HOUSTO編集部が「今、気になる本」をシェアするストレージレビュー。今回はタイトルの通り、「家が好き」と公言するエッセイスト・小川奈緒さんの新作エッセイをご紹介します。

HOUSTO 編集部

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家具、雑貨一つひとつへの深い愛。それは小川さんのモノとの個人的なストーリー

エッセイスト、ライフスタイリストとして活躍する小川奈緒さんの新著『家が好きで』。千葉県にある自宅の様子、愛用品を惜しみなく公開し、「なぜそれを選ぶに至ったか」「なぜ使い続けているのか」といったストーリーを丁寧に綴ったエッセイです。

チェアやテーブルなどの家具はもちろん、照明器具、キッチン用品、リノベーション時の造作に至るまで。まるで小川さん宅のルームツアーに参加しているような気分に浸れる内容です。

物書きとして、また音声メディアのパーソナリティとしても多くの人から支持されている小川さんですが、「小川さんの家にある◯◯はどこのブランドなの? 同じものが欲しい」という願望をただ満たすだけの本ではないことを、今ここで強く伝えたい!

小川さんの、芯のある文章から伝わってくるもの。それは「時間をかけてモノ選びをする楽しさ」です。そうして家に迎え入れたモノは、小川さんだけの愛用品です。小川さん自身も前書きで以下のように語っています。

中には名作と呼ばれる家具や照明もありますが、それが必ずしもみんなの愛用品になるとは限らないし、相性や縁が存在するからこそ、モノ選びは面白いのです。だから、これから語るのも、一つひとつが「わたしの愛用品」になるに至った、個人的なストーリーです。

SNSの普及により、おしゃれなインテリアや素敵なアイテムを見つけることが本当に手軽になりました。ただ、そこに「モノへの思い」はきちんとついてきているのだろうか…。自分自身のモノ選びを振り返り、そして猛省しつつ、読み進めました。

大事なのは、そのモノがどんなに素敵で便利なのかではなくて、いかに自分と相性がよかったのかということ。それこそが小川さんの言う、自分とモノで紡ぐオリジナルストーリー。自分自身と深く向き合い、感覚を研ぎ澄ませているからこそできることなのだと気づかされます。

10年選手、20年選手の愛用品がいっぱい。果たして、わが家のモノはどうだろう?

もう一点、小川さんのモノ選びで驚かされたのは、好みが長年変わらず一貫していること。20代、30代の頃に購入したヴィンテージ家具に今でもときめき、壊れるまで12年間愛用したキッチンはまったく同じものを新調する。そんな瞬間に「かつてのモノ選びが間違っていなかった、という証明書をもらったようでとても満足感を覚える」と記されています。小川さんの家には、10年選手、20年選手のアイテムがどれほど多いことか!

好みが変わらないことが必ずしも正しいとは思いませんが、「ブレない」ことは本当に強い。好きなモノが集まる家なら、テイストが混ざっていても、インテリアコーディネートの法則から多少ずれていたとしても問題ありません。必要なのは、自分とモノに丁寧に向き合うことなのですよね。

これを書いている筆者は40代。仕事で多少なりともインテリアに関わりながら、100%実行できているとはとても言えません。深く考えずに買い求めて手放したモノ、ムダにしてきたモノ、たくさんあります。でも、未来の暮らしはまだ変えられる。これからの10年、20年に寄り添ってくれるモノはなんだろう? そんなことを考えながら読むと、きっとあなたもワクワクが止まらなくなるはずです。

書籍情報

家が好きで
小川奈緒 著
技術評論社
https://gihyo.jp/book/2024/978-4-297-14122-6

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