収納」をより豊かにしてくれるのが、モジュールという考え方。今回は4つの質問について考えてみようと思います。

Q1 モジュールって、そもそも何?

このエッセイコラムを読まれている生活者の皆さんにとっては、日頃「モジュール」という言葉はあまり聞かないですよね。
昔から日本の家というのは、専門的な単位寸法を合言葉にして建築されてきました。代表的には、『寸(すん)・尺(しゃく)・間(けん)』であり、今でも建築の現場では現役で使われています。私自身も建築の仕事を始めた頃、大工さんがこの単位寸法を巧みに使っていている様は……魔法の言葉のようで頭が真っ白でした(笑)

例えば畳1帖は、3尺×6尺(910mm×1820mm)という単位表現をします。
簡単にいうと、「定型サイズ」のことなんです。この定型サイズ(尺)=モジュールに則って収納用品や家具は設計されているので、部屋に置いた時にぴったりはまることが多いのです。(ただし、モジュールを無視して作られた商品も多く流通しているのでご注意を!)

Q2 家のどんなところにモジュールは使われているの?

賃貸アパートであったとしても、築年数30年を迎える持ち家であったとしても、押入れやクローゼット、台所の引き出しや開き戸、靴箱など多くの場所でモジュールは採用されています。

「30cm・(35 cm・40 cm)・45 cm・60 cm」が定型サイズと覚えよう

あなたが、新築やリフォームや DIYなどで「ここへ棚がほしいな~」と思いつつも明確に用途が決まりきっていない状況とします。そんな時は、奥行き寸歩を誤ると、使いづらくて日々のストレスを増やしてしまうことに。
奥行き寸法は特に失敗しないように、あらかじめ頭にいれておくと良い寸法があります。

それが、「30cm・(35cm・40cm)・45cm・60cm」です。
※35cm/40cmは、製材加工にひと手間かけることが多いものです。

定型サイズを把握すると、収納用品の買い足しにも困らない!

こちらは「IKEA」の35cmの奥行きの棚に、「無印良品」の奥行き36cmのボックスを組み合わせた収納空間の写真です。奥行きの定型サイズを意識するだけで、収納ボックスなどの収納用品を買い足す際にも選択肢が広がるので、ぜひ参考にしてみてください。

Q3 収納場所によって、ベストな幅や奥行きがあるなら知りたいです

使いやすく感じる収納には、実は「幅や奥行きの法則」があるのです。
収納というとどうしても容量が気になりますが、広ければ良い、深ければ良いというものでもありません。
わたしは特に「奥行き」に配慮して住宅設計を進めていくことが多いです。奥行きを意識すると、モノを取り出しやすくなったり、作業をしやすくなったり、暮らしのストレスを減らすことができるんです。

キッチンは置くものによって「奥行き30cm/35cm/45cm」から選ぶ

キッチンまわりの収納棚であれば、奥行きは「30cm/35cm/45cm」のいずれかをすすめます。食品を収納するのか、食器を収納するのか、道具類を収納するのかなどでも推奨は異なります。

この写真は、奥行き45cmの家電棚と、奥行き30cmの食器棚を組み合わせた住宅です。収納したいモノによって、奥行きを変えることの好例です。

キッチン棚に組み合わせる収納用品は、「片手で取り出しやすいサイズ感」を意識して

食器棚や調理用品など、日常的に使用頻度の高い収納場所においては、幅も奥行も「片手で出し入れしやすいサイズ感」が理想的です。そこに合わせて使用する収納用品については、幅35cm・奥行き35cm程度までのものがよく出回っていますね。これらは「片手で出し入れしやすいサイズ感」の代表格。「無印良品」の「やわらかポリエチレンケース大 幅25.×奥行き36×高さ24cm」など、メーカーでもロングセラー商品となっているものが多い印象です。

Q4 どうしたら収納ボックスがクローゼットやパントリーにぴったり納まるの?

収納ボックスの多くは、定型サイズであるモジュール寸法に沿って形状が設計されています。
例えば、賃貸アパートでも一般的な奥行き浅めの寝室クローゼット(例:有効奥行き60cm)では、奥行き55cm程度のサイズで収納ボックスを設置すると、折戸や構造体とも干渉せずにぴったりと納まりやすいです。
また、比較的細かいものを収納するパントリーでは、奥行30cm程度の収納ボックスを設置すると、細かいモノが引き出しを全て引き出さないと取り出せない!ということにもならず、使いやすくなりますよ。

今回のおさらい

Q モジュールって、そもそも何?
A 日本の建築の計算法「尺」を基本にした、建築のサイズ感のこと。モジュールに沿って設計されているので、大体のサイズ感を覚えておくと、収納にルールを持たせることができます。

Q 家のどんなところにモジュールって使われているの?
A 押入れやクローゼット、台所の引き出しや開き戸、靴箱など多くの場所でモジュールは採用されています。

Q 収納場所によって、ベストな幅や奥行きがあるなら知りたいです
A 場所ごとにまずは「奥行き」を意識しましょう。キッチンなら、「30cm・(35 cm・40 cm)・45 cm・60 cm」が奥行きサイズの基準です。

Q どうしたら収納ボックスがクローゼットやパントリーにぴったり納まるの?
A 折れ戸や引き戸に干渉しないよう、有効奥行きから5cmほど短い収納用品を取り入れましょう。

今回のエッセイコラムはいかがでしたか?
正直、「モジュール」という単位寸法は知らなくても暮らしはできます。でも、モジュールやルールを少しでも知っていると、次に収納用品を購入したり住み替えを行う時に、センス豊かに選択できるようになると私は考えています。
ぜひ皆さんも意識してみていただければ嬉しいです。

「もっとほかにもたくさんのアイデアが知りたい!」という方がいましたら…
今回のような暮らしづくり&家づくりのアイデアは、主にInstagram(@himawari_kobo)やブログ(azumasaori.com)に掲載しています。手前味噌ですが、今や全国で共感の嵐が湧き、2020年10月現在は4万人を超えるファンの皆さんに関連するSNSをフォローして見守っていただけるまでになりました。よろしければ、そちらも合わせてご覧いただければ幸いです。

今回のアイデアはここまで。
お届けいたしましたのは、暮らしの設計士の『あず』こと、東沙織でした。
ではまた、次のエッセイコラムでもお会いしましょう。